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竹田詩乃、母の日のプレゼントを選ぶ。
4 奈々美さんまでも騙す関係
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あの魔法少女アニメの食玩が子供向けのコーナーに置いてある。ここにこれを置くということはオタクからしたらツッコミがしたい。
「あ、こんな子ども向けのコーナーに置いちゃ駄目よね」
「一般人から見たら絵柄は可愛いし、子ども向けじゃないですか」
「そうだけど、場違いよ」
私は食玩だと思った丸い袋を持つ。食玩コーナーにあるのに、どうやらこれは食玩ですらないらしい。私はため息をついた。でも、これは案外面白いのではないだろうか。私の存在は残ってしまうがどうだろう。【母の日のプレゼントに選ぶ】と出た。これにするしかない。
「これ、母の日のプレゼントにしましょう」
「このお菓子ですか?」
「これは食玩コーナーにあるけどお菓子じゃないのよ。それにこの魔法少女アニメは奈々美さんも好きなんでしょう?」
「確かに母さんもあのアニメ好きですけど……」
これは食玩ではない。こんな配置をするショッピングモールの店員は本当にド素人だと思う。これは中にフィギュアが入っているタイプの入浴剤。どのキャラが出るかは分からないけど、楽しみということもありだろう。
「奈々美さんはどのキャラが好きなの?」
「嫌いなキャラはないと思います」
「なら、これをボックスで買ってプレゼントしよう。さすがにボックスで買えば全種類揃うでしょう」
入浴剤だけでは物足りない。私はさっきハンドクリームを見ていたコーナーに置いてあったボディクリームも奈々美さんに買おうと思った。これは使えばなくなってしまうからそれで良い。
「私はボディクリームをあっちで買ってくるから」
「分かりました。ここの会計は僕がしておきますね」
私は特設会場に戻って無香料のボディクリームを買った。
「あ、ラッピングも頼めたんだ?」
私は子ども用のラッピングをされたその入浴剤のボックスを見る。私もボディクリームはラッピングしてもらった。これは私も使っているもので、安いわりには良い仕事をしてくれるからお気に入りなのだ。
「これ、ボックス買いすると特典もらえたんですよ」
「へぇ、こういう売り場にしてはしっかりしてるじゃない?」
「敵キャラですね」
そう言って福寿はキーホルダーを見せた。私はこのアニメは敵キャラのデザインが完璧だと思う。もちろん、主人公側のデザインも可愛いけれど。
「入浴剤とボディクリームなら完璧でしょう?」
「そうですね、母さんも喜ぶと思います」
「じゃあ、今日は母の日なんだし早く帰って渡して来なさいよ」
「詩乃さんはついてきてくれないんですか?」
私は福寿の家に行く権利があるだろうか。もしかしたらと思って服装の準備はした。精神面でも覚悟はして選んだつもりだ。一番重要な私には資格というものがない。だって、福寿との関係だってめちゃくちゃなこともあるし、福寿の両親には嘘をついている関係だ。きっと私は福寿が好きだ。しかしマッチングが一般的な現代日本で恋愛は野蛮だとされる。本当の私の気持ちを知ったら、きっと奈々美さんも前みたいに接してくれないだろう。それが悲しい。
「だって私は奈々美さんを騙してるんだよ」
「渡すの気恥ずかしいですよ。ほら、この特典あげるから僕の家に付いてきてください。お願いしますよ」
「その特典が欲しいから行くけど、私は嘘が下手だからね」
嘘が下手だから、福寿への気持ちを隠すこともできなかった。私は自分の気持ちに正直だから、きっと嘘をつくことができない。福寿との将来を問われたら、福寿の課金のことは言わなくても本当の気持ちを言ってしまうかもしれない。いや、私は福寿の結婚相手として福寿の両親に紹介されているのだし、完全な嘘にはならないけれど。
”@竹田詩乃キャラクター玩具ボックス買いした。特典は敵キャラだけどデフォルメされていて可愛い。これから男友達の家に行く。#ボックス買い#購入特典#母の日#男友達#ブラインド商品#マザーのある日々”
”何も予定ないなんて嘘じゃん。マザーに紹介された人なの?”
