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第6章
122,オークロード
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双眼鏡の魔道具を使わなければまともに確認できないほどの距離にある岩場からデミオークの鳴き声よりも1段階高い鳴き声が林の中まで響いてきた。
どうやらこの鳴き声がオーククイーンのものらしい。
先行してきたデミオーク7匹の後続のデミオーク達はその鳴き声にあわせるかのように後退していく。
その後ろからも続くデミオーク達は皮鎧どころか鉄製っぽいが錆びの浮いた鎧を着込んでいる。
巨大なカイトシールドも装備しており、後退したデミオーク達に取って代わり最前線で横一列になり陣形のようなものを構築している。
何の警戒も無しに突っ込んでくるバカかと思っていたら軍隊みたいな行動もできるとは驚きだ。
陣形はすぐに完成し、前面はカイトシールドを構えた鉄鎧組が固め、その後ろには長槍を装備している組がいるようだ。
恐らくその後方には弓隊がいるのかもしれない。ちらっと弓っぽいのを持ったデミオークも見えたし。
【やはり、オーククイーンの『統率』を使われていますね】
【『統率』?】
あっという間に整ってしまった陣形から再確認したレーネさんが呟く。その念話の声はあまり芳しくない声色だ。
【はい。デミオークは最初の7匹が普通の状態で、何も考えずに突っ込んでくるだけの頭の弱い魔物です。
ですがオーククイーンの持つスキル『統率』を使われるとちょっとした軍隊並の行動を取るようになります。今の状態がまさにソレです】
【なるほど……。じゃあオーククイーンを先に倒した方がいいですね】
デミオーク達の行動がオーククイーンのスキルのせいなら元を断ってしまえばいい。
だが問題はオーククイーンのいる岩場まではかなり距離があるのと、岩場の入り口辺りで展開して陣形を築いているデミオークの群れだろう。
単独転移Lv1で距離を潰して倒すにしてもちょうどいい場所があまりない。
やるなら連続で転移して一気に移動してしまうべきだろう。
【それは難しいかと思います。
オーククイーンもそれは理解しているため、『統率』で犠牲を厭わず自身を守る為にデミオークを配置しているはずです】
【む……。肉壁みたいなものを配置していたら面倒ですね……】
【はい……】
オーククイーンを先に倒す案はどうやら却下になりそうだ。
無理をすればいけなくもないだろうが、安全性に欠ける。
陣形を構築しているとはいえ、所詮デミオークだ。そこまでする必要性もないだろう。
真正面からぶつかっても問題ない相手だろうし。
と、そこまで考えたところでまたオーククイーンが鳴き声を張り上げはじめる。
デミオーク軍への命令でも始めたのかと思ったがどうも違う。
陣形を構築したデミオーク達はその鳴き声を聞いても特に動く事はないようだ。
小首を傾げたところで今度はオーククイーンのモノではない野太い鳴き声が響いた。
【なっ!? まさか!?】
どうやらレーネさんはこの野太い鳴き声を知っているようだ。驚愕の表情で金剛羅刹を握った手に力が入りミシリ、と音が鳴った。
先ほどの鳴き声は野太いがどう聞いても豚の鳴き声だった。
つまりは――。
【この状況でオークキングと警戒鳴なんて!】
【警戒鳴?】
【はい……。オーククイーンの鳴き声に応える様に放たれているこの野太い鳴き声はオークキングの物です。
そしてこの鳴き方は警戒鳴と言い、番が互いの危機を知らせるときに用いるものです】
レーネさんの表情が強張っている。
どうやらそれなりにまずい状況のようだ。それでもまだ撤退を進言しないってことはレーネさんの手に余る状況ではないということだ。
レーネさんは引き際を誤らない。
ソロで鍛えてきたレーネさんにとって引き際を誤るということは即、死亡を意味するからだ。
そんなレーネさんがまだ大丈夫と踏んでいるならオレはその判断を尊重する。
【時間をかけたらオークキングも来ちゃいますね。
依頼はデミオーク20匹の討伐ですし、陣形を整えたといっても脅威ではないと思いますので規定数狩ったら撤退しますか?】
正直な話、別にここでオーククイーンやオークキングを討伐する必要性はオレにはない。
