幼女と執事が異世界で

天界

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第2章

42,騎士団詰め所

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 騎士団詰め所は3階建ての石造りの建物に看板と扉の前に騎士が1人立っているだけの至って普通の外見だ。
 詰め所なので支部的な役割なのだろうか。
 エリザベートさんの話ではラッシュの街の中央付近に本部があるそうだ。
 ラッシュの街はとにかくでかい。そんなでかい街なので中央に1つ本部を置くだけでは手が当然まわらない。
 東西南北の門近くにそれぞれ1つずつ詰め所が設置してあるそうだ。

 今いる場所は北門付近の詰め所だ。


「ご苦労様です。罪人を捕らえたので引き渡しにきました。手続きをお願いします」

「ハッ! ご苦労様です、エリザベート様!」


 詰め所の扉の横で直立不動の姿勢のまま微動だにしていなかった騎士にエリザベートさんが話しかけると、その騎士は右拳を左胸に当てよく通る声で答える。

 しかし今エリザベートさんを様付けしたぞこの騎士。
 ギルドでも偉い方だと自分で言ってたけど、まさか騎士に様付けで呼ばれるような人なのか、この人……。


 エリザベートさんが騎士に一言二言告げて騎士は誘拐犯達を確認していく。
 ボディチェックでもするのかと思ったら、ウィンドウを確認するだけだった。


「では、詰め所内でいつも通りお願いします」

「えぇ、ありがとう。さぁワタリちゃん中に入りましょう」

「あ、はい」


 どうやら引き渡してはい終わり、というわけではないらしい。さっき手続きって言ってたしな。書類か何かに記入したりでもするのだろうか。もしくは事情聴取か?
 事情聴取になったらオレが証言とかしないといけないのだろうか。めんどくさいなぁ。日が暮れるまで時間もないし、出来れば時間も取られたくない。

 エリザベートさんを先頭に詰め所に入るが、アルはエリザベートさんには扉を開けてあげないようだ。まぁ仲があまりよろしくないし、オレの従者だからオレだけにしかやらないのかもしれない。
 中に入ると内部は簡単な待合室となっていた。
 木製の長椅子が複数設置され部屋の隅に観葉植物。奥に小さなカウンターと扉がある程度だ。
 窓は大きめなのが設置されていて中はかなり明るい。


「じゃぁワタリちゃんとアル君はそこに座って待ってて」

「はい、エリザベートさんは手続きを、ですか?」

「えぇ、すぐ済ませてきちゃうわ」

【私達は何もしなくても?】

【大丈夫よ。ちゃんとギルドで正当な評価をしてもらえるから、ここは時間もないから任せて頂戴!】

【わかりました。お願いします】


 ウインクをして奥のカウンターに向かうエリザベートさん。相変わらずウインクの好きな人だ。まぁこの人がやるとすごく可愛いので何度やってもらっても構わないけど。
 カウンターに行くとすぐに紙を渡されたエリザベートさんは慣れた手つきで記入を始めている。
 長椅子に座っていても角度的に淀みなく羽ペンが動いているのがわかる。さすがだ。
 それにしても扉の前の騎士さんは中に伝えた様子がなかったから、念話でも使って伝えたのだろうか。
 騎士団詰め所という場所が犯罪者の引き渡しだけに使われるわけがない。だがカウンターに行ったエリザベートさんが何かを言う前にすぐに紙を渡されていた。
 つまりはそういうことだろう。念話はほんと便利だ。いちいち連絡しに戻らなくていいし、PTを組んでさえいれば簡単に行える。
 生前の携帯も便利だったけど、こっちの方が状況によるだろうけどすごく簡単で便利だ。

 念話を考察しながら少しすると手続きも終わったのかエリザベートさんが小袋を持って戻ってきた。


「はい、ワタリちゃん報奨金よ」

「ありがとうございます」


 報奨金の小袋を受け取って口紐を開けてみると銅貨が数枚と銀貨が1枚入っていた。
 8人いたから1人銅貨10枚そこそこ? 1人で1日の食費分か。なんともいえない金額だな。


「エリザベートさんじゃないか! 今日はどうしたんですか?」

「あら、エイド君。訓練はいいの?」


 報奨金の中身を確認していると、奥の扉から出てきた燃えるような赤い髪を短く揃えた美形というよりは、ハンサムな騎士がエリザベートさんに気さくに話しかけていた。


「やだなぁ、今日はもう終わってますよ。ギルドの仕事か何かですか?」

「いいえ、犯罪者の引き渡しよ」

「おぉ、さすがはエリザベートさんだ。また犯罪者を捕縛されたんですか。私も負けていられませんね!」

「いいえ、私が捕まえたわけじゃないわ。今日はちょっと急いでるから代わりに私が手続きしただけよ。捕まえたのはこの子達よ」


 扉の前にいた騎士はエリザベートさんを様付けしていたが、こちらの騎士はさん付けで敬語ではあるけれどかなりフランクな態度だ。
 エリザベートさんに紹介されてしまったので、ペコリと頭を下げる。


