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4章 日食
母さん
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誰もいない家に帰り、急いでシャワーを浴びてリビングへ戻ると、そこには意外な人物が立っていた。
「……父さん」
仕事で不在がちだった父さんが、珍しくこの時間にいた。数日ぶりにまともに顔を合わせた父さんは、どこか少し痩せたようで、ひどく疲れ切った顔をしていた。
僕は気まずさに、何も言わずにそのまま学校に戻ろうとした。けれど、背後からかけられた声に足が止まる。
「……悠真。お前の母親の話を、したことはなかったな」
唐突な言葉だった。小さい頃から、僕の家に母親という存在はいなかった。疑問に思ったことは何度もあったけれど、子供ながらに「聞いてはいけないこと」だと察して、ずっと胸の奥にしまい込んできた、触れてはいけないはずの話だ。
「母さんはな……お前がまだ小さい時に、違う男と一緒に家を出て行ったんだ」
淡々とした、けれど重い告白だった。
「置き手紙もあった。だから、捜索願も出さなかった。……お前にはずっと隠しておくつもりだったんだがな」
僕は衝撃で言葉を失い、動けないまま父さんの背中を見つめた。
「急に……なんでそんな話を今さらするんだよ」
「……愛する女性に逃げられるなんて、みっともなくてお前には話せなかったんだよ」
父さんは力なく自嘲気味に笑い、震える手で顔を覆った。
「……お前が陽葵さんや栞さんと三人でいなくなっただろ。あの日のお前たちを見ていたら、どうしても思い出してしまってな。……済まない、少し感情的になった」
父さんはそれ以上は何も言わなかった。
母親に捨てられたという事実。そして、父さんが抱えてきた孤独。あまりにも重すぎる真実を突きつけられたけれど、今の僕にはそれを理解する時間がなかった。
僕は何も返せないまま、逃げるように家を飛び出し、陽葵と栞が待つ学校へと戻った。
「……父さん」
仕事で不在がちだった父さんが、珍しくこの時間にいた。数日ぶりにまともに顔を合わせた父さんは、どこか少し痩せたようで、ひどく疲れ切った顔をしていた。
僕は気まずさに、何も言わずにそのまま学校に戻ろうとした。けれど、背後からかけられた声に足が止まる。
「……悠真。お前の母親の話を、したことはなかったな」
唐突な言葉だった。小さい頃から、僕の家に母親という存在はいなかった。疑問に思ったことは何度もあったけれど、子供ながらに「聞いてはいけないこと」だと察して、ずっと胸の奥にしまい込んできた、触れてはいけないはずの話だ。
「母さんはな……お前がまだ小さい時に、違う男と一緒に家を出て行ったんだ」
淡々とした、けれど重い告白だった。
「置き手紙もあった。だから、捜索願も出さなかった。……お前にはずっと隠しておくつもりだったんだがな」
僕は衝撃で言葉を失い、動けないまま父さんの背中を見つめた。
「急に……なんでそんな話を今さらするんだよ」
「……愛する女性に逃げられるなんて、みっともなくてお前には話せなかったんだよ」
父さんは力なく自嘲気味に笑い、震える手で顔を覆った。
「……お前が陽葵さんや栞さんと三人でいなくなっただろ。あの日のお前たちを見ていたら、どうしても思い出してしまってな。……済まない、少し感情的になった」
父さんはそれ以上は何も言わなかった。
母親に捨てられたという事実。そして、父さんが抱えてきた孤独。あまりにも重すぎる真実を突きつけられたけれど、今の僕にはそれを理解する時間がなかった。
僕は何も返せないまま、逃げるように家を飛び出し、陽葵と栞が待つ学校へと戻った。
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