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攻防

(5) 滝本side

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懐かしい夢を見た。
清水と初めて話した時の夢だった。


「ん…」


どうやら眠っていたらしい。


自身が抱いているものの抱き心地の良さ、温かさ、匂い、そして柔らかさに心安らぐ。
微睡んでいるとトクン、トクンという穏やかな心音が聞こえる。
少しずつ意識が覚醒していき、うっすら目を開けるともうすっかり暗くなっていることに気づいた。
そして目の前にはワイシャツが見える。


「……っ……!」


違和感で一気に目が覚める。

ゆっくり起き上がると自身の背中から何かが滑り落ちる。
確認すると清水の腕だった。
そして自分の下では清水が寝ている。

「…………」

なんで清水がいるんだ?
何があってこの状態になった?

疑問が頭の中で次々と浮かぶ。

ついに俺、押し倒したのか…?

一切記憶がないからこそ余計に不安になる。
清水に聞くしか無さそうだが本人はぐっすり寝ているのだ。

まずは退いた方が良いだろう。

そう思い退いたところ、清水が寝返りを打った。


「んぅ……」


完全に身体が固まってしまった。
スカートが完全にめくれていて下着が見えている。


「白だ…」


つい声を出してしまうと、それに反応したのか清水の瞼がぴくりと動く。
そのまま少しずつ目を開いて自身の姿が捉えられた。

「お、おはよ…」

なんと言えばいいか分からずとりあえず挨拶をした。
清水はまだ覚醒していないのか黙ったまま視線をキョロキョロさせ、自分の姿を確認している。

「!?!?!?」

その後は目にも止まらぬ早さでスカートを直す。
その早さに感心したと共に、隠されてしまったことに少し残念な気持ちになった。


「……滝本」

「あ……はい」

「……何があったか説明して」

清水は顔も耳も真っ赤にして睨みつけてくる。
起きたばかりで少し舌っ足らずな感じであること、そして目が少し潤んでいることで全然迫力がない。

滝本の心の中では、清水が可愛すぎて辛い…!と身悶えている。

「え、いや、俺も起きたばっかで何が何だか…」

「…………あ、理解したわ」

急に納得したような顔になった。
完全に覚醒したようなのでこちら側から尋ねてみる。

「あのさ」

「…なに?」

「俺がなんであんなことになってたのかって、分かるか…?」

「あーーー…えっと…いろいろあったのよ」

「え、どういうこと?」

「んーとね、………とにかくいろいろあった」

「え?」

「まあ滝本は悪くないから気にしなくて大丈夫…です」

「え…?」

「と、とりあえずご飯にしよう!もうすっかり暗くなっちゃったし!」

「あ、ああ…」

「じゃあ私用意してくる!」

そう言って清水は逃げるように走り去った。

「…結局、何があったんだ…?」

ぽつりと出た言葉が部屋に響いた。


一人になったことで落ち着きを取り戻せたので、改めて先程のことを思い出す。
そういえば俺清水の胸の上で寝ていたよな?
それに抱き合ってなかったか?

あれ、ていうか最初に起きた時に膝枕されていたような…。
清水に夢だと言われて、それならいいかと思って清水のことを引き寄せて……………あれは現実だったのか?


少しずつ記憶が蘇り、ついに全てを思い出した。

…いろいろ柔らかかったな。
なんで膝枕されていたのかは分からないが、寝ぼけていた俺ありがとう…!

一男子高校生として、そんなことを思いながら感触をしっかり思い出していた。




ピロンッ


すると突然スマホに通知が届いた。
やましいことを考えていた最中だったので少し驚いてしまう。
確認すると西野からだった。

西野の思い人である自身の親友の彰について相談にのっているのだ。
自身も清水狙いの男子がいるか等教えてもらっており、協力関係が成立している。

今回もその件のようで、彰のことを思い出しながら西野に返信をした。
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