”@竹田詩乃予定が急にできたんだよね。男友達だし、マザーによるマッチングの人ではないよ”
”詩乃も私のように早くマッチングされると良いね”
”@竹田詩乃結婚式の写真みたけど素敵だったよ。私も行きたかったな”
「あ、こんな子ども向けのコーナーに置いちゃ駄目よね」
「一般人から見たら絵柄は可愛いし、子ども向けじゃないですか」
「そうだけど、場違いよ」
私は食玩だと思った丸い袋を持つ。食玩コーナーにあるのに、どうやらこれは食玩ですらないらしい。私はため息をついた。でも、これは案外面白いのではないだろうか。私の存在は残ってしまうがどうだろう。【母の日のプレゼントに選ぶ】と出た。これにするしかない。
「これ、母の日のプレゼントにしましょう」
「このお菓子ですか?」
「これは食玩コーナーにあるけどお菓子じゃないのよ。それにこの魔法少女アニメは奈々美さんも好きなんでしょう?」
「確かに母さんもあのアニメ好きですけど……」
これは食玩ではない。こんな配置をするショッピングモールの店員は本当にド素人だと思う。これは中にフィギュアが入っているタイプの入浴剤。どのキャラが出るかは分からないけど、楽しみということもありだろう。
「奈々美さんはどのキャラが好きなの?」
「嫌いなキャラはないと思います」
「なら、これをボックスで買ってプレゼントしよう。さすがにボックスで買えば全種類揃うでしょう」
入浴剤だけでは物足りない。私はさっきハンドクリームを見ていたコーナーに置いてあったボディクリームも奈々美さんに買おうと思った。これは使えばなくなってしまうからそれで良い。
「私はボディクリームをあっちで買ってくるから」
「分かりました。ここの会計は僕がしておきますね」
私は特設会場に戻って無香料のボディクリームを買った。
「あ、ラッピングも頼めたんだ?」
私は子ども用のラッピングをされたその入浴剤のボックスを見る。私もボディクリームはラッピングしてもらった。これは私も使っているもので、安いわりには良い仕事をしてくれるからお気に入りなのだ。
「これ、ボックス買いすると特典もらえたんですよ」
「へぇ、こういう売り場にしてはしっかりしてるじゃない?」
「敵キャラですね」
そう言って福寿はキーホルダーを見せた。私はこのアニメは敵キャラのデザインが完璧だと思う。もちろん、主人公側のデザインも可愛いけれど。
「入浴剤とボディクリームなら完璧でしょう?」
「そうですね、母さんも喜ぶと思います」
「じゃあ、今日は母の日なんだし早く帰って渡して来なさいよ」
「詩乃さんはついてきてくれないんですか?」
私は福寿の家に行く権利があるだろうか。もしかしたらと思って服装の準備はした。精神面でも覚悟はして選んだつもりだ。一番重要な私には資格というものがない。だって、福寿との関係だってめちゃくちゃなこともあるし、福寿の両親には嘘をついている関係だ。きっと私は福寿が好きだ。しかしマッチングが一般的な現代日本で恋愛は野蛮だとされる。本当の私の気持ちを知ったら、きっと奈々美さんも前みたいに接してくれないだろう。それが悲しい。
「だって私は奈々美さんを騙してるんだよ」
「渡すの気恥ずかしいですよ。ほら、この特典あげるから僕の家に付いてきてください。お願いしますよ」
「その特典が欲しいから行くけど、私は嘘が下手だからね」
嘘が下手だから、福寿への気持ちを隠すこともできなかった。私は自分の気持ちに正直だから、きっと嘘をつくことができない。福寿との将来を問われたら、福寿の課金のことは言わなくても本当の気持ちを言ってしまうかもしれない。いや、私は福寿の結婚相手として福寿の両親に紹介されているのだし、完全な嘘にはならないけれど。
”@竹田詩乃キャラクター玩具ボックス買いした。特典は敵キャラだけどデフォルメされていて可愛い。これから男友達の家に行く。#ボックス買い#購入特典#母の日#男友達#ブラインド商品#マザーのある日々”
”何も予定ないなんて嘘じゃん。マザーに紹介された人なの?”
”@竹田詩乃予定が急にできたんだよね。男友達だし、マザーによるマッチングの人ではないよ”
”詩乃も私のように早くマッチングされると良いね”
”@竹田詩乃結婚式の写真みたけど素敵だったよ。私も行きたかったな”
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