「やや、これはまた……。私はエイド・バーンシュタイン。騎士見習いです、お嬢さん」

「ワタリ・キリサキです。冒険者をしています。こっちはアルです」

「冒険者……? あなたが冒険者?」


 膝を突いて目線を合わせ右拳を左胸に添える。金色の透き通るような瞳でオレの目をまっすぐに見つめながらの自己紹介はかなり様になっている。
 ちなみに裏通りを抜けて北門通りに出る前に外套は外してしまっている。
 どこからどうみてもワンピースを着たちょっと可愛い爽やか系幼女だろう。そんな幼女が冒険者といっても信じられないのも無理はない。


「えっと……。犯罪者の引き渡しにきたんですよね?」

「えぇ、そうよ。ワタリちゃん達が捕まえたのよ」


 目をパチクリさせてエリザベートさんを見上げて聞き返しているエイドと名乗った騎士君。
 身長はアルより少し高いくらいだろうか。結構間近で見た顔つきからしてアルよりは年上っぽい。でも欧州系の顔立ちなので正確な年齢までは難しい。まぁイケメンなので爆発すればいい。
 真っ白な全身鎧を纏っていて腰には長剣。鞘には凝った意匠が施されている。
 間近で見て気づいたが真っ白な鎧にも薄く意匠が施されていて、それは昨日買ったミスリル製の防具の意匠よりも遥かに洗練されている。お金持ちなのだろうか。


「えっと、子供を1人くらいですか?」

「いいえ、大人で武器だけだけど、武装もしてたわ。それを8人ね」

「は、8人ですか……?」


 かなり驚いている騎士君だが、やはり表情には困惑の色がありありと浮かんでいる。そりゃそうだ。こんなどこからどうみても幼女と彼より小さい執事君が武器を持った8人をとっ捕まえたなんていわれても信じられない。オレだってそんなこと言われても信じないだろう。
 

 ていうか、悠長に話してると時間なくなっちゃうんだけど……。


「すごいでしょ? 私のお気に入りの子よ!」


 大きな双丘を揺らしながらドヤ顔になるエリザベートさんだが騎士君は変わらず困惑気味だ。


「え、いや……でも……」

「あ、そうだ。エイド君。昨日の情報で新しいのってあるかしら?」

「え、あぁ……アディントン家のですか? 大したのはないですけど、精査した情報で得られた物なら少しですけど」

「ほんと? じゃぁ教えてもらえるかしら?」

「えぇ、構いませんよ。ちょっと待っててもらっていいですか?」


 困惑気味だった騎士君だったが、エリザベートさんの問いには答えられるものがあったようで奥の扉に戻っていった。


「エリザベートさんは顔が広いんですね」

「言ったでしょ~。私は結構有名人なんだよ?」


 人差し指を立てて左右に振りながらまたもウインク。
 本当にウインクが好きな人だ。でもそんなお茶目な仕草も似合っているのでほっこりする。


「お待たせしました。これです」

「ありがとう。どれどれ~」


 数枚の紙を持ってきた騎士君から受け取るとすぐに目を通し始めるエリザベートさん。
 オレの位置からじゃ中身は見えないけれど、結構びっしりと書かれているのが裏から透けて見える。
 ぱらぱらと軽く目を通しているだけなのかすぐに読み終わったようだ。


「ありがとう。助かったわ」

「いえいえ、お役に立てたならよかった」

「それじゃ、私達急がないといけないから。またね」

「はい。また」


 紙を騎士君に返すとすぐに詰め所を後にする。何かいい情報でもあったのだろうか。
 去り際に騎士君がにっこり笑って手を振っていたのでペコリとお辞儀をしておいた。

 報酬の小袋はアルに渡してあるのでそのまま手を繋いで扉を潜る。
 時間にして5分もいなかったと思うし、犯罪者を引き渡せば報奨金がもらえるというのもわかったので割と有意義だったかな? ギルドでも犯罪者捕縛の評価をもらえるらしいし。


「残りは一緒に行きましょうか。すぐに済むだろうし」

「え、でももうすぐ日が暮れちゃいますし……」

「ふふ……。さっき見せてもらった中にね。恐らく当たりだと思われる奴隷商があったわ。
 しかもまだ行っていないところね。だから一緒に行きましょう?」

「そうですか……よかった。じゃあ急ぎましょう」

「えぇ!」


 2つの太陽が赤くなり始め、通りの要所で篝火の準備が始まっている。
 基本的に奴隷商も夜前には店を閉めてしまうらしい。詰め所で情報を手に入れられなかったら明日に持ち越しになってしまっていたかもしれない。

 エリザベートさんに先導されて急いで目的の奴隷商まで足を運んだ。

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