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本編
第三十九話 鉄の胃袋決定戦
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午後になると、祭りはいよいよ最高潮を迎えた。
広場に設置された特設ステージでは、竜王祭の恒例行事である武闘大会が行われる……はずだったが、今年は少し趣向が異なっていた。
「さあ! 集まりし猛者たちよ! 己の胃袋と顎の強さを証明する時が来た!!」
司会進行役の兵士が絶叫する。開催されたのは、『第一回・鉄の胃袋決定戦』。
ルールは簡単。リリアナの作った『超高密度・特大ハンバーグ』を、制限時間内にどれだけ多く食べられるかを競う大食い大会だ。
参加者は、予選を勝ち抜いた精鋭たち。その中には、ザイード将軍の姿もあった。
「フン……! 余裕で優勝してやるわ!」
ザイードは鼻息荒く、目の前に積まれた黒い肉の塊を睨みつけている。
対抗馬には、大柄な木こりの竜人や、リコの一族から選出された大食い自慢の青年などが並ぶ。そして――。
「……なぜ、俺が参加してはいかんのだ」
審査員席に座らされたイグニスが、不満たらたらで頬杖をついていた。
「イグニス様が参加したら、勝負になりませんから」
「むぅ……」
「後で特別賞として、優勝者と同じ分だけ作って差し上げますから」
「……約束だぞ」
子どものように唇を尖らせる最強の王を宥めている間に、ゴングが鳴らされた。
ガリッ! ゴリッ! バキボキッ!!
会場に響き渡る轟音。それは食事の音というよりは、採石場の作業音に近かった。
選手たちは必死の形相で、鋼鉄のようなハンバーグに挑んでいる。
「ぬおおおお! 硬い! だが美味い!!」
「顎が! 顎が熱い!」
「魔力が……腹の中で暴れてやがる!!」
観客たちは大興奮だ。「いけーっ! ザイード将軍!」「負けるな木こりー!」と声援が飛ぶ。
そんな中、ザイード将軍が驚異的なペースで食べ進めていた。
「この程度の硬度、普段の鍛錬に比べれば……ぐぬっ、中はまだ熱々か!」
彼は涙目で、しかし幸せそうに肉を頬張っている。かつて軟弱な料理と批判していた彼が、今や誰よりもリリアナの料理の虜になっている姿を見て、リリアナは思わず吹き出してしまった。
「楽しそうだな」
「はい。……皆さんが必死に食べてくれる姿を見るのが、こんなに楽しいなんて」
結果は、僅差でザイード将軍の優勝。彼は膨れ上がったお腹をさすりながら、優勝賞品である『リリアナ特製・一年分のおやつ券』を受け取り、男泣きしていた。
「リリアナ様……この券、家宝にいたします……」
「ふふふ、ちゃんと使ってくださいね」
笑いと熱気に包まれた広場。平和そのものの光景。だが、その祭りの喧騒の中に、一人の異質な客が紛れ込んでいたことに、まだ誰も気づいていなかった。
フードを目深に被り、熱狂する民衆を冷静な瞳で観察する人物。その腰には、東の大国・オリエント皇国の意匠が施された細剣が帯びられていた。
「……面白い。よもやこれほど豊かになっているとは」
謎の人物は、屋台で買った『鋼鉄ポテトフライ』をサクッとかじり、不敵に笑った。
「これは、少しばかり礼をせねばならんな」
広場に設置された特設ステージでは、竜王祭の恒例行事である武闘大会が行われる……はずだったが、今年は少し趣向が異なっていた。
「さあ! 集まりし猛者たちよ! 己の胃袋と顎の強さを証明する時が来た!!」
司会進行役の兵士が絶叫する。開催されたのは、『第一回・鉄の胃袋決定戦』。
ルールは簡単。リリアナの作った『超高密度・特大ハンバーグ』を、制限時間内にどれだけ多く食べられるかを競う大食い大会だ。
参加者は、予選を勝ち抜いた精鋭たち。その中には、ザイード将軍の姿もあった。
「フン……! 余裕で優勝してやるわ!」
ザイードは鼻息荒く、目の前に積まれた黒い肉の塊を睨みつけている。
対抗馬には、大柄な木こりの竜人や、リコの一族から選出された大食い自慢の青年などが並ぶ。そして――。
「……なぜ、俺が参加してはいかんのだ」
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「イグニス様が参加したら、勝負になりませんから」
「むぅ……」
「後で特別賞として、優勝者と同じ分だけ作って差し上げますから」
「……約束だぞ」
子どものように唇を尖らせる最強の王を宥めている間に、ゴングが鳴らされた。
ガリッ! ゴリッ! バキボキッ!!
会場に響き渡る轟音。それは食事の音というよりは、採石場の作業音に近かった。
選手たちは必死の形相で、鋼鉄のようなハンバーグに挑んでいる。
「ぬおおおお! 硬い! だが美味い!!」
「顎が! 顎が熱い!」
「魔力が……腹の中で暴れてやがる!!」
観客たちは大興奮だ。「いけーっ! ザイード将軍!」「負けるな木こりー!」と声援が飛ぶ。
そんな中、ザイード将軍が驚異的なペースで食べ進めていた。
「この程度の硬度、普段の鍛錬に比べれば……ぐぬっ、中はまだ熱々か!」
彼は涙目で、しかし幸せそうに肉を頬張っている。かつて軟弱な料理と批判していた彼が、今や誰よりもリリアナの料理の虜になっている姿を見て、リリアナは思わず吹き出してしまった。
「楽しそうだな」
「はい。……皆さんが必死に食べてくれる姿を見るのが、こんなに楽しいなんて」
結果は、僅差でザイード将軍の優勝。彼は膨れ上がったお腹をさすりながら、優勝賞品である『リリアナ特製・一年分のおやつ券』を受け取り、男泣きしていた。
「リリアナ様……この券、家宝にいたします……」
「ふふふ、ちゃんと使ってくださいね」
笑いと熱気に包まれた広場。平和そのものの光景。だが、その祭りの喧騒の中に、一人の異質な客が紛れ込んでいたことに、まだ誰も気づいていなかった。
フードを目深に被り、熱狂する民衆を冷静な瞳で観察する人物。その腰には、東の大国・オリエント皇国の意匠が施された細剣が帯びられていた。
「……面白い。よもやこれほど豊かになっているとは」
謎の人物は、屋台で買った『鋼鉄ポテトフライ』をサクッとかじり、不敵に笑った。
「これは、少しばかり礼をせねばならんな」
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