旅行記

井津 馨

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樹海

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 私は、樹海に興味があった。
 某樹海探検家の本を読み漁っては、行きたい…と呟いていた。



 ある日、連れと二人旅行に行くことになった。
 行き先は『山梨』。
 半ば無理矢理、樹海に連れて行くのだが相手も乗り気になっていた。


 天気は、快晴。
 河口湖駅で電車を降り、旅館に荷物を置いてすぐに散策を始める。
 美味しそうな富士山カレーを食べて、また歩いて…。
 目の前には本物の富士山。何と贅沢な光景だろうか。

 午後に移ろいかけていた頃、樹海へ辿り着いた。
 駅付近には外国人が多くいたのに、ここには余りいない。

 まずは、氷穴・風穴と呼ばれる観光スポットへ向かう。
 良いタイミングに来たようで、人は誰もいないし、氷は全盛期であった。

 周りを見ると、立入禁止と書かれたロープが辺り一面にあった。
 きっとここから入っていく人もいるのだろうと推測できる雰囲気だった。

 なんと、ここが樹海のメインゾーンだったようだ。
 リュックを背負って散策している人が多く、全く気付かなかった。
 私たちは樹海と云っても広いので、どこがメインゾーンか分からず、Zゾーンと云われる方へ歩いていく。
 
 先程と変わって、車は一台も通らず、人も一切いない。
 
 廃れた看板に、旅館と思しき廃れた建物。(柵が出来ており、入ることは不可能。)
 車道から森の中を見下ろすと、時計やペットボトル、財布、免許証の様な物が落ちていた。
 その時は何も思わなかったが、遺品である可能性もあった。

 結局、メインゾーンを通り過ぎてしまった私たちは、かなり歩き、バス停に辿り着いた。


 しかし、そこもかなり鬱蒼とした樹海であった。
 近くに店員がいる施設はあるのだが、樹海の入口は異様な雰囲気を放っている。
 
 私たちは休憩した後、すぐに其方へ入った。
 辺り一面木しか見えず、どれだけ歩いてもその先は木ばかりだ。
 埒が明かないと思い、私は樹海では本当にコンパスが動かなくなるのか試した。
 入口付近では、正常にコンパスが動いた。しかし、ナビ(地図)は反映されなかったように思う。

 そうしていると連れから「この先に入っていきたい」と声がかかった。
 入っていくなと大声で叫び、すぐに隣へ駆け寄る。
 何と、草で見えなかったのだが、その先には大きな穴がぽっかりと口を開けていた。
 縦に、3mはありそうな穴だった。

 何も言わず入ってたら骨折して骸になってたな、なんて戯言を話して遊歩道の方へ向かう。

 この時、正直私は恐ろしかった。
 連れは仕事の関係で足を痛めて、将来的には手術が必要な身体なのだ。
 そんな連れが骨折なんてしてしまったら、旅行どころではなかっただろう。
 考えるだけでゾッとした。

 



 遊歩道を歩いていると、余り見ない種類のキノコが生えていた。
 キノコの種類については分からないのだが、透明感のある白色のキノコだった。
 ユウレイタケ、と検索すると出てくるがそうなのかはっきりは分からない。
 初めて見るキノコに感動し、目に焼き付けることにした。

 そうしていると後ろから話し声が聞こえ、顔を上げると案内人・外国人カップルが見えた。
 ツアーも行われているのだろう。
 ここをずっと歩いていくと私たちが通り過ぎたメインゾーンに行けるようだ。

 私たちはもう体力的に行く気もなく、時間も午後四時頃に差し掛かろうとしていたので諦めた。
 


 一旦樹海から出た後、もう一度入る。
 夕方になり始めたからだろうか、周りが先程と全然雰囲気が違う。
 木が多い茂っている為、外よりも暗くおどろおどろしい雰囲気がした。


 もうやめよう、と連れと話し合い、今日の旅館へと戻った。



 

 暫くはまた行きたいという思いが抑えられなかった。
 一人で行こうか、死を選ぶときはあそこだな、なんて本気で考えたものである。
 それは連れも同じだったようで、また行きたいと私に何度も言ってきた。

 まさかの私も連れもオカルト好きだったのだ。
 意外な連れの一面に嬉しい反面、何処までも似てるなと笑ってしまった。

 









※あとがき

 樹海では、心霊現象も起こる様です。
 また現実的な事を言いますと、遊歩道を外れるとかなり危険です。
 冒険家の方は絶対に重装備で行くそうですので、気軽な気持ちで軽装で行くのはお勧めしません。
 それと、単独よりは複数で行った方がいいかもしれないと思いました。
 怪我をして動けない際など連れがいると、かなり頼りになると思います。
 樹海は山ですので、救急車が来るのにも時間がかかります。危険な行為はしないでください。

 ちなみに、樹海には珍しいキノコやコケが生えていますが、採取する事は法律で禁止されています。

 自殺の名所、と呼ばれたりしますが神秘的で良い所だと私は思っています。
 興味深い旅行でした。
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