依頼分だけデミオークを討伐して撤退でもいいのだ。
もちろん撤退した場合はギルドにオーククイーンとオークキングの件は報告するけど。
【……いえ、オーククイーンとオークキングの番となると恐らくすでに子供が生まれています。
このまま放っておくのは危険です】
【クイーンとキングの子供だとやっぱり結構強い魔物なんですか?】
【オーククイーンとオークキングの子供はそこそこの確率でオークロードが生まれます。
オーク種の最上位と言われている魔物で、下手な魔結晶持ちの魔物より遥かに強いです。
恐らくまだ成長しきっていないはずですし、今のうちに叩いてしまわないと……】
【なるほど】
魔物にはそれぞれランクというか上位下位のような位のようなものがあり、オークの上位種はオークキング、デミオークの上位種がオーククイーン。
さらに上位種となるのがオークロードだ。
オーク種は基本的に成長が早く、あっという間に成体になってしまう。
当然ながら成長しきるまでは能力的にも成体よりは弱い。
レーネさんにここまで言わせるほどなら今すぐ叩いてしまうべきだろう。
【わかりました。オークロードを倒しましょう。
それなりに距離があるとはいえラッシュの街に来たりしたら嫌ですしね】
【ありがとうございます、ワタリさん。
ですが成体になっていないというのは希望的観測ですので……もし成体になっていたら撤退しましょう】
【了解です】
成体のオークロードは本当にヤバイようだ。
恐らく成体になっていたらラッシュの街で大規模討伐隊が組まれる事になるんだろう。
特殊進化個体並の対応ということになる。
【じゃあまずは邪魔なアレからさくっと殺っちゃいましょう】
【はい!】
作戦会議は終わった。
未だに鳴き声をあげ続けているオーククイーンとオークキングはまだ合流していないのだろう。
オークキングが単独ということはまずないらしいので、オークキングが合流したら必然的に敵の数が増大する。
オークキングが率いるのはオークだ。
オークキングも『統率』が使えるのでデミオークの軍同様に手強いオークが増える事になる。
まぁ手強いといっても、オレ達にとっては違うだろうが。
スキルを一時的に弄り、複数転移Lv1と状態異常回復魔法を切って、筋力強化Lv3を取得する。
筋力強化Lv3と回復力強化Lv3をそれぞれ掛け、戦闘準備は完了だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
隠れている林からデミオーク軍がいる岩場の入り口まではおよそ500mほど。
カイトシールドを前面に斜めに構えている最前列まで最速の魔法で着弾までに1秒もかからない。
だがあの斜めに構えているのが厄介だ。
まともに受ければ貫通させるのも訳ないが、斜めに受ける事によって衝撃を分散して弾かれる危険がある。
『統率』のおかげでいやらしいほどに知恵が回っている。
だが問題ない。
斜めに構えようが角度を調節するなど造作もないことだ。
普通の魔法使いだと手元から離して魔法を撃つのはMPが余計に消費されて厳しいらしいが、MPなら問題ない。
【行きます!】
スタミナが一気に半分まで減少し、万能感にも似た魔力の高まりを感じる。
発動した最上位魔眼――王族の不文律により、MPの消費がなくなったオレは20mは離れた上空に氷の槍を数十本単位で瞬時に構築完了し、レーネさんが走り出したのに合わせて中級魔法:風で圧縮した風を爆発させ推進力を加速させる。
風を切り飛来する2つの陽光を反射した死の軌跡達。
正面から来る遠距離攻撃に対して角度をつけて弾くように斜めに構えていたカイトシールドが、上空から飛来した超高速の氷の槍により真正面から受け止められる。
当然ながらその威力は凶悪の一言。
鉄で補強されているであろうカイトシールドを易々と貫通し、鉄の鎧を着込んだデミオーク達も貫通して地面を穿つ。
一瞬にして最前線の盾が崩され、その後ろの槍部隊も甚大な被害を被っただろう。
氷の槍に貫かれ絶命したデミオーク達は数十にも及ぶ。
この時点で依頼は完了だ。だが当然終わるわけがない。むしろまだまだこんなものは序の口だ。
筋力強化Lv3で筋力が倍に跳ね上がったレーネさんの無慈悲な斬撃が迸る。
