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第5章
103,精霊
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囲むように距離を詰めてくるアサルトウルフの群れに牽制のための氷柱を数本打ち込む。
千本のような針を極太にして手の平サイズまで大きくした氷柱は消音効果も高めているためかほとんど音がしない。
だが刺さった方はそうもいかないようで悲鳴とも断末魔ともつかない鳴き声をあげている。
牽制目的だったのだがうまい具合に何本か命中してくれたようだ。器用様様だけどなんか釈然としない。
鳴き声がしたところに今度は牽制ではない止めのための攻撃を打ち込んでおく。
もう群れの包囲はほとんど意味をなしていない。
包囲作戦が難しいと判断したアサルトウルフは同時攻撃で一気に仕留める事にしたようだ。
少し大きめの吠え声が聞こえ、その一瞬後に藪から5つの影が飛び出した。
しかし空中ですでに半分になってあらぬ方向に向かって墜落する影が2つ。
氷の矢を生やして木に縫い付けられた影が2つ。
最後の影はアルの盾に弾かれた衝撃で足の骨が折れたのか立ち上がれなくなったところを首を切り落とされた。
「これで全部だね。それにしても攻撃ワンパターンだなぁ」
「アサルトウルフは数で押すタイプの魔物でございますので、ワタリ様のお力で包囲を崩してしまえば当然の帰結でございます」
【ワタリさんが見えない位置にも正確に攻撃できるからですね。
アレができるかできないかで大きく変わってきます】
「いやぁ……器用様様だと思うよ~?」
アルが周辺警戒しつつ、オレとレーネさんが解体作業をする。
普段はオレが周辺警戒するのだが、オレでは隠形スキルを見破れないのでアルに任せている。
アサルトウルフの牙や爪、皮などがどんどんアイテムボックスに溜まっていく。
すでに規定数のアサルトウルフは狩り終わり、+αを狩り続けている状態だ。
+αで入る貢献度は通常より少ないけれど、この辺のアサルトウルフを殲滅する勢いでやっても貢献度が貰えるので狩れば狩るだけランクアップに近づく。
何度も場所を移動しつつ、本当に殲滅する勢いで狩り進んでいる。
当然他の魔物も襲ってくるのでついでに倒している。
おかげで時間単位あたりの魔物討伐数は過去最高だ。その分アルのBaseLvもいくつか上がり、オレの職業Lvもあがった。
でもやっぱりBaseLvは上がらない。アルが羨ましい。
レーネさんは元から高Lvなのでこの程度の魔物では上がることはまずないらしい。
オレのBaseLvは1桁なのになぁ。
ちょっと落ち込んでいるとレーネさんがおろおろし始めてしまったので気を取り直して探索を続けていく。
ドリルさん達と別れてから狩りに狩りまくってアサルトウルフの討伐数が合計で80匹を超えたところで今日の狩りは終了という運びになった。
そろそろ陽が傾き始めているし、ネーシャのお迎えをしないといけない。
マーカーを設置して結界を展開させ、ブッシュを一応被せておく。結界には認識阻害機能もあるので念のためだ。
さぁ、ネーシャのお迎えだ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日は朝のうちに冒険者ギルドに行ってアサルトウルフ狩り以外の3つの依頼を報告する。
一応掲示板にあの辺で出来そうな依頼がないかチェックしてみたが、特にないようだ。
エリザベートさんにアサルトウルフをもっと狩っても貢献度が貰えるのか一応聞いてみたが問題ないらしい。むしろドンドン狩ってきてしまっていいそうだ。
魔物は絶滅することはないらしい。
絶滅させるつもりで殲滅しても日を置くと何事もなかったかのように増えている。そして増えすぎると人里を襲いに来るそうだ。
今回オレ達が狩場にしているところは魔物が特に溜まりやすい場所なので期待されているそうだ。
ちなみに朝の冒険者ギルドはかなり騒がしいレベルでの賑わいだ。
エリザベートさんは受付担当ではなかったので話していられたが受付でこんな悠長に話してたら大顰蹙物だ。
朝っぱらから喧々囂々とすごい活気だ。
やっぱり冒険者は強面ばかりでオレ達のような見た目子供な人達はまったくいない。
女性もいるけど纏っている雰囲気というか見ただけで堅気ではないのがわかる。
だがレーネさんがオレ達の傍にいるからか、いつぞやのようにアルが絡まれる事もなく、当然オレは絡まれず至って平和だ。
ちなみに現在のアサルトウルフ討伐数だけでも貢献度的にはランクDへの昇格は間違いないらしい。
昇格試験が本来必要なのだが実力も確かなのでギルドマスターの計らいでなしでいいらしい。
