左腕のDALIA

TrueEnd

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幕間2

一閃

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摩天楼の頂。
ゼノスは、眼下に広がる人間たちの世界の、意味のない光の明滅を、変わらず静かに見下ろしていた。この世界のあらゆる生命が発するエネルギーは、彼にとってただの雑音の集合体に過ぎない。
だが、その時だった。
無数の不協和音の中から、ほんの一瞬、しかし明らかに異質な旋律が響いた。
それは、純粋な、そして凝縮された力の『閃き』。あまりに微弱で、あまりに刹那的。並の者であれば、雑音の中に紛れて感知すらできなかっただろう。
しかし、ゼノスの感覚は、その針の先で突かれたような微かな刺激を、決して見逃さなかった。
鎧の奥で、彼の口元が歪む。
『……かかったな、ダリア』
思考が歓喜に震える。仮説は、正しかった。
彼女は生きていた。そして、やはり「器」を御しきれなかったのだ。
『フン、下等生物の些細な感情に引きずられ、力を漏らすとはな。地に落ちても、その気性の荒さは変わらんらしい』
力の閃きは、一瞬で消え去った。これほどの微弱な放出では、正確な座標の特定には至らない。
だが、それで十分だった。
ゼノスは虚空に手をかざす。すると、彼の眼前に、眼下の都市の立体地図が青白い光で描き出された。無数の光点の中から、一つの広大なエリアが赤くハイライトされる。
『場所は絞れた。北東区域……』
狩りの範囲は、数千万分の一にまで狭まった。
ゼノスは、赤く染まったエリアを冷徹な目で見つめる。
『包囲網を、狭めるぞ』
一度捉えた獲物の匂いを、彼が再び見失うことはない。
赤い非日常は、もはや健介のオフィスだけのものではなくなっていた。都市という広大な盤上で、ジワジワと、しかし確実に、彼らに迫りつつあった。
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