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竹田詩乃、マザーを守るバイトをする。
4 福寿を楽しませると決めた日
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「じゃあ、楽しみにしていますよ」
斎藤はびっくりした表情の後に私に向かって笑った。私は勢いでこんなことを行ってしまったことを後悔だってすこししている。ここまでこいつに思い入れて何の見返りがあると言うのだろう。単に夜中のテンションで言っただけだ。私はこんなことが言えてしまう人間なのだなと思った。
「まぁ、幸せを感じることが二次元だけって寂しいからね」
「僕は今までの人生でそれすらもありませんでしたけど」
「だからそれが特殊だって言ってるの」
「でも、それは詩乃さんが教えてくれるんでしょう?」
とんでもないことを言ってしまったのかもしれない。ログインボーナスをスマホで受け取り、そして一回ガチャが回せるようなので回す。ただの最低保証の結果で、私の世界は何も変わっていないのだと分かる。
「僕からもお願いがあります」
「あんたが私にお願い?」
「はい、僕の名前は母さんがつけました」
「名前が福寿ってことは知ってるわよ」
こいつは斎藤福寿だ。名前は知ってるけれど、実際はこの呼称で読んだことは少ないような気がする。
「僕は周りの人に幸福を与えられる、幸せな人になって欲しいと考えられました」
「そう、それで何が言いたいわけ?」
「こいつとか、お前とかじゃなくてふくじゅんと呼んで欲しいんです」
「え、ふくじゅんは嫌よ。福寿ならまだ許せるけど……」
この時に斎藤でも許せると言えば、こいつは苗字で呼ぶことを提案しただろうか。私はふくじゅんと呼ぶのは彼氏でもないし嫌だと思った。それにこいつとそんな深い関係だと思われるのも困る。
「これからは僕を福寿と呼んで下さい」
「あんた、いや、奈々美さんのことは私は嫌いじゃないし、今度からは福寿って呼ぶように心がけるよ」
私はパンフレットを見るふりをしながら、そう呼べるかどうか緊張していた。相手は私を名前で呼んでいるのだから、私が名前で呼ぶことはおかしいことじゃない。【斎藤を福寿と呼ぶ】と出ていからそうしたことだ。これによって、私の未来の何が変わるのだろう。私には分からない。
「二人ともお疲れ」
五時に男性がマザーのある扉の側に居る私達のところに来た。
「四時間で五万ね」
と言って私に男性がお金を渡す。私と福寿は男性にボタンを渡した。私は政府のマークが入った封筒に、しっかり五万入っていることを確認した。
「福寿、これはあんたが持っていて」
「そうですね、僕の借金の返済のお金ですからね」
「はぁ、ボタンを二人が押さなくて良かったよ」
男性はほっとした表情で言った。あぁ、私がマザーに選ばれないという不幸な選択をされたからだろう。この男性も不幸は群れると知っている。福寿に会う前の私だったら自分のことを不幸に感じて、他人も不幸になれば良いと思っていただろう。でも不幸だからと言って、不幸で群れていては不幸のままだ。
「私達は幸せを追求する仲間なんで」
「え、竹田さんと斎藤君はそういう関係だったの?」
「違いますよ。でも私達は不幸な関係じゃない」
「まぁ、二人の関係は分からないけど仲良くしてて良いと思ったよ」
「そうですよね、私も福寿とこんなに仲良くなれるとは思いませんでした」
「それに最初にヘルスメーターでのチェックがあったでしょ?そこでボタンを押す選択をするような人は雇わないからね」
そう言われると、そうだ。マザーは国民の幸せを守るために厳重に守られているパソコンだとされており、私はその警備にあたった。だから、マザーに攻撃するようなことはないとされたのだった。
「私達はマザーの手の内にあるんですね」
「そう、これは僕や日本国民全員がそうさ」
