陽葵の笑顔に僕は夢中だ。

そら

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5章 日月

どうしても…

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 辺りが薄暗くなり、街灯がぼんやりと灯り始めた頃、僕は陽葵の家の前に到着した。

 栞の言っていた通り、玄関を囲っていた黄色い規制テープは剥がされ、地面にその残骸が転がっている。見上げれば、二階にある陽葵の部屋の窓に、はっきりとは見えないが、小さなクマのぬいぐるみらしき影が暗がりに浮かんでいた。

「よかった、まだある……」

 安堵し、僕は陽葵の言葉を頼りに予備の鍵を探そうと、敷地の境界線から一歩踏み出そうとした。
その瞬間だった。

「おい。一歩でも入ったら不法侵入だぞ」

 背後から冷ややかな声が突き刺さった。心臓が跳ね上がり、反射的に逃げようとした僕を、影から現れた警察官が鋭い視線で制する。

「……っ!」

「安心しろ、まだ捕まえる理由はねえよ。あと数秒遅ければ現行犯だったがな」

昨日、僕を厳しく問い詰めたあの警察官だった。

「なんで……なんでここにいるんですか」

「昨日あんなに怪しい振る舞いをした奴がいれば、普通は見張るだろ。プロを舐めるなよ」

 警察官は呆れたように息を吐いた。僕は必死に声を振り絞る。

「俺は、俺は犯人じゃない! 陽葵のお母さんたちを殺してなんてない!」

「分かってるよ。冷静に考えて、お前があの二人を殺害現場まで移動させて、自殺に見せかけて殺すなんてのは現実的に無理だ。最低でも車を持ってなきゃできない芸当だからな」

 警察官は淡々と事実を並べた。しかし、その視線はさらに鋭さを増す。

「だが、お前は昨日嘘をついた。それは事実だ。……そもそも何しに来た? 犯罪者になってまで、どうしても欲しいものがあるのか?」

「……っ」

 抑えていた感情が、一気に決壊した。僕は視界が滲むのを止められず、泣きながら叫ぶように答えた。

「陽葵のために……っ、今俺にできることをしているだけだ! 今日だって、陽葵がずっと大事にしていた、あのクマのぬいぐるみを取りに来たんだ! 彼女には、もうそれしかないから……!」

 感情のままに訴える僕を見て、警察官は視線を二階の窓へと移した。

「……ああ、確かあそこに置いてあったな。だがな、勝手に持ち出せば不法侵入だけじゃなく窃盗だ。最悪、現場を荒らしたってことで罪がもっと重くなったかもしれないんだぞ」

「それでも……! それでも俺は、陽葵のために何かしてあげたいんだ! もう、これしか……っ」

 必死に食い下がり、涙を拭う僕を見て、警察官は「はぁーっ」と心底めんどくさそうに大きなため息をついた。そして、胸ポケットからスマホを取り出す。
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