幼女と執事が異世界で

天界

文字の大きさ
135 / 183
第7章

134,オークション Part,3

しおりを挟む
 1番のサプライズだと思われる魔結晶――『迷宮』の競りが終わってもまだ出品は続く。
 普通こういう1番盛り上がるのは最後に持ってくるか最初に持ってくるかだと思うのだけれど、まだ全体の3分の1は残っている。
 もちろんカタログ上での3分の1なのでサプライズを含めるとまだまだあるだろう。
 『春燕』の残り1個と本命も残っているし。


「……ということはもっと大きなサプライズがある?」

「かもしれないねぇ~」

「でもさすがに『迷宮』よりもすごい魔結晶っていうと想像がつかないわねぇ」


 ユユさんもエリザベートさんもオレと同じように思ったようだ。
 しかし確かに『迷宮』よりもすごい魔結晶というと全然想像できない。
 まぁそもそもあんまり魔結晶知らないんだけどね!


「でも何もなしで終わるっていうことはないと思うし、楽しみだね」


 ユユさんの心底楽しみにしていそうな笑顔に皆で頷くとオークション会場へと視線を向けた。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「こちらが落札証明となります」


 3個目の『春燕』を無事に落札し終わり、遂に落札予定の魔結晶は残り1つとなった。
 落札証明を持ってきた執事の人も言葉を手短にして邪魔をしないように配慮している。
 落札品が2個目、3個目となり、取引について同じことを何度も言うのは失礼な場合もあるしね。


「さていつでてくるのかなぁ」

「ワタリちゃん、『春燕』の他には何を落札する予定なの?」

「『弧鷹』ってやつですよ」

「スリムイーグルの魔結晶で効果は軽量化。
 防具に仕込むと便利だけど軽くなる分ふんばりは弱くなるね。武器も同様で重量で押しつぶすようなのだとまったく使い物にならなくなるけど、速さを主軸にするなら重宝するよ」


 エリザベートさんの質問に答えるとついでにユユさんが解説を交えてくれる。
 軽量化はそれなりに人気のある効果だ。
 防具が軽くなればよけやすくなるし、動きやすい。武器に仕込んでも同様だ。
 だがユユさんが言うように、重量も含めて利点としている武器防具にはまったく合わない。
 そういう場合は逆の重量増加などの効果なんかがいいらしいけど、常時重くなってしまうので大変らしい。
 切り替えが出来たら1番楽だろうけどそのためには別の魔結晶と特別な機構が必要になるそうだ。
 武器防具などのそこそこの大きさの物に仕込むにはまだ難しいらしい。その上衝撃にも強くないそうなので微妙だ。


「はっ……! もしやその魔結晶を食べれば……。
 わ、ワタリちゃん! わ、私にも1個買えないかなぁ?」

「どうでしょう? いくらくらいになると思いますか?」

「たぶん『春燕』よりは高いと思いますよ。そこそこ人気あるし」

「がーん……。そ、そうよねぇ……」


 エリザベートさんのなんとも女性らしい発想にちょっと苦笑いだが、実際そういう目的で購入する人は多いらしい。
 見た目を変えずに軽くなる『軽量』というスキルが取得できる可能性もあるそうだ。
 魔結晶を食べてスキルを得られる場合はポイントがかからないそうだ。
 しかしなかなか得られないので一般的ではない。
 スキルを得るまでに何百万ラードとかかるのでは一般人には手がでないどころの話ではないだろう。

 しかし……もしオレがそういうやり方でスキルを得て、リセットしたらどうなるんだろうか。
 ちゃんとポイントに還元されるのならやる価値があるのではないだろうか。


「ワタリさん……どうかしましたか?
 ……あ、わ、ワタリさんはまだまだ成長するんですから体重は気にしない方が……」

「え? あーいや別に体重のことを考えてたわけじゃないですよ」

「そ、そうでしたか……」


 考え込んでいたオレにレーネさんが心配そうに声をかけてきたけど、またなんともいえない心配のされ方をされてしまった。
 あーでもオレくらいの子でも、ませてる子はダイエットをしたりするなんて生前ではよくあったっけ。