この男性にも夢があった可能性も、好きな人が居た可能性だってある。マザーによって増えた選択肢で奪われる未来もある。でも、私が福寿を得たようにマザーの判断には副産物もある。
「次は三日後って決まったからよろしくね」
外を出ると四月の朝で気持ちが良い。一晩起きていたことによる疲労でも、この朝日が清々しいものに感じた。
「僕のこと、福寿って呼んでくれましたね」
「はいはい、福寿福寿福寿……」
私は恥ずかしさを誤魔化して言った。
「詩乃さん、これからもよろしくお願いしますね」
「あんた、いや福寿の基本的な面倒は見ないわよ。ただ、私が教えてあげれる小さいことぐらいはしてあげるってだけ」
「でも、僕は楽しみにしていますから」
福寿は怪獣のドリンクホルダーを前かごに乗せた自転車で帰っていく。私も夜から食べていないのでお腹が減った。早く化粧を落として食事が食べたい。私のマンション方面のバスに乗り過ごしたらしく、次来るまで待つよりも歩いた方が早いみたいだ。なので私は歩いて帰る。一人で帰る道は寂しいかと思ったけれど、何故か寂しいとは思わなかった。ふむふむ、マザーの判断も悪くないかもしれない。私は、この猶予期間を存分に楽しんでやろう。
マンションに帰ると、もうフィギュアが自宅に届いていた。両親からはまた買い物をしたのか?って言われたけれど、適当に誤魔化す。多分、私の両親は私が人助けで闇バイトをしていることを知らない。こういうフィギュアは箱に入れたままだと塗料が溶けてしまうことがある。でも、私は箱から出すなんてもったいないことができなかった。だって思い出の品だ。初めてオタクの知り合いとアニメショップに行った記念だから。私は部屋中にあるフィギュアの場所を少し片付けて、新しいフィギュアを箱ごと飾った。福寿はどんな風に初めてのフィギュアを飾るのだろうか。私は先輩オタクとして気になっていた。
”@竹田詩乃新しいフィギュア飾った。これは私が引いたんじゃなくてもらったものだけどお気に入り。#魔法少女#アニメくじ#フィギュア賞#オタク女子#オタク女子の部屋#マザーのある日々”
映画に行く前に写真も添付して投稿したのに、この発言には誰からも反応などがなかった。普通の人と比べて私はなんてつまらない人生を送っているのだろうか。
斎藤はびっくりした表情の後に私に向かって笑った。私は勢いでこんなことを行ってしまったことを後悔だってすこししている。ここまでこいつに思い入れて何の見返りがあると言うのだろう。単に夜中のテンションで言っただけだ。私はこんなことが言えてしまう人間なのだなと思った。
「まぁ、幸せを感じることが二次元だけって寂しいからね」
「僕は今までの人生でそれすらもありませんでしたけど」
「だからそれが特殊だって言ってるの」
「でも、それは詩乃さんが教えてくれるんでしょう?」
とんでもないことを言ってしまったのかもしれない。ログインボーナスをスマホで受け取り、そして一回ガチャが回せるようなので回す。ただの最低保証の結果で、私の世界は何も変わっていないのだと分かる。
「僕からもお願いがあります」
「あんたが私にお願い?」
「はい、僕の名前は母さんがつけました」
「名前が福寿ってことは知ってるわよ」
こいつは斎藤福寿だ。名前は知ってるけれど、実際はこの呼称で読んだことは少ないような気がする。
「僕は周りの人に幸福を与えられる、幸せな人になって欲しいと考えられました」
「そう、それで何が言いたいわけ?」
「こいつとか、お前とかじゃなくてふくじゅんと呼んで欲しいんです」
「え、ふくじゅんは嫌よ。福寿ならまだ許せるけど……」
この時に斎藤でも許せると言えば、こいつは苗字で呼ぶことを提案しただろうか。私はふくじゅんと呼ぶのは彼氏でもないし嫌だと思った。それにこいつとそんな深い関係だと思われるのも困る。
「これからは僕を福寿と呼んで下さい」
「あんた、いや、奈々美さんのことは私は嫌いじゃないし、今度からは福寿って呼ぶように心がけるよ」
