幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

133,オークション Part,2

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 落札予定のうちの片方、『春燕』は無事ゲットできた。
 会場から拍手を送られるくらいアルの落札テクニックはすごかった。
 オークションなどほとんど知らないオレには何をしているのかまったくわからなかったが、何かアルがすごいことをやっているというのは落札が始まってからの会場のざわめきによってなんとなく理解できていた。


「アルはすごいなぁ……。なんでも出来ちゃうね!」

「悔しいけど見事だったわ。ほんとアル君いったいどこでそんなテクニック身に着けてくるの?」

「恐悦至極にございます、ワタリ様。
 エリザベート、それは秘密です」

「ふふ……。秘密ですよ、エリザベートさん!」

「むむむぅ……。いいもんいいもん。私もワタリちゃんと秘密作っちゃうもん!」

「わわわ! エリザベートさん、まだオークション終わってないですよ!」

「いいのーどうせ他のところからは見えないでしょー?」

「私達だけじゃないんですからだめですよ!」

「あれあれ? ということは2人きりだったらいいのね!? 言質とったどー!」


 かなり無理やりだがエリザベートさん流の強引な方法で言質を取られてしまった。
 しかし逆に言えば2人きりにさえならなければ問題ない。
 アルを押しのけて2人きりになどなれるわけがないのだ。まったくもって問題ない。
 ドレスを着たままガッツポーズを取っている残念エルフさんは放って置いてオークションに戻ろう。

 カタログによると先ほど落札した『春燕』はあと3回出品される。
 どのタイミングで出てくるかはわからないが、同じ魔結晶でも出品される。
 魔結晶は基本的に武器防具道具に使用する場合は失敗するのが前提だから複数用意するのが常識だ。
 しかし超レアな魔結晶などを複数集めるのは困難だ。
 その場合はどうするかは入手者次第だ。
 食べてしまうもよし、失敗覚悟で使用するもよし、予備が出来るまで待つもよし。
 ただ食べる場合は効果によっては意味がない場合もある。
 ステータスを上昇させるタイプの魔結晶なら食べるのは非常に有効だ。
 だがスキルを強化したり、特殊な効果だったりすると食べてもほとんど意味がない場合が多い。
 対象となるスキルを持っていたり、特殊効果に意味がある場合は問題ないが魔結晶を食べる場合はほとんどステータス増加系の場合のみだ。


「失礼致します。キリサキ様、こちらが落札証明になります。
 退出時にまとめて支払いを行えますのでその時にお渡しください」


 部屋に居た執事さんの1人が札のような物をアルに渡している。
 話の通りにあれが落札証明なのだろう。
 退出時にまとめて支払うのはオークション中に支払いをしていては楽しめないからだろう。
 白熱して資金以上の金額で落札してしまった場合は数日は待ってもらえるらしい。
 まぁうちのアルがそんな失敗するわけないけどね。


「あ、ワタリちゃん。見て見て! 『紫狸』だって! めっずらしーさっすがオークションだねぇ」

「『紫狸』ですか?」

「あれ? 知らない? 結構有名だよ、『紫狸』」

「正式名称はイリュージョンラクーンって言って、強力な幻惑魔法を使ってくる見た目は可愛い魔物のことよ。
 ラッシュの近くにはいない魔物で王都よりもさらに東に行かないといない珍しい魔物なのよ」

「そうそう、あの『紫狸』で作った武器は幻惑の異常を与えられるんだ。
 かなり強烈らしいよ?
 でもアクセサリーなんかに使うと組み合わせるパターンによって色々な幻惑効果を得られるからすごく便利なんだー。
 ……欲しいなぁ」


 ユユさんとエリザベートさんがタッグで教えてくれる。
 エリザベートさんの説明通りに珍しい魔物の魔結晶のようでどんどん値段が釣りあがっている。
 最後にユユさんがボソッと欲しいと言ったが、ここで参戦するにはちょっと資金的な問題が出てきそうだ。
 まだ『春燕』を競り落とさないといけないし、本命も残っている。