チラッと見えたギルドマスターはずいぶんやつれてなんだか影を背負っていたように見えたけど見間違いかもしれない。
今日も頑張って数を狩って目標のランクCへ向けての貢献度を溜めなくてはいけない。
ちなみに当然ながら普通はこんなペースで+α系の狩りは不可能だ。
まずさっき言ったようにランクDでも昇格試験があるし、その試験は通常3~7日程度かけて遠征して行うため一旦依頼を終わらせないといけない。
しかも一種類の依頼で昇格させてしまうのはギルド的にも問題になる。だがオレの場合ランクSの奴隷をギルド側に売っているという貢献をしているので問題ないそうだ。
ランクCの為の貢献度をアサルトウルフで換算するともちろんだが80匹では足りない。
DからCへあげるためにはかなりの貢献度が必要なのだ。
でも今の所アサルトウルフを討伐した方が早いので依頼は引き続き続行する。
まだまだ狩れるだろうからあと2,3日は通う事になるだろう。
「ワタリちゃん、くれぐれも気をつけてね?
ワタリちゃんが強いのはわかってるけど、油断は禁物だからね?
ランクSの冒険者だってちょっとしたことで命を落としちゃうんだから、絶対無傷で帰ってくるんだからね?」
「大丈夫ですって、エリザベートさん。
アルもレーネさんもいるんですから~」
「でもでも~」
「エリザベート。職員が呼んでいますよ」
「うぅ……。ワタリちゃぁあぁ~ん」
オレがそれなりに強いことはもうわかっているのにやっぱりエリザベートさんの心配は止まらない。
むしろ前よりも酷くなったように思える。
まぁそれだけ気にしてくれているということなんだし、ここは素直に心配されておこう。
「それじゃいってきま~す」
「ぃってきます」
縋りついて来るエリザベートさんをアルが引き剥がし、苦笑しながら挨拶して冒険者ギルドを後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「とお~りゃ!」
気分転換と近接戦闘の練習の為にグレートコーンと予備のスレッジハンマーカスタムを使い分けながらアサルトウルフを叩き潰す。
グレートコーンなら障害物が邪魔をしてもそのまま叩き潰せるのだが、スレッジハンマーカスタムは攻撃力アップの能力を発動しながらじゃないと細い木ならまだしも、太いものになるとちょっと難しい。
藪や潅木なんかが多いこの場所では振り回し攻撃は非常に分が悪い。
とはいってもオレが主武器とする大型鈍器は細かい攻撃方法は不得手だ。
それでも横ではなく、縦での攻撃に切り替えればなんとかやれないこともない。
踏み込んでの叩き潰し。振り上げ、突き。
レーネさんのような多彩な攻撃ではないがそれぞれが一撃必殺の威力を十分に秘めているので今の所問題ない。
とはいっても所詮相手にしているのはもう3桁単位で倒しているアサルトウルフだ。
たまに出てくるグリズリーでも一撃でミンチなのであまり変わらないが。
「うーん……この辺のはずいぶん少なくなっちゃいましたねぇ~」
【はい、そろそろ移動しましょうか】
絶え間なく襲い掛かってきていた初日が懐かしい。
ここ2日は移動を繰り返して出会った魔物を殲滅しているが、エンカウントの頻度が大分少なくなっている。
アサルトウルフの量も加速度的に減少しているし、そろそろ限界かもしれない。
依頼の期限はまだまだあるけれど、標的がいないのならば拘っていても仕方ない。
アルが盾で藪を掻き分けて踏み均して歩きやすいようにしてくれる道をいつものように進むと、この山岳地帯の森には珍しく小川に出くわした。
乾き苔が生える――地下水をくみ上げるポンプのような特殊な木が生えているこの場所には川が流れているのは本当に少ない。というかこの森をかなり歩き回っているけれど初めて見た。
「なんかなかなかいい場所だねぇ~ここ」
【ワタリさん、ここは精霊の小川ですよ】
「精霊?」
【はい、こういった森の奥地にある水場などには精霊が棲むことがよくあります。
ワタリさんが感じられたように心地よい雰囲気になるのも特徴です。
精霊に会えることは本当に稀ですけどね】
「へぇ~……。確かにすごく和むよねぇ~。
ネーシャも連れてきてあげたいなぁ」
小川のせせらぎに耳を傾けていると、なんだか精霊の楽しそうな声が聞こえてくるようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇねぇあなた本当に人間? すっごく神聖な感じがするよー?」
「へ?」
「うん~?」
靴を脱いで冷たい小川の水をパチャパチャしていたら頭の上で少女が不思議そうな顔でこちらを見ていた。
ていうか浮いてないこの子?