私はパンフレットを見るふりをしながら、そう呼べるかどうか緊張していた。相手は私を名前で呼んでいるのだから、私が名前で呼ぶことはおかしいことじゃない。【斎藤を福寿と呼ぶ】と出ていからそうしたことだ。これによって、私の未来の何が変わるのだろう。私には分からない。
「二人ともお疲れ」
五時に男性がマザーのある扉の側に居る私達のところに来た。
「四時間で五万ね」
と言って私に男性がお金を渡す。私と福寿は男性にボタンを渡した。私は政府のマークが入った封筒に、しっかり五万入っていることを確認した。
「福寿、これはあんたが持っていて」
「そうですね、僕の借金の返済のお金ですからね」
「はぁ、ボタンを二人が押さなくて良かったよ」
男性はほっとした表情で言った。あぁ、私がマザーに選ばれないという不幸な選択をされたからだろう。この男性も不幸は群れると知っている。福寿に会う前の私だったら自分のことを不幸に感じて、他人も不幸になれば良いと思っていただろう。でも不幸だからと言って、不幸で群れていては不幸のままだ。
「私達は幸せを追求する仲間なんで」
「え、竹田さんと斎藤君はそういう関係だったの?」
「違いますよ。でも私達は不幸な関係じゃない」
「まぁ、二人の関係は分からないけど仲良くしてて良いと思ったよ」
「そうですよね、私も福寿とこんなに仲良くなれるとは思いませんでした」
「それに最初にヘルスメーターでのチェックがあったでしょ?そこでボタンを押す選択をするような人は雇わないからね」
そう言われると、そうだ。マザーは国民の幸せを守るために厳重に守られているパソコンだとされており、私はその警備にあたった。だから、マザーに攻撃するようなことはないとされたのだった。
「私達はマザーの手の内にあるんですね」
「そう、これは僕や日本国民全員がそうさ」
この男性にも夢があった可能性も、好きな人が居た可能性だってある。マザーによって増えた選択肢で奪われる未来もある。でも、私が福寿を得たようにマザーの判断には副産物もある。
「次は三日後って決まったからよろしくね」
外を出ると四月の朝で気持ちが良い。一晩起きていたことによる疲労でも、この朝日が清々しいものに感じた。
「僕のこと、福寿って呼んでくれましたね」
「はいはい、福寿福寿福寿……」
私は恥ずかしさを誤魔化して言った。
「詩乃さん、これからもよろしくお願いしますね」
「あんた、いや福寿の基本的な面倒は見ないわよ。ただ、私が教えてあげれる小さいことぐらいはしてあげるってだけ」
「でも、僕は楽しみにしていますから」
福寿は怪獣のドリンクホルダーを前かごに乗せた自転車で帰っていく。私も夜から食べていないのでお腹が減った。早く化粧を落として食事が食べたい。私のマンション方面のバスに乗り過ごしたらしく、次来るまで待つよりも歩いた方が早いみたいだ。なので私は歩いて帰る。一人で帰る道は寂しいかと思ったけれど、何故か寂しいとは思わなかった。ふむふむ、マザーの判断も悪くないかもしれない。私は、この猶予期間を存分に楽しんでやろう。
マンションに帰ると、もうフィギュアが自宅に届いていた。両親からはまた買い物をしたのか?って言われたけれど、適当に誤魔化す。多分、私の両親は私が人助けで闇バイトをしていることを知らない。こういうフィギュアは箱に入れたままだと塗料が溶けてしまうことがある。でも、私は箱から出すなんてもったいないことができなかった。だって思い出の品だ。初めてオタクの知り合いとアニメショップに行った記念だから。私は部屋中にあるフィギュアの場所を少し片付けて、新しいフィギュアを箱ごと飾った。福寿はどんな風に初めてのフィギュアを飾るのだろうか。私は先輩オタクとして気になっていた。
”@竹田詩乃新しいフィギュア飾った。これは私が引いたんじゃなくてもらったものだけどお気に入り。#魔法少女#アニメくじ#フィギュア賞#オタク女子#オタク女子の部屋#マザーのある日々”
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