「今回はちょっと無理ですねぇ……」

「あ、もちろんだよ。私もどうしても欲しいわけじゃないし、そんなお金ないし……。
 ワタリちゃんに奢って貰おうとか思ったわけじゃないよ? さすがに高すぎだよ。
 たぶんうちでかなりいい物買えちゃうと思うよ。
 ……あ、でも……アル君の料理ならいつでも奢って貰いたいけど!」

「あはは」

「ここのお菓子もおいしいけど、アル君の料理は比べ物にならないもんねぇ~」


 ユユさんの言葉にエリザベートさんも追随し、大きく開いた谷間からクッキーを1枚取り出し口に放り込む。
 ……え、なんで谷間に挟んでたの!?

 驚愕しているとまたもや谷間からクッキーが出現し、エリザベートさんの紅く艶かしい唇に吸い込まれていく。
 い、いったい何枚入ってるんだ!?


「……あ、落札したみたいです、ワタリさん」

「おぉ……。200万ラードかぁ……すご~」

「高いですねぇ~」


 興味津々で見ていたレーネさんの言葉に四次元谷間から目を移すと会場からは拍手が上がっている。
 まぁ200万ラードは『戦塵亀』の780万ラードほどではないが結構な大物だ。
 今までの魔結晶の中でも上位に位置する金額でもある。
 オレが落札した『春燕』とは雲泥の差でもあったりする。
 まぁ別にお金を大量に使うためにきたわけじゃないんだからいいんだけどね。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 『春燕』の2個目はほどなくして出品され、今回も順調にアルが落札してくれた。
 ほとんど金額も1個目と変わらないあたりさすがアルだ。
 まぁ競ってくる相手が1個目と比べても少なかったのもある。
 アルのテクニックを見せ付けられて、勝てないと降りていく人が結構居たからだ。
 これなら3個目もいけそうだ。
 本命も問題ないだろう。

 3個目と本命の出品がなかなかこないがオークションは順調に進んでいく。
 未だに『戦塵亀』の780万ラードを超える金額は飛び出していないがそれでも、『紫狸』の200万ラードを超える金額はちらほら出てきていた。
 今日のオークションだけで相当な金額が動いている。
 小説とか漫画だとよくこういうのを狙って大泥棒なり、なんとか旅団なり、何なりが来るものだが、今日のオークションのために相当数の高ランク冒険者が雇われていたりするそうなので安心だろう。
 あ、フラグじゃないよ?


「うわっ! たぶんアレが今日1番のサプライズだよ!?」

「わーほんとう……。まさかあんな大物が出てくるとは思わなかったなぁ」


 ユユさんが椅子から立ち上がって壇上の魔結晶に釘付けになり、エリザベートさんも口調は冷静だが視線は釘付けだ。

 その2人の視線の先にある魔結晶は普通の魔結晶のように小さな単結晶ではなかった。
 おそらくオレが大きく両手を広げたよりも大きく、そしていくつもの結晶が融合している。
 だがオークショニアの説明ではアレで1つの魔結晶なのだそうだ。


 その魔結晶の名称は『迷宮』。


 なんと迷宮の生み出した魔結晶なのだ。
 迷宮は最下層に迷宮の核となる魔石とボスとなるガーディアンがいる。
 魔石は迷宮の外に出すと迷宮が死ぬ。
 その時に魔石が極々稀に変化するのだそうだ。
 それがこの魔結晶『迷宮』。