愛用の長剣――金剛羅刹ではなく、長身のレーネさんに匹敵するほどの巨大な大剣――朱珠白塵が邪魔だとばかりにたった一振りで絶命したデミオーク達を吹き飛ばし、道を作り上げる。
朱珠白塵が2度3度と振られる度に何も出来ずにデミオーク達が消し飛んでいく。
解体など望めない、オーバーキルの一撃が死体が地面に落ちる前に消滅させていくのだ。
王族の不文律を解除したオレもアルを先行させつつ、氷の矢を散発的に放ってレーネさんを援護する。
予想通りに槍部隊の後ろには弓を装備したデミオークが大量に居たので、レーネさんを守るように氷の矢でデミオークの放つ矢を打ち落としたりもした。
だが朱珠白塵を振るうレーネさんは1撃1撃が暴風を纏っているようなものなのでほとんど矢が到達することはない。
それでも隙間を縫って迫ってくる矢は確かに存在するのでそういったものを打ち落としているのだ。
ちなみにオレに向かってくる矢は全部アルが叩き落している。
林の中から見えていたデミオークの数はほんの一握りだけだったようだ。
戦闘が開始してすぐに分かった事だが数が多い。
よく見なくてもすでにオークの群が合流している。灰色に混じって緑の巨漢が吹き飛んでいたからだ。
もう1度王族の不文律を使って数を減らした方がいいだろうか。
だが王族の不文律を使うにはスタミナを回復しなければいけない。
戦闘中では自然回復はあまり見込めない。
回復力強化Lv3で回復力が200を超えているオレでも戦闘中にスタミナを自然回復だけで回復させるにはもう少しかかる。
だがユーウイトさんの依頼のときに集めたスタミナ回復ポーションは常備しているので問題はない。
【レーネさん! 王族の不文律をもう1度使います!】
【お願いします!】
返事を返したレーネさんの朱珠白塵の刀身が少し赤味を強くした次の瞬間、腕が掻き消えるほどの速度で真横に振られる。
一筋の朱がレーネさんを中心とした扇状の前方10m範囲を消し飛ばした。
その直前にスタミナ回復ポーションをアイテムボックスから使用し、王族の不文律を発動させるスタミナ確保を完了させている。
直後、レーネさんが作ってくれた場所に高速回転する巨木ほどの太さを持つ氷の螺旋槍が幾本も出現した。
氷の螺旋槍の出現と同時にレーネさんが大きく後退し、アルが盾を構えて前に出る。
圧縮された風による爆発的な推進力をプラスされた氷の螺旋槍が灰と緑に溢れた空間の蹂躙を開始した。
どうやらこの鳴き声がオーククイーンのものらしい。
先行してきたデミオーク7匹の後続のデミオーク達はその鳴き声にあわせるかのように後退していく。
その後ろからも続くデミオーク達は皮鎧どころか鉄製っぽいが錆びの浮いた鎧を着込んでいる。
巨大なカイトシールドも装備しており、後退したデミオーク達に取って代わり最前線で横一列になり陣形のようなものを構築している。
何の警戒も無しに突っ込んでくるバカかと思っていたら軍隊みたいな行動もできるとは驚きだ。
陣形はすぐに完成し、前面はカイトシールドを構えた鉄鎧組が固め、その後ろには長槍を装備している組がいるようだ。
恐らくその後方には弓隊がいるのかもしれない。ちらっと弓っぽいのを持ったデミオークも見えたし。
【やはり、オーククイーンの『統率』を使われていますね】
【『統率』?】
あっという間に整ってしまった陣形から再確認したレーネさんが呟く。その念話の声はあまり芳しくない声色だ。
【はい。デミオークは最初の7匹が普通の状態で、何も考えずに突っ込んでくるだけの頭の弱い魔物です。
ですがオーククイーンの持つスキル『統率』を使われるとちょっとした軍隊並の行動を取るようになります。今の状態がまさにソレです】
【なるほど……。じゃあオーククイーンを先に倒した方がいいですね】
デミオーク達の行動がオーククイーンのスキルのせいなら元を断ってしまえばいい。
だが問題はオーククイーンのいる岩場まではかなり距離があるのと、岩場の入り口辺りで展開して陣形を築いているデミオークの群れだろう。
単独転移Lv1で距離を潰して倒すにしてもちょうどいい場所があまりない。
やるなら連続で転移して一気に移動してしまうべきだろう。
【それは難しいかと思います。
オーククイーンもそれは理解しているため、『統率』で犠牲を厭わず自身を守る為にデミオークを配置しているはずです】
