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竹田詩乃、2回目のバイトをする。
6 マザーって本当は?
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「だいたい、パソコンが一人の人間の一生を操作するなんてできないですよ」
「ここに一000人の未来が決められたボタンあるけど?」
「マザーのシステムはどこかで無理が出ると思うんです」
「それは義務教育で塾を選んだら分かることよね」
福寿も塾だった。学校教育は脳波をいじるだけの学問だ。でも、塾の教育は行事もあるから挫折もある。無償の学校と違って塾はお金がかかるけれど、塾に入れたい親の方が多い。
「この世の中で認められない人を弁護したいんです」
「私より良い夢じゃない。叶うと良いね」
「そうですね、今はマザーに祈るしか方法はないですけど」
昔はこの理想に向けて頑張ることができた。試験があり、それに合格したのならその役職に就くことができたのに。今はマザーによる適性ですべてが決まる。この適性のせいで、将来の夢という言葉は死語にはなった。でも、私や福寿のようにマザーの判断しないもしもの未来を考える日本国民は居るだろう。
「そろそろ、ログボの時間ですね」
「え、もう四時かぁ……」
私と福寿はスマホでゲーム画面を開く。私は今日はガチャのチケットがログインボーナスでもらえた。私はそれについて福寿には言わずにガチャを引いた。福寿は溜まった体力ゲージを消化しているようだ。
「あぁ、ガチャ外れだわ」
「そんなに引きたいなら課金すれば良いのに」
「女は美容とかいろいろでガチャばかりにお金出せないの」
私は出てきたノーマルカードのキャラを捨てた。このキャラは何体も出ている。レアキャラは捨てるとアイテムがもらえて、違うキャラと交換できる。でも、ノーマルキャラは何にもならない。私がノーマルを捨てることと同じように、マザーが日本国民を選別して未来のないと判断した人を捨てていたらと思うと怖い。国民が幸せになる未来のためにマザーはできたのだからそれはないと信じたい。
「ノーマルだから捨てたんだけどさ」
「ノーマル一枠は確定ですよね」
「マザーもこうやって国民を見捨てるのかな?だって、このゲームは日本じゃなくて世界を救うゲームなんだよ?」
「そうですね、公にはされなくてもマザーに選ばれない人は居ると思います」
「私達はゲームでも世界を救えないし、マザーは日本を救えないのか」
なんだか私は悲しくなってしまう。こんな世の中や未来はあんまりだ。マザーが見せる幸せは一体なんだと言うのだろう。絶対に幸せな国民の裏に不幸を抱える人が出てくるに決まっている。みんなそれを隠している。
「だから僕はすべての人を救いたいんです」
「日本だけじゃなくて?」
「鎖国してるから海外のことは分かりませんけど、世界平和なんてものはマザーが決めるべきではないと思うんです」
「それ、この扉の中にある分離したマザーの前で言っちゃう?」
なんか私は大きなことを言っている福寿をからかった。だって、分割したマザーを守りつつもマザーの意見に反したことを言っているなんて、不思議ではないか。
「僕は課金してゲーム内の世界を救うし、日本の経済も活性化します」
「それは違うよ?そのせいで私が犠牲になってるから」
「詩乃さんには迷惑をかけたと思っています。経済は回っても、僕の首が回らなくなるって詩乃さんの言った通りですから……」
「そうよ、福寿のせいで私は駆り出されてるんだから犠牲者よ」
呆れたけれど、今の日本はこんな人が多いから平和なのだ。だから、福寿を責めることなんてできない。それに私は福寿と居る時間が楽しい。
「二人ともこんな朝なのに元気そうだね」
そう言って男性が迎えに来る。もう五時になったようだ。私も福寿も荷物をまとめて立ち上がる。そしてボタンを返した。男性は福寿に封筒を渡す。これで今日の闇バイトは終わりだ。福寿がこんなに将来を夢見る人だなんて思わなかった。
「おじさんは将来の夢ってあったんですか?」
「おじさんって僕のこと?係員さんじゃないの?酷い子どもだな……」
私はこの男性とは仲良くしているけれど、深い話をしたことはない。だからこんな話題を福寿から言われたら困ってしまうだろう。
「僕の将来の夢か。笑うだろうから言わない」
「教えて下さいよ」
「絶対に笑わない?僕は戦隊モノのヒーローになりたかった」
「え、それは俳優としてですか?」
私と福寿は笑いながら男性に言う。男性はやっぱり笑ったと嫌そうな表情をしているけれど、私だってアニメを観始めた幼少期には、声優っていう仕事を知らなかったぐらいだ。戦隊モノが実際にあると思ってもおかしくないだろう。
「いや、実際に悪い組織が居て戦うヒーローが居ると思っていた」
「おじさんは、あれを創作だと思わなかったんだ?」
福寿が男性にまたおじさんと言って馬鹿にしている。私もその二人を見て笑った。この男性はそんなものに憧れていたというのだろうか。
「でも、僕はマザーという正義に関わる仕事だから、夢は叶ったと言っても良いと感じているよ」
「マザーってやっぱり正義なんですか?」
「竹田さんの両親もマザーを守っているだろう?それは日本の平和を守っているってことでもある正義のヒーローだからね」
一般的にはマザーは正義なのだ。なら、今の世の中で悪とは何なのだろう。マザーを信じない心だろうか。私は両親やこの男性が守るマザーの見せる未来は本当に正しいものなのだろうかと不安になる。だって、選択肢を選べた方が本当の幸せではないだろうか。例え叶わなかったとしても、それは自分の責任だ。すべての責任をマザーに投げ捨てて、幸せな未来のみ受け取ること。これはどこかで無理があるのではないだろうか。悪役にも辛い過去があったように、報われない人は必ず出てくる。
