呪われた椿家のお嬢は俺が必ず異世界から救い出します

サボタージュ石塚

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夜の襲撃者

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「全員起きるモジャ。包囲されてるモジャ。」

 飛び起きて窓から外の様子を伺うと銀色の甲冑を身に付けた騎士で洞窟は埋め尽くされていた。
 幸い今すぐ襲ってくる様子は見られない。

 指揮官を探しているとマリ様も窓際に移動してきた。
 外の様子を確認し終えたマリ様は俺に視線を合わせて、深く頷いた。
 よく分からないが俺も同じ様に頷いた。

「ファイアカーペットスペシャルゥゥ。」

 前回見た範囲よりも遥かに広い範囲に炎の絨毯が広がっていく。
 人が多過ぎて身動きが出来ない騎士はその場でジタバタと手を上にあげて呻き声を出している。
 昔、絵本で見た地獄の風景そのものだ。

 マリ様はドヤ顔で俺を見て深く頷いたから、俺は分かってた風で頷いた。

 炎は騎士達が持っていた荷物にも引火して魔法の効果以上の被害が出ている様だ。
 煙も尋常じゃないし、酸欠にならないか心配になってきた。

 地獄絵図となっている現場の後方から金色の甲冑を身に付けた騎士が銀色の騎士を踏み付けながらこちらに向かって来た。

「残虐の魔女マリ、悪魔の芋虫モジャ、神妙にお縄につけ。我こそは槍で天下を・・」

 前口上中の金色の兜を付けた首がコロリと地面に落ちた。
 炎の光と煙で視界が悪いが、師匠が糸で切断したのだろう。

 その後も次々と名のある騎士であろう者達が前に出て来たが、いずれも前口上中に首を落とされていた。
 途中からコントを見ている様で笑ってしまったのだが、こんな事で笑うなんて俺の中に住む神主の影響だろうか。
 ふとマリ様を見るとマリ様も面白かったのか笑いを抑えた顔をしていたので安心した。

「酸素が薄くなってきたモジャ。荷物を最低限持って最終階層に向かうモジャ。」

 後続の騎士達は依然として数が多いが、前方の倒れた騎士達が防御壁の様に積み上がり進行が遅くなっている様だった。

「サカタ、こんな時に言う事じゃないけど、凄く楽しいわ。何のしがらみも無く自由に行動している。物語の主人公になったみたいな気分なの。」

 背景に大量の屍が燃え上がる中、マリ様は最高の笑顔でそう言った。
 恐ろしいしがらみが俺の中に居るんだけど、それはまたの機会に説明しよう。

「流石マリ様、肝がお座りで御座います。爺やはハラハラして寿命が縮む思いです。」

 たまには爺やの練習しないとな。
 マリ様はキョトンとした顔でこう言った。

「随分お話出来るようになったじゃない。良かったわね。」

 確かに普通に話せる様になっている。
 ふふっ、俺の時代がやって来るかもな。

「何やってるモジャァァ。急げモジャァァ。」

 興奮した芋虫をなだめながらダンジョンの奥へと進むと、テニスボールくらいの大きさがある虹色の玉を発見した。

「ダンジョンオブダンジョンモジャ。滅多に出現しない高難易度のダンジョンだから絶対近寄っては駄目モジャ。」

 えっ、レアアイテムだと思って触っちゃった。

「モジャちゃん、サカタが手で触れちゃったわ。どうしよう。」

「サカタ、その玉の中には一人しか入らないモジャ。何とか自力で脱出してくるモジャ。」

 身体がジワジワと玉に飲み込まれて行く。
 恐怖で心臓が生き物の様にバクバクしているが、最後別れかも知れないから深呼吸をして落ち着いた。

「不肖サカタ、行って参ります。」

 マリ様が近寄ってきたから手で制し、静かに首を横に振った。

「サカタの馬鹿。まだお礼してないんだから必ず戻って来なさいよ。」

「戻って来たらお礼期待してます。」


 飲み込まれた先は刺す様な日差しが降り注ぐ海岸だった。
 驚くほど透き通っている綺麗な海が広がっている。
 幸い砂浜だから歩いて進むのは容易だろう。
 砂浜の先は深い森となっているから、暫くは海岸沿いに歩く事にする。