【む……。肉壁みたいなものを配置していたら面倒ですね……】
【はい……】
オーククイーンを先に倒す案はどうやら却下になりそうだ。
無理をすればいけなくもないだろうが、安全性に欠ける。
陣形を構築しているとはいえ、所詮デミオークだ。そこまでする必要性もないだろう。
真正面からぶつかっても問題ない相手だろうし。
と、そこまで考えたところでまたオーククイーンが鳴き声を張り上げはじめる。
デミオーク軍への命令でも始めたのかと思ったがどうも違う。
陣形を構築したデミオーク達はその鳴き声を聞いても特に動く事はないようだ。
小首を傾げたところで今度はオーククイーンのモノではない野太い鳴き声が響いた。
【なっ!? まさか!?】
どうやらレーネさんはこの野太い鳴き声を知っているようだ。驚愕の表情で金剛羅刹を握った手に力が入りミシリ、と音が鳴った。
先ほどの鳴き声は野太いがどう聞いても豚の鳴き声だった。
つまりは――。
【この状況でオークキングと警戒鳴なんて!】
【警戒鳴?】
【はい……。オーククイーンの鳴き声に応える様に放たれているこの野太い鳴き声はオークキングの物です。
そしてこの鳴き方は警戒鳴と言い、番が互いの危機を知らせるときに用いるものです】
レーネさんの表情が強張っている。
どうやらそれなりにまずい状況のようだ。それでもまだ撤退を進言しないってことはレーネさんの手に余る状況ではないということだ。
レーネさんは引き際を誤らない。
ソロで鍛えてきたレーネさんにとって引き際を誤るということは即、死亡を意味するからだ。
そんなレーネさんがまだ大丈夫と踏んでいるならオレはその判断を尊重する。
【時間をかけたらオークキングも来ちゃいますね。
依頼はデミオーク20匹の討伐ですし、陣形を整えたといっても脅威ではないと思いますので規定数狩ったら撤退しますか?】
正直な話、別にここでオーククイーンやオークキングを討伐する必要性はオレにはない。
依頼分だけデミオークを討伐して撤退でもいいのだ。
もちろん撤退した場合はギルドにオーククイーンとオークキングの件は報告するけど。
【……いえ、オーククイーンとオークキングの番となると恐らくすでに子供が生まれています。
このまま放っておくのは危険です】
【クイーンとキングの子供だとやっぱり結構強い魔物なんですか?】
【オーククイーンとオークキングの子供はそこそこの確率でオークロードが生まれます。
オーク種の最上位と言われている魔物で、下手な魔結晶持ちの魔物より遥かに強いです。
恐らくまだ成長しきっていないはずですし、今のうちに叩いてしまわないと……】
【なるほど】
魔物にはそれぞれランクというか上位下位のような位のようなものがあり、オークの上位種はオークキング、デミオークの上位種がオーククイーン。
さらに上位種となるのがオークロードだ。
オーク種は基本的に成長が早く、あっという間に成体になってしまう。
当然ながら成長しきるまでは能力的にも成体よりは弱い。
レーネさんにここまで言わせるほどなら今すぐ叩いてしまうべきだろう。
【わかりました。オークロードを倒しましょう。
それなりに距離があるとはいえラッシュの街に来たりしたら嫌ですしね】
【ありがとうございます、ワタリさん。
ですが成体になっていないというのは希望的観測ですので……もし成体になっていたら撤退しましょう】
【了解です】
成体のオークロードは本当にヤバイようだ。
恐らく成体になっていたらラッシュの街で大規模討伐隊が組まれる事になるんだろう。
特殊進化個体並の対応ということになる。
【じゃあまずは邪魔なアレからさくっと殺っちゃいましょう】
【はい!】
作戦会議は終わった。
未だに鳴き声をあげ続けているオーククイーンとオークキングはまだ合流していないのだろう。
オークキングが単独ということはまずないらしいので、オークキングが合流したら必然的に敵の数が増大する。
オークキングが率いるのはオークだ。
オークキングも『統率』が使えるのでデミオークの軍同様に手強いオークが増える事になる。
まぁ手強いといっても、オレ達にとっては違うだろうが。
スキルを一時的に弄り、複数転移Lv1と状態異常回復魔法を切って、筋力強化Lv3を取得する。
