命の使い方

よしお@暇人

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後悔……そして、探す

ちっぽけな命

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燃え尽きて黒く炭化した自宅を見た俺はもうこんな所にいる必要は無いと感じた。

見ていても何も始まらないし、心がギュー!っと荒い縄で締め付けられたようなチクチクとむず痒い感覚がするのだ。

「……父さん、母さん、兄さん。俺はこの汚い命を使ってキレイな誰かの命を守る旅に出るよ。許してくれなんて思ってない……俺が自己満足出来るまでは待っていてほしい。満足出来たらこの命をどうしてくれてもいいからさ……」

黒焦げになってしまって性別すら判断のつかない黒い塊に向けて俺は言い訳をした。
この塊が本当に家族なのかも分からない。
だが、言い訳をせずに出ていくのはなんだかダメな気がしてくるのだ……

なので、形だけでも家族に許しをもらおうとした……
もちろん答えてくれる訳もないのだが。


「長老……俺は旅に出てきます。必ずここに戻ってきて死ぬのでそれまで待っててください。
それと……この剣はお借りしていきます」

俺の家と同じように真っ黒に焦げてしまい、原型を留めていない長老の家を訪ねた。
もちろん、長老も死んでしまっている。

そんな倒れている長老の横には炎の影響か表面が軽く焦げてしまっている何かの革で出来た剣の鞘が置いてあった。
盗賊がこの村で盗まなかった唯一の物だ。
なぜ盗まれなかったのだって?

この剣は抜けないのだ……
封じられた伝説の剣ではなく、ただ元々抜けないのだ……
元々装飾品として長老が怪しい商人から買い取ったものだ。

焦げていなければ盗賊はもちろん、盗んだのだろうが焦げてしまっては売り物にならない。
売れるか分かりもしない無駄な荷物は置いていった。
それが俺の考えだ。

「俺はこの世界を変えます。俺みたいな卑怯者や臆病者が安心して暮らせる世界にしようと思います。なので、その目的を達成するために旅に出ます。そう天国にいる皆に伝えておいてください……」

そう言って、俺は勝手に長老の剣を持ち出して村を出ていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「飛び出して来たのはいいが……どこに行けばいいのだろうか」

俺はこの村から全くと言っていいほど出たことがないのだ。
村を離れるのは一年に二、三回ほどだ。

「とりあえず、行ったことのある街に行こうかな。ここら辺の近くに商業が盛んな街があったはず」

確か村の周りを囲む森を真っ直ぐ突っ切るように進めば行けたはずだ。

「そもそもお金ないからどうしようか……森で適当に獣を狩って街に持っていけば多少のお金にはなるかな」

村の周りを囲む森にはたくさんの獣が住み着いており、この村の大事な食料だった。
ウサギやタヌキなどの小さな獣から熊や猪などの大きな獣が存在する。
は罠などを駆使して捕まえれば一人でもどうにかなる。

だが、魔獣と呼ばれる獣に出会ってしまったら俺では勝てないので死んでしまうか、大怪我を負ってしまう。

魔獣は普通の獣と違い、体の中に魔力と呼ばれる力を蓄えているのだ。
人間もごくまれに魔力を生まれもった物がいるらしいが、この村にはいなかった。
当然俺も魔力は持ってない。

魔獣は魔力と言う力を使い様々な力を操ると言われている。

例えば何も無いところから燃え盛る炎の火柱を発生させたり、一息吸ってしまえば眠るように死んでしまう毒の霧を吐いたり、さきほどまで暑いくらい太陽が照らしている空を急に曇らせ雨を降らせたりなどがある。

魔獣は人間が出来ないことを魔力と言う力を使い行う。
未だに魔力をどこから供給しているのかも分からないらしい。
風の噂では他の生き物の命を食べることで魔力に変換しているのでは無いかと言われている。

だが、俺にとってはそんなことはどうでもいい。
どうせ魔獣に会うことなんて無いのだから。
もし、会ったとしたらそれは運が無かったのだと諦めて死ぬよ。

「さて、これからするべきことを大体決まったな。何をするにも森に入らなくてはな……」


森に入ると決まれば準備しなくてはならないものがある。
それは、獣を捕らえるための罠作りだ。
本当なら頑丈な縄を使いたいのだがここら一帯は焼け野原になってしまっており、とても縄があるとは思えない。
なので、縄の変わりはそこら辺に生えている草のつるで代用する。

「こんなものかな……熊はさすがに捕まえれないけど猪くらいなら捕まえれるかな」

俺が作ったのは地面に置いて、罠にかかると罠が急に締まり上にぶら下げられるようになる簡単な罠だ。
もちろん、熊のように重すぎる獲物がかかるとそのまま引きちぎられてしまう。
熊以外の小さない獲物がかかることを祈っておこう。

「さて、罠を仕掛けて今日は寝るかな。明日の朝にかかってるのか確認してから街に向かおう」

罠を作りにかなりの時間を要してしまったので空はすっかり夕焼け色に染まっていた。
こんな時間から森に入れば闇に紛れた獣に襲われる危険性があるので俺は急いで焼け跡に戻った。

「こんなちっぽけな命で何か出来るのだろうか……」

焼け跡に戻った俺はそんなことを考えた。
だが、いくら考えても答えは出てこないのでバカらしくなってしまったので俺は寝ることにした。

「明日にはこの村出るか……」
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