【わ、ワタリさん……精霊です……】
「さすがは我が主。精霊すらも魅了するその美しさは天井知らずにございます」
「確かに可愛いよね~。ていうか君もなんだかすごく変わった気配だねぇ~。
人間じゃないのかなぁ~? こっちのおっきな子は獣族だよね~」
アルのことも1発で見抜いているし、やっぱりこの子は精霊のようだ。
レーネさんが驚いたように精霊を凝視している。そういえば精霊に会えるのは稀だって言ってたっけ。つまりこれはかなりレアケースなんだね。
「ねぇねぇ、もしよかったら私のお願い聞いてくれない?」
「お願い?」
「うん、難しいことじゃないと思うよ~」
【わ、ワタリさん! 是非受けましょう! 精霊に会えるだけでもものすごく幸運なのにお願いされるなんて一生に一度あるかないかですよ!?】
【そ、そうなんだ……】
レーネさんが未だかつてないほどに興奮している。
これは断るという選択肢はなさそうだ。精霊も簡単だって言ってるし。
もし無理そうならちゃんとそういえばレーネさんなら納得してくれるだろうし。
「どんなお願いですか?」
「それがねぇ~私のおうちに変なヤツが住み着いちゃってそれを追い出して欲しいの!」
「変なヤツ?」
「そうなのよ~。魔結晶が体の中に4つくらい入ってるやつなのよ~参っちゃうよね~」
あ、レーネさんが固まった。
さすがに特殊進化個体を追い出すのは簡単なお願いじゃないよねー。
千本のような針を極太にして手の平サイズまで大きくした氷柱は消音効果も高めているためかほとんど音がしない。
だが刺さった方はそうもいかないようで悲鳴とも断末魔ともつかない鳴き声をあげている。
牽制目的だったのだがうまい具合に何本か命中してくれたようだ。器用様様だけどなんか釈然としない。
鳴き声がしたところに今度は牽制ではない止めのための攻撃を打ち込んでおく。
もう群れの包囲はほとんど意味をなしていない。
包囲作戦が難しいと判断したアサルトウルフは同時攻撃で一気に仕留める事にしたようだ。
少し大きめの吠え声が聞こえ、その一瞬後に藪から5つの影が飛び出した。
しかし空中ですでに半分になってあらぬ方向に向かって墜落する影が2つ。
氷の矢を生やして木に縫い付けられた影が2つ。
最後の影はアルの盾に弾かれた衝撃で足の骨が折れたのか立ち上がれなくなったところを首を切り落とされた。
「これで全部だね。それにしても攻撃ワンパターンだなぁ」
「アサルトウルフは数で押すタイプの魔物でございますので、ワタリ様のお力で包囲を崩してしまえば当然の帰結でございます」
【ワタリさんが見えない位置にも正確に攻撃できるからですね。
アレができるかできないかで大きく変わってきます】
「いやぁ……器用様様だと思うよ~?」
アルが周辺警戒しつつ、オレとレーネさんが解体作業をする。
普段はオレが周辺警戒するのだが、オレでは隠形スキルを見破れないのでアルに任せている。
アサルトウルフの牙や爪、皮などがどんどんアイテムボックスに溜まっていく。
すでに規定数のアサルトウルフは狩り終わり、+αを狩り続けている状態だ。
+αで入る貢献度は通常より少ないけれど、この辺のアサルトウルフを殲滅する勢いでやっても貢献度が貰えるので狩れば狩るだけランクアップに近づく。
何度も場所を移動しつつ、本当に殲滅する勢いで狩り進んでいる。
当然他の魔物も襲ってくるのでついでに倒している。