筋力強化Lv3と回復力強化Lv3をそれぞれ掛け、戦闘準備は完了だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
隠れている林からデミオーク軍がいる岩場の入り口まではおよそ500mほど。
カイトシールドを前面に斜めに構えている最前列まで最速の魔法で着弾までに1秒もかからない。
だがあの斜めに構えているのが厄介だ。
まともに受ければ貫通させるのも訳ないが、斜めに受ける事によって衝撃を分散して弾かれる危険がある。
『統率』のおかげでいやらしいほどに知恵が回っている。
だが問題ない。
斜めに構えようが角度を調節するなど造作もないことだ。
普通の魔法使いだと手元から離して魔法を撃つのはMPが余計に消費されて厳しいらしいが、MPなら問題ない。
【行きます!】
スタミナが一気に半分まで減少し、万能感にも似た魔力の高まりを感じる。
発動した最上位魔眼――王族の不文律により、MPの消費がなくなったオレは20mは離れた上空に氷の槍を数十本単位で瞬時に構築完了し、レーネさんが走り出したのに合わせて中級魔法:風で圧縮した風を爆発させ推進力を加速させる。
風を切り飛来する2つの陽光を反射した死の軌跡達。
正面から来る遠距離攻撃に対して角度をつけて弾くように斜めに構えていたカイトシールドが、上空から飛来した超高速の氷の槍により真正面から受け止められる。
当然ながらその威力は凶悪の一言。
鉄で補強されているであろうカイトシールドを易々と貫通し、鉄の鎧を着込んだデミオーク達も貫通して地面を穿つ。
一瞬にして最前線の盾が崩され、その後ろの槍部隊も甚大な被害を被っただろう。
氷の槍に貫かれ絶命したデミオーク達は数十にも及ぶ。
この時点で依頼は完了だ。だが当然終わるわけがない。むしろまだまだこんなものは序の口だ。
筋力強化Lv3で筋力が倍に跳ね上がったレーネさんの無慈悲な斬撃が迸る。
愛用の長剣――金剛羅刹ではなく、長身のレーネさんに匹敵するほどの巨大な大剣――朱珠白塵が邪魔だとばかりにたった一振りで絶命したデミオーク達を吹き飛ばし、道を作り上げる。
朱珠白塵が2度3度と振られる度に何も出来ずにデミオーク達が消し飛んでいく。
解体など望めない、オーバーキルの一撃が死体が地面に落ちる前に消滅させていくのだ。
王族の不文律を解除したオレもアルを先行させつつ、氷の矢を散発的に放ってレーネさんを援護する。
予想通りに槍部隊の後ろには弓を装備したデミオークが大量に居たので、レーネさんを守るように氷の矢でデミオークの放つ矢を打ち落としたりもした。
だが朱珠白塵を振るうレーネさんは1撃1撃が暴風を纏っているようなものなのでほとんど矢が到達することはない。
それでも隙間を縫って迫ってくる矢は確かに存在するのでそういったものを打ち落としているのだ。
ちなみにオレに向かってくる矢は全部アルが叩き落している。
林の中から見えていたデミオークの数はほんの一握りだけだったようだ。
戦闘が開始してすぐに分かった事だが数が多い。
よく見なくてもすでにオークの群が合流している。灰色に混じって緑の巨漢が吹き飛んでいたからだ。
もう1度王族の不文律を使って数を減らした方がいいだろうか。
だが王族の不文律を使うにはスタミナを回復しなければいけない。
戦闘中では自然回復はあまり見込めない。
回復力強化Lv3で回復力が200を超えているオレでも戦闘中にスタミナを自然回復だけで回復させるにはもう少しかかる。
だがユーウイトさんの依頼のときに集めたスタミナ回復ポーションは常備しているので問題はない。
【レーネさん! 王族の不文律をもう1度使います!】
【お願いします!】
返事を返したレーネさんの朱珠白塵の刀身が少し赤味を強くした次の瞬間、腕が掻き消えるほどの速度で真横に振られる。
一筋の朱がレーネさんを中心とした扇状の前方10m範囲を消し飛ばした。
その直前にスタミナ回復ポーションをアイテムボックスから使用し、王族の不文律を発動させるスタミナ確保を完了させている。
直後、レーネさんが作ってくれた場所に高速回転する巨木ほどの太さを持つ氷の螺旋槍が幾本も出現した。
氷の螺旋槍の出現と同時にレーネさんが大きく後退し、アルが盾を構えて前に出る。
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