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斎藤福寿、守咲窓華との日々。
4 初めての保護人
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次の日の配給の量は多かった。僕は窓華さんの作った朝食を食べて、ソファで配給袋を開ける窓華さんの隣に座った。僕は窓華さんの部屋の前にある、昨日の夜に飲んだ空き缶を回収していた。持ってきてくれても良いのに、窓華さんは部屋の前に置くことしかしない。僕は呆れていたが慣れもあった。窓華さんは楽しそうに配給袋から服などを取り出して、テーブルに並べている。僕はその様子を見る。
「すっごい量だね。ドレスもあるよ」
その袋の中にはお高いコース料理の店でも通用しそうなドレスが入っていた。こんなのに合わせて着る服は僕は持ち合わせていない。 僕も李さんに言って、お高いスーツみたいなものを頼もうと思った。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「わぁ、メイク用品にかばんも入っている」
配給の荷物をリビングで広げる窓華さんは嬉しそうだ。窓華さんは化粧をしたところをあまり見たことない。元が綺麗な人だからきっと化けるのだろうな。詩乃は化粧っ気の全くないオタクさんだから、女でも違う生き物だ。
「僕はそのドレスに合うような服持ってないんだけど」
「すももさんに相談したら?」
「そんな簡単に……」
できるだけ上司に面倒ごとを頼みたくない僕は、そんな気軽に李さんに相談して良いものか戸惑ってしまう。だって、この旅行だって無理をしている。人に迷惑をかけてはいけないという両親の教えもあり、僕は自分で解決する方法を考えている。しかしそれが思い当たらない。クレカで買っても良いけど、僕は服を選ぶようなことをしたことがないため、どういうスーツを選べば良いかも分からない。
「人に物を頼むなんて簡単なことだよ」
「それは窓華さんにとって簡単なことでも、一般人にとっては難しいことなの」
「はは、私って特別なんだ」
良い意味で言ったわけじゃないのに、窓華さんは喜んでいる。一般人とまとめてしまったが、これは僕だけかもしれない。僕以外の友達はそうでもない。大学時代の僕はテストの対策プリントを貸す係もした。そんな人に頼るようなことを僕は今までの人生でしたことはない。詩乃からは友達ではなくて利用されているだけと言われた。言われる通りかもしれない。
「そういえばさ、さっきいつものニュースのクイズがやらなかったんだよぉ」
「窓華さんいつも楽しみにしてますよね」
「どうやら芸能人が自殺したみたいなのよ。事故死って言っているけどその事故って表現も意味深なのよね……」
僕も窓華さんと同じことを考えていた。若い芸能人の転落死と聞くと、どうしても自殺ではないのかと思ってしまう。いつも放送しているクイズを中止してまで伝えるニュースだ。だからきっと……
「私は自分から死のうとは思わないなぁ」
「前も聞きましたよ。死の実感がないと生きていると感じられないんでしょ?僕もできるだけ生きるべきだと思いますよ」
「その通り。呪はよく覚えているね。私は保護人だけど生き物として死にたくはないな」
「そう言って、また僕を困らすんですね」
僕は窓華さんが死ぬまで一緒に居る。この生活は終わりに向かって進んでいるようなもので、結果的に窓華さんを言い方は悪いけど見殺しにするわけで。給料は減るけれど、窓華さんが自殺してくれたらどれだけ楽だろう。
「私は楓と桜を残して死ぬよ?でも呪だってこれから先、私みたいに死んでいく人をいっぱい見ていくんだよ」
「僕は新卒でこの仕事になったからなぁ……」
「そうだよ、これからどんどん死にゆく人と暮らすんだよ。楽しみだね!」
窓華さんが嫌味を僕に言う。これから僕は失うだけの人と出会うのだ。さっきの配給を広げる手を止めてまで僕の顔を見て僕が答えることを待っている。しかし僕は寿管士になったばかりだ。それに最初の保護人は窓華さん。だから僕はまだ誰の死にも触れていない。僕はまだこの仕事があると知っただけの一般人だ。