おかげで時間単位あたりの魔物討伐数は過去最高だ。その分アルのBaseLvもいくつか上がり、オレの職業Lvもあがった。
でもやっぱりBaseLvは上がらない。アルが羨ましい。
レーネさんは元から高Lvなのでこの程度の魔物では上がることはまずないらしい。
オレのBaseLvは1桁なのになぁ。
ちょっと落ち込んでいるとレーネさんがおろおろし始めてしまったので気を取り直して探索を続けていく。
ドリルさん達と別れてから狩りに狩りまくってアサルトウルフの討伐数が合計で80匹を超えたところで今日の狩りは終了という運びになった。
そろそろ陽が傾き始めているし、ネーシャのお迎えをしないといけない。
マーカーを設置して結界を展開させ、ブッシュを一応被せておく。結界には認識阻害機能もあるので念のためだ。
さぁ、ネーシャのお迎えだ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日は朝のうちに冒険者ギルドに行ってアサルトウルフ狩り以外の3つの依頼を報告する。
一応掲示板にあの辺で出来そうな依頼がないかチェックしてみたが、特にないようだ。
エリザベートさんにアサルトウルフをもっと狩っても貢献度が貰えるのか一応聞いてみたが問題ないらしい。むしろドンドン狩ってきてしまっていいそうだ。
魔物は絶滅することはないらしい。
絶滅させるつもりで殲滅しても日を置くと何事もなかったかのように増えている。そして増えすぎると人里を襲いに来るそうだ。
今回オレ達が狩場にしているところは魔物が特に溜まりやすい場所なので期待されているそうだ。
ちなみに朝の冒険者ギルドはかなり騒がしいレベルでの賑わいだ。
エリザベートさんは受付担当ではなかったので話していられたが受付でこんな悠長に話してたら大顰蹙物だ。
朝っぱらから喧々囂々とすごい活気だ。
やっぱり冒険者は強面ばかりでオレ達のような見た目子供な人達はまったくいない。
女性もいるけど纏っている雰囲気というか見ただけで堅気ではないのがわかる。
だがレーネさんがオレ達の傍にいるからか、いつぞやのようにアルが絡まれる事もなく、当然オレは絡まれず至って平和だ。
ちなみに現在のアサルトウルフ討伐数だけでも貢献度的にはランクDへの昇格は間違いないらしい。
昇格試験が本来必要なのだが実力も確かなのでギルドマスターの計らいでなしでいいらしい。
チラッと見えたギルドマスターはずいぶんやつれてなんだか影を背負っていたように見えたけど見間違いかもしれない。
今日も頑張って数を狩って目標のランクCへ向けての貢献度を溜めなくてはいけない。
ちなみに当然ながら普通はこんなペースで+α系の狩りは不可能だ。
まずさっき言ったようにランクDでも昇格試験があるし、その試験は通常3~7日程度かけて遠征して行うため一旦依頼を終わらせないといけない。
しかも一種類の依頼で昇格させてしまうのはギルド的にも問題になる。だがオレの場合ランクSの奴隷をギルド側に売っているという貢献をしているので問題ないそうだ。
ランクCの為の貢献度をアサルトウルフで換算するともちろんだが80匹では足りない。
DからCへあげるためにはかなりの貢献度が必要なのだ。
でも今の所アサルトウルフを討伐した方が早いので依頼は引き続き続行する。
まだまだ狩れるだろうからあと2,3日は通う事になるだろう。
「ワタリちゃん、くれぐれも気をつけてね?
ワタリちゃんが強いのはわかってるけど、油断は禁物だからね?