「ここに一000人の未来が決められたボタンあるけど?」
「マザーのシステムはどこかで無理が出ると思うんです」
「それは義務教育で塾を選んだら分かることよね」
福寿も塾だった。学校教育は脳波をいじるだけの学問だ。でも、塾の教育は行事もあるから挫折もある。無償の学校と違って塾はお金がかかるけれど、塾に入れたい親の方が多い。
「この世の中で認められない人を弁護したいんです」
「私より良い夢じゃない。叶うと良いね」
「そうですね、今はマザーに祈るしか方法はないですけど」
昔はこの理想に向けて頑張ることができた。試験があり、それに合格したのならその役職に就くことができたのに。今はマザーによる適性ですべてが決まる。この適性のせいで、将来の夢という言葉は死語にはなった。でも、私や福寿のようにマザーの判断しないもしもの未来を考える日本国民は居るだろう。
「そろそろ、ログボの時間ですね」
「え、もう四時かぁ……」
私と福寿はスマホでゲーム画面を開く。私は今日はガチャのチケットがログインボーナスでもらえた。私はそれについて福寿には言わずにガチャを引いた。福寿は溜まった体力ゲージを消化しているようだ。
「あぁ、ガチャ外れだわ」
「そんなに引きたいなら課金すれば良いのに」
「女は美容とかいろいろでガチャばかりにお金出せないの」
私は出てきたノーマルカードのキャラを捨てた。このキャラは何体も出ている。レアキャラは捨てるとアイテムがもらえて、違うキャラと交換できる。でも、ノーマルキャラは何にもならない。私がノーマルを捨てることと同じように、マザーが日本国民を選別して未来のないと判断した人を捨てていたらと思うと怖い。国民が幸せになる未来のためにマザーはできたのだからそれはないと信じたい。
「ノーマルだから捨てたんだけどさ」
「ノーマル一枠は確定ですよね」
「マザーもこうやって国民を見捨てるのかな?だって、このゲームは日本じゃなくて世界を救うゲームなんだよ?」
「そうですね、公にはされなくてもマザーに選ばれない人は居ると思います」
「私達はゲームでも世界を救えないし、マザーは日本を救えないのか」
なんだか私は悲しくなってしまう。こんな世の中や未来はあんまりだ。マザーが見せる幸せは一体なんだと言うのだろう。絶対に幸せな国民の裏に不幸を抱える人が出てくるに決まっている。みんなそれを隠している。
「だから僕はすべての人を救いたいんです」
「日本だけじゃなくて?」
「鎖国してるから海外のことは分かりませんけど、世界平和なんてものはマザーが決めるべきではないと思うんです」
「それ、この扉の中にある分離したマザーの前で言っちゃう?」
なんか私は大きなことを言っている福寿をからかった。だって、分割したマザーを守りつつもマザーの意見に反したことを言っているなんて、不思議ではないか。
「僕は課金してゲーム内の世界を救うし、日本の経済も活性化します」
「それは違うよ?そのせいで私が犠牲になってるから」
「詩乃さんには迷惑をかけたと思っています。経済は回っても、僕の首が回らなくなるって詩乃さんの言った通りですから……」
「そうよ、福寿のせいで私は駆り出されてるんだから犠牲者よ」
呆れたけれど、今の日本はこんな人が多いから平和なのだ。だから、福寿を責めることなんてできない。それに私は福寿と居る時間が楽しい。
「二人ともこんな朝なのに元気そうだね」
そう言って男性が迎えに来る。もう五時になったようだ。私も福寿も荷物をまとめて立ち上がる。そしてボタンを返した。男性は福寿に封筒を渡す。これで今日の闇バイトは終わりだ。福寿がこんなに将来を夢見る人だなんて思わなかった。
「おじさんは将来の夢ってあったんですか?」
「おじさんって僕のこと?係員さんじゃないの?酷い子どもだな……」
私はこの男性とは仲良くしているけれど、深い話をしたことはない。だからこんな話題を福寿から言われたら困ってしまうだろう。
「僕の将来の夢か。笑うだろうから言わない」
「教えて下さいよ」
「絶対に笑わない?僕は戦隊モノのヒーローになりたかった」
「え、それは俳優としてですか?」
私と福寿は笑いながら男性に言う。男性はやっぱり笑ったと嫌そうな表情をしているけれど、私だってアニメを観始めた幼少期には、声優っていう仕事を知らなかったぐらいだ。戦隊モノが実際にあると思ってもおかしくないだろう。
「いや、実際に悪い組織が居て戦うヒーローが居ると思っていた」
「おじさんは、あれを創作だと思わなかったんだ?」
福寿が男性にまたおじさんと言って馬鹿にしている。私もその二人を見て笑った。この男性はそんなものに憧れていたというのだろうか。
「でも、僕はマザーという正義に関わる仕事だから、夢は叶ったと言っても良いと感じているよ」
「マザーってやっぱり正義なんですか?」
「竹田さんの両親もマザーを守っているだろう?それは日本の平和を守っているってことでもある正義のヒーローだからね」
一般的にはマザーは正義なのだ。なら、今の世の中で悪とは何なのだろう。マザーを信じない心だろうか。私は両親やこの男性が守るマザーの見せる未来は本当に正しいものなのだろうかと不安になる。だって、選択肢を選べた方が本当の幸せではないだろうか。例え叶わなかったとしても、それは自分の責任だ。すべての責任をマザーに投げ捨てて、幸せな未来のみ受け取ること。これはどこかで無理があるのではないだろうか。悪役にも辛い過去があったように、報われない人は必ず出てくる。
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