 迷宮自体が攻略されること自体なかなかないことなのに、その攻略の証である魔石が変化するのはさらに確率が低い。

 ユユさんが言ったように正真正銘この魔結晶が本日1番のサプライズだろう。
 会場中でも未だにどよめきが収まらない。
 オークショニアの説明も熱を帯び、入手経路や証明などを熱く語っている。
 それによるととある小さな迷宮が攻略された際に生まれたのがこの魔結晶だそうだ。
 さすがに持て余した攻略者達が極秘でこのオークションの開催者に話を持ってきたそうだ。
 証明は数十人にも及ぶ、オークション専属の鑑定人達とオークションに関わりのない鑑定人達全員から出されており、まず本物。
 というかこのオークションで出品されている以上本物以外のわけがないけど。
 それでも物が物だけに何十人もの鑑定人達全員からの証明が出されることになったみたいだ。


「は、始まるね……」

「えぇ……いったいいくらになるのかしら……」


 一時も目を離さないユユさんとエリザベートさんが喉を鳴らしそうな勢いで唾を飲み込み、今か今かと落札開始を待っている。
 まぁ2人が競売に参加することはないんだけどね。
 それでも気になってしまうのは仕方ないだろう。オレも気になるし。


 会場のボルテージが一気に上がる。
 熱く語っていたオークショニアから遂に開始の合図が出たからだ。
 最低金額ですら100万ラードという破格のスタートだったが開始数分であっさりと『戦塵亀』の780万ラードは追い抜かれた。
 競っているのは5人。
 次々に塗り替えられていく金額に会場の熱気は凄まじいものになっている。

 ユユさんもエリザベートさんも手に汗握って壇上を見つめ……1人が脱落。続いて2人目も脱落した。
 残りは3人。

 遂に大台の1000万ラードを超えた金額に3人目が脱落した。
 残りは2人。一騎打ちだ。

 しかしさすがに残った2人。
 選ばれし、VIP中のVIPなのか競る額が瞬く間に上がっていく。
 あっという間に2000万ラードを超え、ランクSに成り立ての顎を売った時の2800万ラードに近づいてきた。
 しかしここで遂に競る額が小刻みになってきた。
 さすがに2人も限界なのか、それでも小刻みに刻んでなんとか競り勝とうと必死だ。

 見守る会場も凄まじい熱気を押し込めてオークショニアと競っている2人の声しか聞こえない。


 そして遂に落札を告げる甲高い木槌の音が鳴り響く。
 競り勝ったのは青いマスクを被ったひょろながい紳士。
 最終落札額は2764万ラード。
 顎の売却額には1歩及ばなかったがそれでもすごい額だ。

 最後まで競っていた落札者とは正反対の肥満体の赤いマスクの紳士は非常に悔しそうにしている。
 だが最後には相手に拍手を送り、どうやら禍根を残すようなことはないようだ。

 会場は盛大な拍手に包まれ、ひょろながい紳士はその拍手に応えている。


 しかし、あんな魔結晶どうするのだろうか。
 オークショニアの話では『迷宮』の効果は迷宮作成。
 任意の場所に任意の迷宮を作り出すことが出来るというとんでもない効果だ。

 オークショニアの話とユユさんとエリザベートさんの話を総合すると以前にも何個か『迷宮』は歴史上に存在し、その効果は全て同じであり、様々な検証が行われている。

 迷宮は生まれたばかりでは非常に弱い。
 通常はある程度育つまでは入り口を出さずに大人しく隠れているものだそうだ。
 しかし魔結晶から作られる迷宮は最初から入り口が出ていて隠せない。
 当然ながら核である魔石を外に出せば迷宮は死に、その魔石も魔結晶になるかはわからない。


「たぶん、新たな迷宮として育てて利益を独占するんだろうね」

「まぁそれが無難なところでしょうね」

「結構気長な話なんですね」

「でも自分の思い通りに迷宮を作れるから利益は馬鹿にならないわ。
 今回の出費は相当痛いでしょうけど、長い目で見れば……そうねぇ……孫……いえ、ひ孫くらいからならなんとか利益が出てくるんじゃないかしら」

「……き、気長な話ですねぇ……」


 迷宮育成という結構面白そうな話だが、それにかかる時間は思った以上だった。
 さすがにひ孫の代まで迷宮育成を頑張るのはないわぁ……。
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