ランクSの冒険者だってちょっとしたことで命を落としちゃうんだから、絶対無傷で帰ってくるんだからね?」
「大丈夫ですって、エリザベートさん。
アルもレーネさんもいるんですから~」
「でもでも~」
「エリザベート。職員が呼んでいますよ」
「うぅ……。ワタリちゃぁあぁ~ん」
オレがそれなりに強いことはもうわかっているのにやっぱりエリザベートさんの心配は止まらない。
むしろ前よりも酷くなったように思える。
まぁそれだけ気にしてくれているということなんだし、ここは素直に心配されておこう。
「それじゃいってきま~す」
「ぃってきます」
縋りついて来るエリザベートさんをアルが引き剥がし、苦笑しながら挨拶して冒険者ギルドを後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「とお~りゃ!」
気分転換と近接戦闘の練習の為にグレートコーンと予備のスレッジハンマーカスタムを使い分けながらアサルトウルフを叩き潰す。
グレートコーンなら障害物が邪魔をしてもそのまま叩き潰せるのだが、スレッジハンマーカスタムは攻撃力アップの能力を発動しながらじゃないと細い木ならまだしも、太いものになるとちょっと難しい。
藪や潅木なんかが多いこの場所では振り回し攻撃は非常に分が悪い。
とはいってもオレが主武器とする大型鈍器は細かい攻撃方法は不得手だ。
それでも横ではなく、縦での攻撃に切り替えればなんとかやれないこともない。
踏み込んでの叩き潰し。振り上げ、突き。
レーネさんのような多彩な攻撃ではないがそれぞれが一撃必殺の威力を十分に秘めているので今の所問題ない。
とはいっても所詮相手にしているのはもう3桁単位で倒しているアサルトウルフだ。
たまに出てくるグリズリーでも一撃でミンチなのであまり変わらないが。
「うーん……この辺のはずいぶん少なくなっちゃいましたねぇ~」
【はい、そろそろ移動しましょうか】
絶え間なく襲い掛かってきていた初日が懐かしい。
ここ2日は移動を繰り返して出会った魔物を殲滅しているが、エンカウントの頻度が大分少なくなっている。
アサルトウルフの量も加速度的に減少しているし、そろそろ限界かもしれない。
依頼の期限はまだまだあるけれど、標的がいないのならば拘っていても仕方ない。
アルが盾で藪を掻き分けて踏み均して歩きやすいようにしてくれる道をいつものように進むと、この山岳地帯の森には珍しく小川に出くわした。
乾き苔が生える――地下水をくみ上げるポンプのような特殊な木が生えているこの場所には川が流れているのは本当に少ない。というかこの森をかなり歩き回っているけれど初めて見た。
「なんかなかなかいい場所だねぇ~ここ」
【ワタリさん、ここは精霊の小川ですよ】
「精霊?」
【はい、こういった森の奥地にある水場などには精霊が棲むことがよくあります。
ワタリさんが感じられたように心地よい雰囲気になるのも特徴です。
精霊に会えることは本当に稀ですけどね】
「へぇ~……。確かにすごく和むよねぇ~。
ネーシャも連れてきてあげたいなぁ」
小川のせせらぎに耳を傾けていると、なんだか精霊の楽しそうな声が聞こえてくるようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇねぇあなた本当に人間? すっごく神聖な感じがするよー?」
「へ?」
「うん~?」
靴を脱いで冷たい小川の水をパチャパチャしていたら頭の上で少女が不思議そうな顔でこちらを見ていた。
ていうか浮いてないこの子?
【わ、ワタリさん……精霊です……】
「さすがは我が主。精霊すらも魅了するその美しさは天井知らずにございます」
「確かに可愛いよね~。ていうか君もなんだかすごく変わった気配だねぇ~。
人間じゃないのかなぁ~? こっちのおっきな子は獣族だよね~」
アルのことも1発で見抜いているし、やっぱりこの子は精霊のようだ。
レーネさんが驚いたように精霊を凝視している。そういえば精霊に会えるのは稀だって言ってたっけ。つまりこれはかなりレアケースなんだね。
「ねぇねぇ、もしよかったら私のお願い聞いてくれない?」
「お願い?」
「うん、難しいことじゃないと思うよ~」
【わ、ワタリさん! 是非受けましょう! 精霊に会えるだけでもものすごく幸運なのにお願いされるなんて一生に一度あるかないかですよ!?】
【そ、そうなんだ……】
レーネさんが未だかつてないほどに興奮している。
これは断るという選択肢はなさそうだ。精霊も簡単だって言ってるし。
もし無理そうならちゃんとそういえばレーネさんなら納得してくれるだろうし。
「どんなお願いですか?」
「それがねぇ~私のおうちに変なヤツが住み着いちゃってそれを追い出して欲しいの!」
「変なヤツ?」
「そうなのよ~。魔結晶が体の中に4つくらい入ってるやつなのよ~参っちゃうよね~」
あ、レーネさんが固まった。
さすがに特殊進化個体を追い出すのは簡単なお願いじゃないよねー。
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