「僕はまだ誰も見送っていない」
「ほぉほぉ、そうだったね。私が初めての保護人なんだもんね」
「なんで、そんなに嬉しそうに笑うの?」
なんだか、馬鹿にされたようにからかわれたから僕は窓華さんに問う。でも、お構いなしだった。何でも初めてのことって印象に残る。僕は受精卵のときにオプションをつけなかったから、初めて自転車に乗れたときや逆上がりができたとき、その喜びはずっと今も残っている。そしてテストで悪い点数を取った嫌な方の思い出だってずっと心の中に巣食ったままだ。
「だってさ、保護人が死ぬしかないことは知っているよ。でもさ、うん、なんだろうな、私が最初の人なのかぁって」
「いつ死ぬか知っているのは僕と李さんだけですし」
「そうかぁ、すももさんも知ってるのか」
八月二六日、窓華さんは死ぬ。今はとても元気に見える。失っても平気な精神力が僕にあるとは到底思えないけど、これが僕の仕事だ。でも僕はこの生活が嫌いじゃない。だから僕が人の命を奪うわけじゃないのに、窓華さんの最期まで暮らすのは裏切りのような気がして気分が悪い。
「私は呪と暮らす生活が好きだよ。だから死にたくないなぁ」
「この生活は税金で成り立っているのに?」
「こんなことしているから、日本は破綻しちゃったんだよ」
僕らの生活には税金が使われている。だから、本来ならば窓華さんは素早く死刑に舌方が良いはずなのに。マザーは何を考えているのだろう。窓華さんも僕との生活が楽しいと言ってくれた。ならこのままずっとこの生活が続けば良いのに。こんなことを言うと寿管士として失格だが、窓華さんに生きていて欲しい。ずっとこの暮らしが続くようで、窓華さんが居ないこのアパートなんて考えられない。今のマザーがある日本で暮らしているため僕も平和ボケしている。死ぬ日付と時間を知った保護人と暮らしているのに、この生活が続けば良いなんておかしい。
「私さ、楓と桜を残してこの世からばいばいでしょ?それにはちょっと思い残すことはあるのよね。それと呪の人生に私が嫌なものとして残って欲しくないなって感じちゃって」
「窓華さんとしてはまともなこと言いますね」
「あ、私のことをまともじゃないって思っているんだ?」
「そりゃあ、窓華さんは人間としてまともじゃないですよ」
僕は正論を言ったつもりなのに、窓華さんは今度は腹を抱えて笑っている。僕はよく分からず窓華さんをながめていた。でも、僕の人生について少し思うところがあるのだという面では優しい人だと感じだ。窓華さんをこのまま何もしないで失ってしまった場合、窓華さんとの思い出は一気に悪い思い出に反転すると思うから。今のように平和な生活だという記憶はきっとなくなる。
「でも、私が喜代也が効かないって両家で集まって話し合いしたのよ。そのときのみんなの驚いた表情にはびっくりしたかな?」
「あ、その時に旦那さんが浮気してますって言えば良かったのに」
「それもそうだけどさぁ」
窓華さんは芸能人の転落死について、スマホで調べている。そして僕にやっぱり自殺の線が濃厚みたいねぇと言った。僕はそりゃあマスコミも言葉を濁すことは当たり前だ。テレビでは困った時にかける電話の窓口が紹介されている。
「いつも私を困らせていた楓は、私を失う現実に逆らえないじゃん?それで絶望的な顔してて笑っちゃった」
「僕はその意見には旦那さんが可愛そうで笑えませんけど」
一緒に暮らして失う身だ。でも、僕はこうやってからかわれてばかりで本当の気持ちは死にたくないぐらいしか知らない。それについては旦那さんに対してはどうだったのだろう。喜代也が効かないのだ。どうしようもない。旦那さんの声掛けがあったとしてどうにもならない。
「そうだよね。でも、私でもあの浮気男の楓に仕返しができたって感じて、ちょっとだけ嬉しかったんだ。妻が死んだら罪悪感ぐらいは残るでしょ」
「窓華さんの残虐さが想像の上をいきましたよ」
「え、どういうこと?」
「にこにこしながら怖いこと言うなって……」