 大きな体を小さくさせて赤くなっているレーネさんにほっこりさせてもらっている間にもオークションは続いていく。

 そんなこんなしていると遂に目的の魔結晶――『弧鷹』が出品された。

 『弧鷹』はそこそこ人気がある。
 なので『春燕』のようにはいかないだろう……。なんて思っていた時がオレにもありました。


「さすがアル君だねぇ……」

「ほんとねぇ~……。でも私のワタリちゃんは落札させないわよ!」

「さすがです、アルさん」

「うんうん、よくやった、アル! さっすが私のアルだ!
 それと私は誰のものでもないですし、出品もしません!」

「ぶーぶー。ワタリちゃんのいけずー」

「まったくもぅ……」


 いつもの如くエリザベートさんがまじめな顔でおかしな発言をして、言ってやったぜ的なドヤ顔をしている。
 まぁそんなことは置いておいて、『弧鷹』は無事にアルが見事なテクニックで落札してくれた。
 未だにどんなテクニックなのかいまいちわかってないオレだけど問題ない。だってアルがすごいのはいつものことだし!

 落札証明も無事に受け取り、オレの予定していた落札対象は全てゲットできた。
 あとは残りのオークションを楽しむだけだ。
 もし何か良さげなものがあったら落札してもいいし。


「アル、残りどのくらいだっけ?」

「カタログに載っていた出品物は残り4品となります」

「ありゃ……もうそんなに少ないのか。
 ということはサプライズもいれても5,6品かなー?」

「たぶんそのくらいだね」


 思っていたよりもずいぶん残りが少ない。
 『弧鷹』はずいぶん後ろの方だったようだ。

 だが『迷宮』以上のサプライズは未だにないのでまだ期待はできる。
 ただしオレに手が出せるような額ではないと思うけど。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「あっという間に最後の1品だね~」

「やっぱり最後の最後にサプライズをちゃんと用意してたようね。楽しみだわ」

「なんだろうねぇ~」

「楽しみです」


 カタログの残り4品はあっという間に落札されてしまってオレが手を出すことはなかった。
 まぁ欲しい物もなかったから別にいいんだけどね。
 しかしカタログに載っていた全ての魔結晶が落札され終わってもまだオークションは終わらない。
 つまりは最後の最後にトリとしてサプライズが用意されているということだ。


「さぁオークションも最後の品となりました。
 今宵お集まり頂いた皆様方は実に幸運といえるでしょう。
 皆様方は今宵、歴史の目撃者となられるのですから……。ご覧ください!」


 オークショニアの芝居がかった台詞と共に現れたのは……巨大な魔結晶だった。
 『迷宮』の時以上に会場中がざわめいている。


「あれが……魔結晶?」

「あんな魔結晶見たことないよ!?」

「すごく綺麗」

「綺麗……」


 オレとユユさんは見たこともない巨大な……たくさんの結晶の生えた透き通るような鉱物のような物を見て、それが魔結晶とは到底思えなかった。
 しかしエリザベートさんとレーネさんの反応は違った。
 確かにたくさん生えている結晶も見事なほどに透き通っており、当てられている光を綺麗に反射している。
 その結晶が生えている鉱物のようなものも宝石といっても頷けるほどの透明度と色合いを誇り、カッティングすればそれだけで相当な値段がつけられるだろうことは疑いようがない。

 だが今この場で出てきたということはこれも魔結晶ということだ。
 しかしオークショニアの説明通り歴史の目撃者になるほどの魔結晶なのだろうか。


「皆様が驚くのも無理はございません。
 なんとこの魔結晶は複数の魔結晶が溶け合って出来た物なのです。
 ……そう、そのような魔結晶はランドール大陸の長き歴史の中にも存在しない物です!」


 魔結晶は食べる際には砕いて食べる。
 粉々にするのは非常に簡単だが、部分的に溶かして結合させるのは難しい……というよりは出来ない。
 粉々にしたあとなら溶かすことも出来るが、逆に言えば粉々といえるほどの大きさにしなければ決して溶けない。

 壇上に置かれている魔結晶は見事なほどの透明度を保ち、その大きさを維持したまま確かに1つになっている。


「この魔結晶の生成経緯はまったくの不明でございます。
 しかしこの魔結晶を持ち込んだ冒険者の話では特殊進化個体モンスターを追っていた際に発見し、追っていた特殊進化個体モンスターは姿を消していたそうです」