 食料と水を探しながら海岸沿いを歩いていると、男の釣り人を発見した。
 ダンジョンって感じが全くしないな。

「すいません。食料と水がある場所知りませんか。」

「新入りか。そのまま進むと集落がある。」

 五十代と思われる男は非常に素っ気ない。
 振り返りもせずに親指で集落の方向を指した。
 それ以上は聞く雰囲気ではなかったから警戒しながら進む。

 暫く歩いていると海の上に浮いている三十棟くらいの集落を発見した。
 地球にも海上で生活している部族がいて、家の床に穴開けて釣りしてたな。

 砂浜で海藻を干している数人の若い男に声を掛けたところ、このダンジョンの雰囲気を教えてもらえた。

 ここは小さな島が集まって形成されている高難易度ダンジョンだが普通に生活出来る環境がある。
 各島の中央に移動用ポータルが設置されていて、島間の移動はそれで行える。

 ポータルには1から7までのボタンが付いていて、それを押せば対応する島に移動出来る。
 数字が大きくなるほど強い魔物が出現するため、脱出は7の島が関係しているはずだが行った者は誰も戻って来ていない。

 攻略組は現在3の島でレベルを上げている一方、他の者はこの1の島で生活している。
 1の島には弱い魔物しか居ないが用心の為に海上で生活をしている。

 話を聞いているうちにアルバスという青年と仲良くなり、家へ招待してもらえる事になった。

「家まで距離があるからカヌーに乗ってくれ。木をくり貫いただけだから乗り心地は保証しないけどな。」

 この手製カヌーは漕ぎ手だけでなく、何もしない乗り手にもバランスが求められる。
 バランスボールのカヌーバージョンだ。

 結局、何度やっても俺はバランスが取れなかった。
 仕方ないからカヌーに掴まってバタ足をした。
 途中で顔を海水に付けると色とりどりの魚や貝、海老が見えたから今夜はご馳走にありつけそうだ。

 アルバスの家は集落の中で沖側に位置する。
 陸側に近い程、古くからいる人間という事らしい。
 アルバスがここに来たのは半年前だから、まだ新参者扱いされているとの事。

 カヌーを蔓で固定して家にお邪魔したが、家全体が波で揺れるから家酔いになりそうだ。

「サカタはどうして此処に来たんだ。」

「腕試しにダンジョンをクリアしようと思ったんだ。」

「ふーん、荷物少ないから何気なく虹玉に触ったのかと思ったよ。俺がそうだったからさ。」

 ギクッ。
 俺のくらいの上級者になると何でも現地調達なんだ的な事を言って誤魔化したがバレバレの様子。

「俺さ、病気の妹がいるから帰らないといけない。だから、ここに来て直ぐに2の島へ行ったんだよ。そしたら、コテンパンにやられちゃってさ、そこにたまたま通りかかった攻略組が助けてくれて今に至るって感じ。」

「2の島はそんなに強い魔物がいるのか。」

「地元じゃ俺はトップの冒険者だったんだけどさ、切り傷一つ付けられなかったよ。笑っちゃうだろ。」

 そう言ってアルバスはステータスボードを見せてくれた。

【アルバス】
 レベル 80
 職業 軽業師
 体力 256
 力 380
 素早さ 500
 知能 80
 健康状態 良好
 犯罪歴 無

 レベルが高いだけあってマリ様より数値が高いな。
 話の流れ的に俺のもの見せるしかないか。

【サカタ】
 レベル 25
 職業 ママの使い
 体力 20
 力 15
 素早さ 20
 知能 10
 健康状態 栄養失調
 犯罪歴 主人のシーツを無断で性的に使用

「なんだこりゃ、これで良くダンジョンに入ろうと思ったな。ププッ、しかもなんだこの犯罪歴は。俺を笑い死にさせる気か。」

「犯罪歴は見なかった事にしてくれ。ダンジョンに来れた理由は強い仲間が居たんだよ。俺もその仲間の所に帰る必要がある。」

「笑って悪かったな。じゃあ一緒に帰ろうぜ。俺が帰る時にサカタも連れてってやるよ。約束だ。」

 この後、二人で海に潜り夕食用の魚を銛で突き、それを囲炉裏で炉端焼きにして食べた。
 獲れたてだから美味しくて普段食わない皮まで食べた。

 その後、巨大な海老が入った塩汁も作ってくれた。
 東京で食べたら一万円で済まないコースだな。
 そもそも高い金を出しても新鮮な魚介類なんて東京で食えない。
 関東方面で旨い魚介類を食べたかったら、伊豆に行って現地で食うしか方法無い。
 食通のマリ様と毎月一回、伊豆下田まで行って魚介類を食べに行っていた事が遠い昔の様に思い出される。

「明日は集落を案内してやるから今日は早く寝よう。」

 長い葉を編んで作られた寝袋に身体を入れてステータスボードを眺めていたらいつのまにか寝ていた。



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