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国立漢指南所の始動とダンジョン
しおりを挟む「お恥ずかしい話ですが、この国の女性は男性吟遊詩人グループのウララに夢中なんです。そのせいで一般男性は卑屈になり、女性を嫌悪する様になりました。女性は結婚を生活の手段としか考えていないので、男性がそうなるのは当然の結果と言えます。」
頭がツルツルのリンガーという大臣が中心となって打ち合わせが進んでいる。
ウララという吟遊詩人グループが女性を誑かしているから出生率が下がっているという認識らしい。
「私がいた地球も男性アイドルに夢中になる主婦が沢山いましたが、家庭とアイドルを両立出来ていましたよ。」
パチパチパチッ。
俺が発言する度にメイド達が立ち上がって過剰な拍手を行うから恥ずかしい。
「我が国の男達は自分だけを見ていて欲しいのです。吟遊詩人にうつつを抜かす妻など必要ありません。」
リンガーさんが鬼の様な形相で説明をしている中、イチが俺に耳打ちしてきた。
(リンガー大臣の奥様は熱烈なウララのファンです。)
大臣のくせして私怨丸出しだな。
そこから話はウララを解散させれば事態は終息に向かうだろうという方向に進み始めた。
そんな話だったら俺を呼ぶなよ。
まぁ、国だって一枚岩じゃないから別の方針があるんだろうけどね。
因みに俺の経験上、嫉妬や妬みというのは自分に原因がある。
だから、ウララを解散したところで似たような事が起こり根本的解決はしない。
自分だけを見てもらいたいならパートナーを惚れさせるしかない。
しかし、この問題を嫉妬や妬みが原因と言ってしまえば彼らのプライドを傷つけてしまう。
ならば肝心の所を伏せて、漢を上げる養成機関を作ってしまえば良い。
俺が突然立ち上がると、ウララの解散方法について議論されていた場が静まり返った。
「地球は男女の付き合い方について研究熱心でした。その蓄積されたノウハウを一部の方にお伝えしたいと考えています。金貨三千枚はその機関の設立費用にしたい思います。」
肝心な部分をぼかしている為に説得力が欠け、ほとんどの者が納得していない顔をしている。
どうしたものかと考えているとイチが立ち上がって綺麗な御辞儀をした。
「ブルブル国王は勇者様に方法を任せるとおっしゃいました。勇者様の発言は決定事項です。即座に実行する為の打ち合わせに切り替えましょう。」
イチのお陰で各部門の責任者達が俺の発言に具体性を肉付けしてくれた。大凡三ヶ月で拠点となる施設が金貨二千枚程で完成するとの事。
残りの金貨千枚でどの程度の規模で動けるか分からないが、やれる範囲でやるだけだ。
大臣達が施設の名称を決めて欲しいと言うのから、国立漢指南所と適当に付けた。
「勇者様、指南所が出来るまで猶予があります。その間、見識を広めに行くというのは如何でしょうか。」
城の外も見たいと思っていたから是非そうしよう。
翌日、俺はイチ達に連れられてブルブル城を後にした。
地図は昨日の夜に確認して大体頭に入った。
大まかに説明すると、ブルブル城を中心に広大な円環型の領地が広がっている。それを覆うように帰らずの森があるのだ。森の外側は色々な国が隣接している。
今向かっている先はダンジョンが乱立している西エリアだ。
鍵開けのニイの出身地でもある。
向かっている理由は地球出身のダンジョンマスターが現れたという情報を得たからだ。
可能ならば同郷の者と協力関係を結びたいと考えている。
旅は順調に進んでいる。
この国は見渡す限り街が広がっているから冒険要素が一切ない。
そのお陰で手ぶらで旅ができているんだけどね。
三日程、観光しながら進むと目的のダンジョンが見えてきた。
「勇者様、あの小さな祠がダンジョンの入り口です。若いダンジョンではありますが、既に多数の冒険者が還らぬ人となっています。」
この国のダンジョンは街の空きスペースにニョキニョキと出てくるらしい。
どのダンジョンも建物自体は小さく、恐らく入り口で別の場所に飛ばされているんじゃないかという話だ。
そして、最奥にいるダンジョンマスターを倒すか、ダンジョンコアを破壊するとダンジョンはズズズッと地面に消えるシステム。
祠の前で同郷のダンジョンが消滅していなかった事に安堵する。
俺は先頭でマジカルハンマーを構えながら祠の中に入った。
「ダンジョンマスターと話がしたくて来ました。どなたか居ませんか。」
出迎えてくれたのはメイド服を着た土偶が三匹。
土偶といっても人を忠実に模していて、色を完璧に塗れば人と変わりがない。
更にこちら側こメイド服よりも明らかにレベルが高い。
「初めまして地球出身のマサルと申します。ダンジョンマスターと同郷の様なので会わせて頂けないでしょうか。」
それに対して土偶は『いらっしゃいませご主人様』と言うもんだから油断していると、魔法ステッキみたいな棒で頭を叩かれた。
痛みでしゃがんでいると、『膝枕は如何でしょうか』と言いながら膝蹴りを繰り出してきた。
当たる寸前で後ろ襟を後方に引っ張られて事なきを得た。
後ろを振り返るとシイが巨大な両手剣を構えていた。
「戦闘に関しては私シイにお任せ下さい。」
一瞬で俺を殴った土偶の背後をとり、強烈な踵落としを決めて破壊した。
他の二体も回し蹴りと膝蹴りで一瞬で葬った。
膝蹴りを決める際に『膝枕は如何でしょうか』と言っていた。
剣使わないのかよって思っていたら、イチがこっそり教えてくれた。
(シイは武闘家です。剣を持っているのは見た目がカッコイイからという理由です。)
シイは戦闘が終わった後、剣を八の字に振って血糊を落とす仕草をしていた。
カッコイイけど剣使ったないからな。
「お見事、お見事。私がダンジョンマスターの加藤です。」
黒のスーツ姿でダンジョンマスターが奥の方から現れた。
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