違う未来があるなんて、夢物語だ。窓華さんが保護人になったことと、僕が寿管士であることは事実だ。僕が笑顔で自分の死んだ後について語ることについて恐る恐る指摘すると、窓華さんはまたこっちを見て笑った。その笑みは離れて暮らすことになった旦那さんと子どもに向けられたものと同じなのだろうか。
「すっごい量だね。ドレスもあるよ」
その袋の中にはお高いコース料理の店でも通用しそうなドレスが入っていた。こんなのに合わせて着る服は僕は持ち合わせていない。 僕も李さんに言って、お高いスーツみたいなものを頼もうと思った。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「わぁ、メイク用品にかばんも入っている」
配給の荷物をリビングで広げる窓華さんは嬉しそうだ。窓華さんは化粧をしたところをあまり見たことない。元が綺麗な人だからきっと化けるのだろうな。詩乃は化粧っ気の全くないオタクさんだから、女でも違う生き物だ。
「僕はそのドレスに合うような服持ってないんだけど」
「すももさんに相談したら?」
「そんな簡単に……」
できるだけ上司に面倒ごとを頼みたくない僕は、そんな気軽に李さんに相談して良いものか戸惑ってしまう。だって、この旅行だって無理をしている。人に迷惑をかけてはいけないという両親の教えもあり、僕は自分で解決する方法を考えている。しかしそれが思い当たらない。クレカで買っても良いけど、僕は服を選ぶようなことをしたことがないため、どういうスーツを選べば良いかも分からない。
「人に物を頼むなんて簡単なことだよ」
「それは窓華さんにとって簡単なことでも、一般人にとっては難しいことなの」
「はは、私って特別なんだ」
良い意味で言ったわけじゃないのに、窓華さんは喜んでいる。一般人とまとめてしまったが、これは僕だけかもしれない。僕以外の友達はそうでもない。大学時代の僕はテストの対策プリントを貸す係もした。そんな人に頼るようなことを僕は今までの人生でしたことはない。詩乃からは友達ではなくて利用されているだけと言われた。言われる通りかもしれない。
「そういえばさ、さっきいつものニュースのクイズがやらなかったんだよぉ」
「窓華さんいつも楽しみにしてますよね」
「どうやら芸能人が自殺したみたいなのよ。事故死って言っているけどその事故って表現も意味深なのよね……」
僕も窓華さんと同じことを考えていた。若い芸能人の転落死と聞くと、どうしても自殺ではないのかと思ってしまう。いつも放送しているクイズを中止してまで伝えるニュースだ。だからきっと……
「私は自分から死のうとは思わないなぁ」
「前も聞きましたよ。死の実感がないと生きていると感じられないんでしょ?僕もできるだけ生きるべきだと思いますよ」
「その通り。呪はよく覚えているね。私は保護人だけど生き物として死にたくはないな」
「そう言って、また僕を困らすんですね」
僕は窓華さんが死ぬまで一緒に居る。この生活は終わりに向かって進んでいるようなもので、結果的に窓華さんを言い方は悪いけど見殺しにするわけで。給料は減るけれど、窓華さんが自殺してくれたらどれだけ楽だろう。
「私は楓と桜を残して死ぬよ?でも呪だってこれから先、私みたいに死んでいく人をいっぱい見ていくんだよ」
「僕は新卒でこの仕事になったからなぁ……」
「そうだよ、これからどんどん死にゆく人と暮らすんだよ。楽しみだね!」
窓華さんが嫌味を僕に言う。これから僕は失うだけの人と出会うのだ。さっきの配給を広げる手を止めてまで僕の顔を見て僕が答えることを待っている。しかし僕は寿管士になったばかりだ。それに最初の保護人は窓華さん。だから僕はまだ誰の死にも触れていない。僕はまだこの仕事があると知っただけの一般人だ。
「僕はまだ誰も見送っていない」
「ほぉほぉ、そうだったね。私が初めての保護人なんだもんね」
「なんで、そんなに嬉しそうに笑うの?」
