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メイド達とのティータイム
しおりを挟むせーのっが煩くて目が覚めた。
ティーセットを持ってきてくれたのだろう。
「勇者様、お待たせしました。本日の紅茶はアスコルティー、お菓子はレッドバッタの甘露煮です。」
アスコルティーに手を伸ばそうとしたら、イチが人差し指で俺の唇をツンと押した。
イチは俺の代わりにカップを口元に持ち上げてフーフーし始めた。
「ふふっ、このまま飲んだら火傷してしまいますわ。」
イチは何度かフーフーした後、今度はニイにカップを渡し、同様にフーフーし始めた。
それからカップはリレーされ、ハチに至っては口をカップに付けてしまっている。
フーを終えたハチが俺の後頭部に手を添えて、口紅が付いたカップを近づけてきた。
「勇者様、秘密の隠し味も入れ終わりました。召し上がれ。」
凄くドキドキする。
されるがままにアスコルティーを飲むと、雑巾の絞り汁を一ヶ月間発酵させた様な香りが口いっぱいに広がった。
この流れで臭い系はないだろと突っ込みたくなったが、俺は自分で決めたルールがいくつかある。
【漢たるもの三箇条】
出されたものに文句を言わない。
女性に優しく。
強さの上に成り立つ優しさを。
このルールは異世界でも曲げるつもりは無い。
この後に俺が言うセリフは当然決まっている。
「とても美味しい紅茶です。ありがとうごさいます。」
紅茶は飲みきったのに、口の中の残り香が臭えぇ。
口直しに赤いバッタの甘露煮に挑戦だ。
田舎に行くとお茶受けでイナゴの佃煮とか出るから、バッタを食べる事に一切抵抗はない。
今度はイチに静止される事なく、ヒョイと一口で口に運んだ。
これも不味い。
噛むたびに違った不味さが口の中で大暴れする。
コーヒーと酢を一対一の割合で混ぜたような味。
しかし、真の漢を目指す俺は一切顔に出さない。
「これも美味しい。ブルブル王国の食文化は俺の口に合うみたいです。」
「それは何よりです。この後は勇者様を城内探索ツアーにご招待したいと思います。」
廊下へ出ると、ゴオが椅子を子供神輿の様に組み上げていた。
椅子の下側に棒四本が#状に組んである感じだ。
「急遽、歩く事がお好きじゃない勇者様の為にゴオが作りました。どうぞお乗り下さい。」
エジプトのファラオじゃないんだから、こんなの乗りたくない。
誰にも見られません様にと祈りながら、椅子に座る。
「せーのっ、せい、はっ、せいっ、はっ・・。」
神輿の様に持ち上げられ発進してしまった。
そして当然の事ながら次々と人とすれ違う。
ここのまま偉そうに座ったままでいるのは良くないと思い立ち上がる。
しかし、バランスを取るのが意外と難しい。
重心を落とし、両手を広げる事でバランスを取る事が出来るようになったが完全に祭神輿状態だ。
立ち乗りに慣れた頃、イチから声を掛けられた。
「勇者様、ここが宝物庫です。ニイ、開けなさい。」
ニイは宝物庫の扉の前で胸の谷間から布袋を出した。
布袋から金属の棒を数本取り出すと、片手に一本づつ持って残りは口に咥えた。
まるで泥棒の様だ。
三十秒程鍵穴をガチャガチャしていると扉が開いた。
ニイは左の人差し指を口に添え、右手で部屋へ入れとハンドサインを行った。
これ泥棒だ。
椅子が外に出たままだから、コソコソする意味が無いけどね。
全員が部屋に入るとニイはそっと扉を閉めて鍵を掛けた。
金銀財宝があるのかと思ったら、骨董品の様な物が無造作に積み上げられている。
ゴミ屋敷みたいに天井に着きそうな箇所まである。
ニイは誇らしげに好きなだけ宝物を持ち出して良いと言っているが、バレたらギロチンの刑にされそうだな。
出来るだけ小さくて目立たない物を選ぶとしよう。
心の中で鑑定と何度も叫んだり、両目にグッと力を込めたりしたが一向に情報が来ないから選びようが無い。
仕方ないからイチに聞くか。
「この中でお勧めのアイテムはありますか。」
「アイテムの知識はサンが優秀ですわ。サン、手短に有用なアイテムの説明を開始しなさい。」
イチに指示されて分厚い眼鏡を掛けたサンが前に出て来る。
「そうですねぇ。マジックハンマーは如何でしょうか。魔力値に応じて物理火力が上がる変則的な武器です。勇者様ならば大抵の魔物は一撃です。」
なんか凄えコンパクトだ。
裁判官が静粛にって言った後にドンドンって叩くやつにそっくり。
「では、これにしたいと思います。他の場所も案内お願いします。」
「では次に王の寝室にご案内します。タンスの裏に隠し扉があり、勇者様の為に貯蓄されていた資金があります。ニイ、そうですよね。」
ニイは金属の棒を咥えながら頷く。
それ絶対に俺のじゃない。
これじゃあ勇者じゃなくて盗賊だよ。
「それはまたの機会にします。今日は部屋に戻り、ブルブル王国の事を教えて下さい。」
部屋に戻り、明日の打ち合わせに備えて色々教えてもらった。
要約すると
ブルブル領は周囲を【帰らずの森】という危険な場所に囲まれており、最高クラスの魔物がいるらしい。他の領に行く際は転移魔法陣を使用する。
ブルブル城には魔王が封印された部屋がある。
つまり、ここは元魔王城という事だった。
人口減少については明日の打ち合わせで説明されるという事で、メイド達は去って行った。
夕食は部屋に運ばれてきて普通に美味しかった。
疲れていた様でベットに横になっていたら、いつのまにか眠ってしまっていた。
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