さよならの代わりに

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明かされる事

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葉月が帰宅してから、何か思いつめているような、考え込んでいるような、そんな様子に総司は心配していた。

夕食の時、老婆の話をしたあと、口に運んでいたスプーンがピタリと止まり、何か考えているような様子だった。

夕食後、何かあったの?と聞いても大丈夫と言い、自室へ入っていった。

本当に大丈夫な時は、大丈夫の一言で去っていかない事が多い。

大丈夫だけどなんで?とか私疲れてるように見える?とか大丈夫のあとに何かしらアクションがある事が大半だ。

大丈夫と言って、すぐに去ってしまうのは大丈夫ではない時が多いのだ。

葉月は何か悩んでいるのは間違いなかった。

ただ、大丈夫と言われてしまった以上は踏み込まないのが賢明だと思い、しばらく様子を見る事にした。

--翌日--

総司が朝リビングへ降りると、コーヒーの匂いがした。

「総司さん、おはよう」

コーヒーを入れながら葉月は笑顔で言った。
昨日とは打って変わって、明るい葉月に戻っていた。

「おはよう」

「総司さん、今日公園いかない?こんな暗い時期だからこそ、リフレッシュしたいと思ってさ」

震災があってから世間はとても暗い雰囲気に包まれていた、そんな中で一人ひとり復興に向けて頑張っているが、ストレスは尋常ではなかった。

総司も同じだ、だから葉月の提案は有り難かった。

「そうだね、いい気分転換になるだろうし行こう」

そうと決まれば早かった、朝食を食べるとすぐに出掛ける用意をし、車に乗った。

30分走らせた所に大きな緑地公園が見えてきた。

「ここの公園に昔よく遊びに来てたんだよ」

と葉月が言った。

総司はこの時、葉月一家がよく来ていたのだと勘違いしていた。

そうではなく、葉月姉妹と総司、三人がよくここで遊んでいたのだ。

しかし、総司は全く思い出すことはなかった。

車を降り、公園に入っていくと、沢山の木々が風になびいていた。

木々は震災後も力強く、そこに立っていた。
まるで地震なんて無かったのではないかと思えるほどだ。

ここの公園は外周で5キロはあり、さらに内側に3キロのコース、2キロのコースとジョギングコースがある。

コースごとに木々で仕切られており、公園の中心に行くと、公園外の音はほとんど聞こえなくなる。


外の世界と遮断されたような、この緑に囲まれた空間はとても癒やしのある場所である。

中心には大きな池があり、鴨や白鳥等がのんびりと暮らしている。

二人は池の見えるベンチに腰掛けた。
見渡す限りの緑に二人は、癒やされていた。
音は風と、風になびく木々の音、時折、後ろを通り過ぎる人の足音が聞こえるくらいだ。

そして、空を見上げると、ゆっくりと流れる雲があり、雲の間から所々青空が顔を覗かせていた。

総司は思わず深呼吸をして、ふーっと息を吐いた。

「すごい癒やされる」

空を見上げながら呟くように総司は言った。

「そうだね、本当にいい所だよね」

葉月は池を泳ぐ鳥を眺めながら返した。

葉月は昔、この池に落ちたときの事を思い出していた。

今は柵で囲まれているが、当時は柵なんて無かった。

--------------------------------------------------------あの日も小学生の総司と葉月、そして姉の3人で遊びに来ていた。

ここの池には鳥以外にも、鯉や亀などがいる、池は濁っていた為、鯉はごく稀に上がってきたときにしか見えなかった。

姉と総司が二人で話し込んでいたので、葉月は仕方なく、一人で池を眺めていたのだ。

お姉ちゃんはいいな、いつも総ちゃんと一緒だ。

私も総ちゃんと二人で話したいのに。

この頃私だけ置いていかれているような気がしてとても寂しかった。

池に映る自分の顔を見て、なんて情けない表情なんだろうと思った。

それと同時に、池に映る自分の顔と、姉の顔を比較してみた。

私達はそっくりで親にもたまに間違えられるほどだ。
違うところは姉の右目の端にほくろがある事くらい。

私達はこんなにもそっくりなのに、なんで姉の方が総ちゃんと仲がいいのだろう?