なんだか、馬鹿にされたようにからかわれたから僕は窓華さんに問う。でも、お構いなしだった。何でも初めてのことって印象に残る。僕は受精卵のときにオプションをつけなかったから、初めて自転車に乗れたときや逆上がりができたとき、その喜びはずっと今も残っている。そしてテストで悪い点数を取った嫌な方の思い出だってずっと心の中に巣食ったままだ。
「だってさ、保護人が死ぬしかないことは知っているよ。でもさ、うん、なんだろうな、私が最初の人なのかぁって」
「いつ死ぬか知っているのは僕と李さんだけですし」
「そうかぁ、すももさんも知ってるのか」
八月二六日、窓華さんは死ぬ。今はとても元気に見える。失っても平気な精神力が僕にあるとは到底思えないけど、これが僕の仕事だ。でも僕はこの生活が嫌いじゃない。だから僕が人の命を奪うわけじゃないのに、窓華さんの最期まで暮らすのは裏切りのような気がして気分が悪い。
「私は呪と暮らす生活が好きだよ。だから死にたくないなぁ」
「この生活は税金で成り立っているのに?」
「こんなことしているから、日本は破綻しちゃったんだよ」
僕らの生活には税金が使われている。だから、本来ならば窓華さんは素早く死刑に舌方が良いはずなのに。マザーは何を考えているのだろう。窓華さんも僕との生活が楽しいと言ってくれた。ならこのままずっとこの生活が続けば良いのに。こんなことを言うと寿管士として失格だが、窓華さんに生きていて欲しい。ずっとこの暮らしが続くようで、窓華さんが居ないこのアパートなんて考えられない。今のマザーがある日本で暮らしているため僕も平和ボケしている。死ぬ日付と時間を知った保護人と暮らしているのに、この生活が続けば良いなんておかしい。
「私さ、楓と桜を残してこの世からばいばいでしょ?それにはちょっと思い残すことはあるのよね。それと呪の人生に私が嫌なものとして残って欲しくないなって感じちゃって」
「窓華さんとしてはまともなこと言いますね」
「あ、私のことをまともじゃないって思っているんだ?」
「そりゃあ、窓華さんは人間としてまともじゃないですよ」
僕は正論を言ったつもりなのに、窓華さんは今度は腹を抱えて笑っている。僕はよく分からず窓華さんをながめていた。でも、僕の人生について少し思うところがあるのだという面では優しい人だと感じだ。窓華さんをこのまま何もしないで失ってしまった場合、窓華さんとの思い出は一気に悪い思い出に反転すると思うから。今のように平和な生活だという記憶はきっとなくなる。
「でも、私が喜代也が効かないって両家で集まって話し合いしたのよ。そのときのみんなの驚いた表情にはびっくりしたかな?」
「あ、その時に旦那さんが浮気してますって言えば良かったのに」
「それもそうだけどさぁ」
窓華さんは芸能人の転落死について、スマホで調べている。そして僕にやっぱり自殺の線が濃厚みたいねぇと言った。僕はそりゃあマスコミも言葉を濁すことは当たり前だ。テレビでは困った時にかける電話の窓口が紹介されている。
「いつも私を困らせていた楓は、私を失う現実に逆らえないじゃん?それで絶望的な顔してて笑っちゃった」
「僕はその意見には旦那さんが可愛そうで笑えませんけど」
一緒に暮らして失う身だ。でも、僕はこうやってからかわれてばかりで本当の気持ちは死にたくないぐらいしか知らない。それについては旦那さんに対してはどうだったのだろう。喜代也が効かないのだ。どうしようもない。旦那さんの声掛けがあったとしてどうにもならない。
「そうだよね。でも、私でもあの浮気男の楓に仕返しができたって感じて、ちょっとだけ嬉しかったんだ。妻が死んだら罪悪感ぐらいは残るでしょ」
「窓華さんの残虐さが想像の上をいきましたよ」
「え、どういうこと?」
「にこにこしながら怖いこと言うなって……」
違う未来があるなんて、夢物語だ。窓華さんが保護人になったことと、僕が寿管士であることは事実だ。僕が笑顔で自分の死んだ後について語ることについて恐る恐る指摘すると、窓華さんはまたこっちを見て笑った。その笑みは離れて暮らすことになった旦那さんと子どもに向けられたものと同じなのだろうか。
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