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刺された
しおりを挟む俺は刺されて死んだ様だ。
あの神主が恨めしそうに俺を見ているのだから。
「我は椿家を根絶やしにするまで消える訳にはいかぬ。おぬしが死ねば我も巻き込まれるから早く戻れ。」
そんな設定あったの忘れてたよ。
それにしても根絶やしって穏やかじゃないね。
神に仕える者がそんな考えして恥ずかしくないの。
「椿家は我から全てを奪った。これを見てみろ。」
視界が急に変わった。
顔色が良く、舌も出ていない神主があの神社で掃き掃除をしている。
回想シーンなのかな。
セピア色で再現されているのが少しオシャレだね。
神社には結構な数の参拝者が来て、一様に神主へお礼の挨拶やお願いをしていく。
参拝客の女性に「そいつ舌をベロンと出してくるから気を付けろ」と言ったが俺の存在に気付いていない様だ。
やった透明人間状態だ。
地面に仰向けに寝転んで女性参拝客を待っていると、いつの間にかベロン神主が隣にいた。
「お前は黙って見れんのか。まぁいい、この頃の我はスキル幸運を持っていた。極端に幸運値が高いと、願いや夢が叶いやすくなる。それは他人の幸運を願っても同じ事だ。つまり願いが叶うかも知れない神社だったのだ。」
なるほど、御利益が本当にある神社か。
参拝客が引っ切り無しに来るのも分かる。
あと、スキルの話でたけど地球にそんなシステムあったんだ。
「何の因果で戻ってきたのか知らぬが、我はこの世界の住人だ。ある時、椿ワタルという人間がお前達の様に地球からやって来た。そして、スキル強奪を使って我々からスキルを奪い始めたのだ。」
強奪なんてスキルゲットしたら暴走する気持ちも分かるけど、被害者側から話を聞くと悪魔みたいな奴に感じるね。
「我はスキルを失ってから次々と悪い事が起こり、気が付いたら物乞い同然まで落ちぶれていた。その頃にはスキルを奪われて我の様になった人は沢山いて、奴へ復讐する為のコミュニティまで結成されたぐらいだ。なけなしの金で酒をコミュニティの奴等と飲んでいる時、奴が地球へ帰るスキルを強奪して帰還したと聞いた時は頭の血管が切れる様な感覚が残った。」
恨む気持ちは十分理解出来るけど子孫は関係無いと思うな。
「我も子孫に罪は無いと分かっている。しかし、奴は転生スキルも持っておったのだ。今も子孫に紛れて生き長らえている可能性がある。我の様な人間を増やさない為にも椿家の人間を根絶やしにする必要があるのだ。」
でも無差別じゃ駄目でしょ。
少なくともマリ様はワタルじゃ無いよ。
「それを決めるのはお前ではない。お前の中から我がマリを見て判断する。そろそろ時間だから戻れ。」
待って、まだ聞きたい事が沢山ある。
どうやって地球へ転移・・・・。
「あっちこっちからゴブリン出て来たモジャァァ。」
うるさいなぁ。
何故か俺は手押し車に乗せられて洞窟にいる。
手押し車と言っても色々装飾が付けられていて、前方の左右には照明用の松明が付けられている。
現在、俺達は前後からゴブリンに挟み打ちにされているみたいだ。
「後方は私がやるわ。前方はモジャちゃんがお願いね。広がれファイアカーペット。」
マリ様魔法使える様になったんだ。
火が足首くらいの高さで広範囲に広がっている。
ゴブリン達が左右の足を交互に上げて足掻いている様子がダンスしているみたいで面白い。
師匠は相変わらずのチート糸でゴブリンを瞬殺していた。
「あっ、サカタが起きたわ。転がれストーンボール。」
今度は手の平大の丸石が沢山ゴブリン達に向かって転がっていく。
ダンス中のゴブリン達はそれを踏んで転倒し、ファイアカーペットに飲み込まれた。
流石マリ様、芸術的な倒し方です。
「サカタ、三日間も寝てたのよ。取り敢えずここは危険だから、次のセーフスポットまで行きましょう。私が手押し車を引いてあげるからサカタは寝ているといいわ。」
なんかマリ様口調が令嬢っぽく無くなってきたな。
ワルイドマリ様に甘えて横になっていよう。
「ご迷惑をお掛けしました。ところで、どうして洞窟に居るんですか。」
「サカタがやられた後、モリスにサカタの治療を任せてモジャ達はザンバル一家に報復へ行ったモジャ。報復は完了したけど、今度は何故かモジャ達が国の衛兵に追われる立場になったモジャ。」
悪党は大体悪の要職と繋がってるからな。
「じゃあ、ここに逃げんだという状況なんですね。」
「違うモジャ。国を相手にするにはモジャだけでは手が回らないから、マリのレベルアップの為にダンジョンに来たモジャ。」
イカレテルだろ。
マリ様も力コブを出すポーズやめて下さい。
国を相手に戦うかどうかはともかく、俺も人並みに戦える様になりたい。
今の俺のステータスってどうなってるんだ。
【サカタ】
レベル 12
職業 浮浪者
体力 2
力 2
素早さ 2
知能 1
健康状態 栄養失調
犯罪歴 主人のシーツを無断で性的に使用
『派生職業に転職が可能』
魔物使い
ママの使い
ママの使いって韻を踏みたかっただけだろ。
魔物使いはカッコいいじゃん。
『ママの使いに転職が完了しました』
『スキルママを獲得しました』
おい、キャンセルだ、キャンセル。
『現在転職可能な職業はありません』
詐欺サイトみたいな強引さだな。
「セーフスポットに着いたわよ。」
小さな山小屋の様な建物があるだけだったが、何故か魔物が襲ってこないらしい。
今日はここで一晩明かすことになった。
「師匠、どうして神力がステータスに表示されないんですか。」
「恐らくこの世界に神力の概念がないからモジャ。この世界に来る時、神力がスキルやステータスに変換されてるモジャ。」
師匠が強いのは納得だが、それに比べて俺のステータスは明らかに低すぎる。
それにマリ様が俺より神力があったとは思えないのに、ステータスで負けているのはおかしい。
「サカタは私達が守ってあげるから大丈夫よ。」
嬉しいけど男として言われたく無いセリフだな。
作り笑いをして頭を下げた。
「多分明日は最下層に到着するモジャ。お金は沢山あるから行く必要はないモジャが、せっかくだから行くモジャ。」
観光みたいに言うな。
でもこの世界の魔物は興味あるな。
因みにお金はザンバル一家を壊滅させた時に回収したらしい。
マリ様は寝たみたいだから、そろそろ本題に入ろう。
「師匠、俺達は地球に帰りたいのですが師匠の門みたいなので可能ですか。」
「当てがない訳じゃ無いもじゃが、神力を使えない状態では当分は無理モジャ。」
師匠を当てにしつつも他に何か方法があるか探していた方がいいな。
地球ではマリ様が行方不明になって大騒ぎになっているだろうから、出来る限り早く戻りたい。
「日本に帰れる様になったら、師匠も地球に来ませんか。美味しい葉っぱ沢山ご馳走しますよ。」
「美味しい葉っぱの為なら何処にでも行くモジャ。」
師匠が椿家の庭で葉っぱを食べている想像をしていたら退屈で眠くなり、そのまま目を閉じた。
その晩、安全なはずのセーフスポットが襲撃された。
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