私と何が違うのだろうか、考えてもわからなかった。

納得の行かない敗北感に、葉月は涙を流した。
 
お姉ちゃんなんか大嫌いだ。

涙が、池に落ちると同時に、底から鯉が突然現れた、それもかなりの大きさだった。

「うわ!」

驚いだ葉月は思わず、飛び上がった、その時に足を滑らせて、池に落ちてしまった。

想像よりかなり深く、足が底につかなかった。
パニックになった葉月はその場でもがいていた。

助けて、と声を出そうとすると池の水が口の中へと流れ込んでくる、口の中に泥臭い匂いが一気に広がり、むせてしまった、むせたあと、体が酸素を求めて呼吸をしてしまい、また泥臭い水が口へと入ってくる、気づけば葉月は溺れていた。

だめだ、このままでは死んでしまう、顔も水中へと沈んでいき、手だけ水面を叩いていた。

どこかに捕まらないとと思い、必死に手で陸を探すが掴むのは空気だけだ。

意識どんどん薄れていく、ああ、もうだめたと諦めそうになったとき、葉月の手が誰かに掴まれ、ゆっくりと水中から引き上げられた。

「柚月!大丈夫か!」

総ちゃんが私の名前を呼んでいると、薄れゆく意識の中ぼんやりと考えていた。

気がついたとき、私はベンチに寝かされていた。

「柚月!大丈夫?」

と姉が私を心配そうに見つめていた。

「心配したじゃない!」

そういって泥臭い匂いに包まれた私を思いっきり抱きしめてくれた。

「柚月ちゃん、大丈夫?気分悪いとかない?」

と総司が聞いてきた。

好きな人に、泥まみれの姿を見られるのが恥ずかしくて目を合わせる事ができなかった。

「ごめんなさい・・・心配かけて、ごめんなさい」

私は恥ずかしさと、申し訳なさでその場で泣いてしまった。

さっき大嫌いと思ってしまっていた気持ちは消え、私を大切に思ってくれる二人を嫌いにはなれなかった。---------------------------------------------------------

「さっきから、どこか懐かしいような気持ちがするんだ」

と総司は葉月に言った。
もしかして、記憶が戻りそうなのだろうか?
葉月は総司をここへ連れてきたのにはリフレッシュとは別の理由もあった。

真実を話すべきが、このまま新しい関係を築いていくか悩んでいた。

だから、思い出の場所へ連れてきて、記憶を取り戻せば話す、戻さないなら黙っておこうと考えていた。

ここでの思い出は3人の中でも、色の濃い思い出だ。
そこで思い出さないならもう、思い出すことがないかもしれないと期待して、このまま総司との幸せを歩めばいいと思っていた。

けれど、記憶が取り戻せそうならば、きっとどこかのタイミングで思い出す可能性があるだろう。

その時は真実を話したほうがいいかもしれないと思っていた。

今、見極めのタイミングが訪れているのだ。

「なぁ、葉月、俺ってここに来たことあるのかな?」

「・・・・あるよ・・・何回も」

「俺と葉月は幼馴染なのか?」

「そうだよ」

もしかして、夢でみた幼い頃の出来事は本当にあったことなのかもしれないと総司は思い始めていた。

そして、葉月そっくりの少女が実在していた事も、根拠があるわけではないが確信していた。
それは、記憶の奥底で少女の事を覚えていたから確信に繋がったのだが、本人はまだ気づいていない。

「あのさ、この前夢を見たんだよ、幼い頃の夢で葉月ともう一人葉月そっくりな少女が居たんだ。

もしかして、葉月は双子の姉妹だったりするの?」

総司の目は姉がいることを確信していた、そして確認の為に今聞いてきたとこを葉月は悟った。


葉月はもう隠せない、そう思った。
まだ、記憶を取り戻したわけではない、けれど、いつか必ず取り戻す日が来る。

一つ思い出せば、そこから芋づるでどんどん思い出すだろう。


だったらもう隠すのは辞めよう。

それに、ここまで来たなら総司さんの記憶を取り戻す事に協力し、失踪した姉を探すのに協力して貰おうと思った。
姉を探す為の鍵は総司さんしか持っていない、震災のあの日、総司さんは姉と会う約束をしていた、だからあの日の記憶が戻れば姉を探せるかもしれない。

葉月は決意した。

もう、この関係を終りにしよう。

「居たよ、私には姉がいる。そして私は葉月じゃないの、





















































葉月は私の姉の名前」




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