 オークショニアの説明にまたもや会場中からどよめきが上がる。
 オークショニアはつまりこの魔結晶は特殊進化個体モンスターが変化したものではないかと言いたいのだ。


「もちろん私どもで安全性は保障致します。
 すでにこの魔結晶は魔物でもなければ特殊進化個体モンスターでもありません。
 魔結晶であることは多くの鑑定人達の手によって証明されております。
 1年以上をかけて安全であることも確認してありますのでご安心ください。
 しかし残念ながら100人以上の鑑定人及び、高名なあのラシルド・ラシラスの鑑定眼をもってしても効果はわかっておりません」


 またもや会場中がどよめきで埋め尽くされる。
 ラシルド・ラシラスが誰なんだか知らないが口ぶりからして相当有名な鑑定人なのだろう。
 ユユさんもエリザベートさんもレーネさんまでも驚いているし。


「効果はまったくもって不明。
 ですがこの奇跡のような美しさ。
 これが魔結晶であることも忘れるほどの美術的価値があることは皆様方ならば言うまでもないことでしょう!
 ですが! ですが!
 このオークションは魔結晶オークション!
 美術品オークションではないのです!
 それがこの魔結晶が当オークションにて出品された理由!」


 オークショニアの熱の篭った声に会場のボルテージも徐々に上がってきている。
 というかすでに待ちきれないとばかりに立ち上がって備えている者までいる。立ち上がってもあんまり意味はないのだけれど。


「それでは、ランドール大陸史上初となる神秘の魔結晶の所有者になるのはいったい誰なのか!
 落札開始額は1000万ラード!
 我こそはという猛者よ! さぁ! スタートでございます!」

「4000万」


 オークショニアの絶叫と共に始まった最後のオークションだが、スタートとほぼ同時に発せられたたった一言によって会場は一瞬にして沈黙が支配した。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

この優しさには絶対に裏がある!~激甘待遇に転生幼女は混乱中~

たちばな立花
ファンタジー
処刑された魔女が目を覚ますと、敵国の王女レティシアに逆行転生していた。 しかも自分は――愛され王女!? 前世とは違う扱いに戸惑うレティシア。 「この人たちが私に優しくするのは絶対に何か裏があるはず!」 いつも優しい両親や兄。 戸惑いながらも、心は少しずつ溶けていく。 これは罠? それとも本物の“家族の愛”? 愛を知らないレティシアは、家族の無償の愛に翻弄されながらも成長していく。 疑り深い転生幼女が、初めて“幸せ”と出会う―― じんわり心あたたまる、愛されファンタジー。 他サイトでも掲載しています。

【完結】目覚めたら異世界で国境警備隊の隊員になっていた件。

みやこ嬢
ファンタジー
【2024年9月9日完結、全40話、ブロマンスファンタジー】 才智正哉(さいち・まさちか)は社会人一年生の会社員。ある日、真っ暗な闇の中で嘆く赤髪の青年の夢を見てから目を覚ますと異世界にいた。しかも、夢で見た赤髪の青年ゼノンの体に意識を宿した状態で。 仲間に事情を訴えてもまともに取り合ってもらえず、仕方なく『ゼノン』として過ごすことに。国境警備隊の任務について教わるうちに仲間たちと次第に打ち解けていく。 時折見る闇の夢で少しずつゼノンと交流し、入れ替わる前の記憶が欠落していることに気付く。元の体に戻るためには、まず記憶を取り戻さねばならない。 人情に厚く涙もろい隊長、隊長至上主義の班長、無愛想で油断ならない同僚、重い過去を持つ人懐こい同室の同僚、世話焼きな家政夫、心配性の優しい軍医、ワケあり腹ペコ魔術師に囲まれ、慣れない異世界で悪戦苦闘する青年のお話。 ★1話と39話に挿し絵追加 ★カクヨム掲載作品を加筆修正 ★2024/09/06〜ホトラン入り感謝!

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。 真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。 気付いたら知らない所にいたの。 とてもこまったの。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

処理中です...