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5章 日月
自由
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陽葵がぬいぐるみに入れることを確認した僕は、次に彼女がどこまで移動できるのかを試すことにした。
「陽葵、もう一回入って。どこまで行けるか試してみよう」
彼女が頷いて吸い込まれるようにぬいぐるみに入ると、僕はそれを大切に抱え、以前は彼女が「見えない壁」に阻まれて一歩も進めなかった境界線へと向かった。
「行くぞ……」
自分に言い聞かせるように呟き、僕はその境界線を越えて歩き出した。十歩、二十歩……。少し歩いた先で立ち止まり、恐る恐るぬいぐるみに声をかける。
「陽葵、大丈夫か……?」
すると、ぬいぐるみの影から陽葵がふわりと姿を現した。
『……大丈夫! 悠真くん、私、外に出られたよ!』
彼女の満面の笑みに、僕は震える手でスマホを取り出し、すぐに栞へ電話をかけた。
「……悠真くん!? 無事なの!?」
「栞、色々あったけど大丈夫だった! 詳しくは後で話すけど、それより……陽葵がぬいぐるみに入れたんだ。それで、前は通れなかった壁も越えられたよ!」
『栞、私、外に行けるようになったよ!』
受話器越し、栞の安堵した泣き笑いのような声が返ってきた。
「よかった……本当に、よかった……! ……ねえ、悠真くん。今の陽葵が、どのくらい自由に動けるか確認してみて」
僕は陽葵に向き直り、「確認してみてくれる?」と頼んだ。陽葵は少し離れて、学校とは反対の方向へふわふわと進んでいく。
『……あ、やっぱりダメみたい。二十メートルくらい先に、また壁があるよ』
陽葵が困ったように立ち止まる。僕が彼女に駆け寄り、「やっぱりぬいぐるみに入った状態じゃないと移動できないのかな」と一緒に悩み始めたとき、電話の向こうで栞が言った。
「悠真くん、そのまま陽葵に、もう一度だけ先に進めないか聞いてみて」
僕がそのまま伝えると、陽葵は不思議そうにしながら、もう一度壁があった場所へ足を向けた。
『……え? 嘘……壁がない。さっきまであったのに、普通に進めるよ!』
「えっ、どういうことだ?」
驚く僕に、栞が冷静に、けれど確信に満ちた声で推測を口にした。
「多分……そのぬいぐるみが、陽葵の霊体の『核』に変わったのよ。悠真くんが核であるぬいぐるみを持っていることで、陽葵の移動できる範囲が、ぬいぐるみを中心に書き換えられたんだわ」
「じゃあ……陽葵は、ぬいぐるみと一緒にいればどこへでも行けるってことか?」
「ええ、きっとそうよ」
その言葉を聞いた瞬間、陽葵の大きな瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
『……ありがとう。悠真くん、栞……本当に、ありがとう……っ。私、またみんなと一緒にいられるんだね……』
消えてしまいそうな関係としてではなく、元通りの3人の関係として…。夜道に響く陽葵の泣き声は、どこまでも澄んでいた。
「陽葵、もう一回入って。どこまで行けるか試してみよう」
彼女が頷いて吸い込まれるようにぬいぐるみに入ると、僕はそれを大切に抱え、以前は彼女が「見えない壁」に阻まれて一歩も進めなかった境界線へと向かった。
「行くぞ……」
自分に言い聞かせるように呟き、僕はその境界線を越えて歩き出した。十歩、二十歩……。少し歩いた先で立ち止まり、恐る恐るぬいぐるみに声をかける。
「陽葵、大丈夫か……?」
すると、ぬいぐるみの影から陽葵がふわりと姿を現した。
『……大丈夫! 悠真くん、私、外に出られたよ!』
彼女の満面の笑みに、僕は震える手でスマホを取り出し、すぐに栞へ電話をかけた。
「……悠真くん!? 無事なの!?」
「栞、色々あったけど大丈夫だった! 詳しくは後で話すけど、それより……陽葵がぬいぐるみに入れたんだ。それで、前は通れなかった壁も越えられたよ!」
『栞、私、外に行けるようになったよ!』
受話器越し、栞の安堵した泣き笑いのような声が返ってきた。
「よかった……本当に、よかった……! ……ねえ、悠真くん。今の陽葵が、どのくらい自由に動けるか確認してみて」
僕は陽葵に向き直り、「確認してみてくれる?」と頼んだ。陽葵は少し離れて、学校とは反対の方向へふわふわと進んでいく。
『……あ、やっぱりダメみたい。二十メートルくらい先に、また壁があるよ』
陽葵が困ったように立ち止まる。僕が彼女に駆け寄り、「やっぱりぬいぐるみに入った状態じゃないと移動できないのかな」と一緒に悩み始めたとき、電話の向こうで栞が言った。
「悠真くん、そのまま陽葵に、もう一度だけ先に進めないか聞いてみて」
僕がそのまま伝えると、陽葵は不思議そうにしながら、もう一度壁があった場所へ足を向けた。
『……え? 嘘……壁がない。さっきまであったのに、普通に進めるよ!』
「えっ、どういうことだ?」
驚く僕に、栞が冷静に、けれど確信に満ちた声で推測を口にした。
「多分……そのぬいぐるみが、陽葵の霊体の『核』に変わったのよ。悠真くんが核であるぬいぐるみを持っていることで、陽葵の移動できる範囲が、ぬいぐるみを中心に書き換えられたんだわ」
「じゃあ……陽葵は、ぬいぐるみと一緒にいればどこへでも行けるってことか?」
「ええ、きっとそうよ」
その言葉を聞いた瞬間、陽葵の大きな瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
『……ありがとう。悠真くん、栞……本当に、ありがとう……っ。私、またみんなと一緒にいられるんだね……』
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