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番外編集
特別番外編「ツンデレ乙女と天然乙女の邂逅」(極上Dr.コラボ)
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『Presure Treasure Side』
桜の雨が降る四月。
入社式を終えた私は駅へ向かっていた。
へらへら陽気に見えてすっごく真面目で、実はSっ気も
持ち合わせた関西弁のデカブツ。
彼も私とは別の会社の入社式で、どうせなら待ち合わせて
晩ごはんでも食べようかという話になった。
(そろそろ来てるかしら。急がないと)
携帯で時間を確認し足を速めたとき、通行人とぶつかりそうになった。
「ごめんなさい!」
頭を下げると相手もこちらこそと言ってくれほっとする。
また歩き出した時、じっとこちらを見る視線に気づいた。
駅前のベンチの近くで突っ立っている嘘のような美人。
いや、まだ美少女といった方が正しい。
私が人にぶつかりかけたのも目撃したのではないだろうか。
意識すると頬が熱を持つ。
美少女に話をつけてこなければ。
「あなた、さっきの見てたの!」
腰に手を当てた。
怒ると頬をふくらませると涼ちゃんに指摘されるけど、やってしまった。
「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだけど、つい目で追っちゃって」
「……私こそごめんなさい。なんか見られた気がしたから、文句言おうと思って」
「か、かわいくて、つい」
「あなたに言われたら、つらいわ! 鏡で自分の顔見たことあるの?」
「毎日見てますよ」
何この返し。生まれて初めてだわ。
「……もういいわ。天然の年下の女の子をいじめる趣味はありませんから」
明らかにいくつも年下の子に大人の私が恥ずかしい。
「年下? 同じ歳じゃないんですか?
私は先月高校を卒業したばかりの18歳です」
「……22歳です。大学を卒業したばかり」
失礼な子だわ。
美少女をベンチに誘導し、隣に座るよう促した。
「お姉さんは、東京の人ですか」
「ということは、あなたは、上京した口?
私は生まれも育ちも東京の江戸っ子よ」
東京で生まれ大学を出て今年、就職した。
「じゃあ、私は浜っ子なのかな」
「横浜かー。たまにバイクで連れて行ってもらうのだけど、いい街よね」
「彼氏さんにですか?」
「多分、それで合ってる」
彼氏と人に言われると何だか不思議な気分だ。
「私は友達はいるけど恋愛には縁がないみたいで」
「……あなたなら、素敵な恋ができるわよ。
変な人に気をつければ」
びしっ、と指を突きつけた。
「ありがとうございます」
「あなたは高卒で就職なんて、えらいわね」
「えらくはないですよ。大学に行く友達をうらやましいと思ったこともありますけど、
人それぞれの人生ですもの」
「大人ね」
美少女は案外しっかりした子で、眩しかった。
「さっきの事だけど、見なかったことにしてね。絶対に忘れるのよ!」
恥ずかしいところを見られたのだ。覚えていてほしくない。
「……は、はい」
向かいの横断歩道で手を振っている涼ちゃんにうっかり笑いかけてしまった。
「さっき忘れろって言ったけど、私はあなたを忘れてあげないからね!」
宣言し、涼ちゃんの元に駆け寄る。
(バイバイ……天然美少女さん。あなたのことは忘れたくても忘れられないと思う)
11月の初めの風が冷たくなったこの頃。
まだ大きくなってもいないお腹を撫でながら、涼ちゃんに微笑みかける。
「なんや。菫子はさっきからぼんやりさんやな」
「なんかこの1ヶ月が凄まじかったなって」
「……沙矢さんと再会できてよかったな」
「涼ちゃんが青様と友達になってって言われてびっくりしたわ。コミニュケーション能力を買われたのね」
「……友達同士でもハグしたり肩抱いたりするもんやって教えてやったりはしたけどな」
「そうよね。あの時、沙矢ちゃんともハグしたし、伊織ともハグするもの」
頭を撫でた。
身長差があるからいい具合の位置に頭部がある。
「奇妙な縁やな。
けど、俺も飲んだ時に介抱してから親しみ覚えてたんや。おもろいぐらいに気にしぃやし……」
「気になるなあ」
「男同士の秘密やで」
「……っ」
いきなり唇を塞がれた。甘いキスがめまいを誘う。
この人と初めてキスした時からときめきは色褪せないままだ。
涼ちゃんは切なくなるほど優しく抱きしめてくれた。背をかがめて私の肩に頭を乗せている。
青様にいい男と言われたのは満更ではない。
男性から見てもいい男なのは、
涼ちゃんが涼ちゃんだからだ。
あと7ヶ月もすれば二人の子供に逢える。
私たちの未来が、すぐそばに。
桜の雨が降る四月。
入社式を終えた私は駅へ向かっていた。
へらへら陽気に見えてすっごく真面目で、実はSっ気も
持ち合わせた関西弁のデカブツ。
彼も私とは別の会社の入社式で、どうせなら待ち合わせて
晩ごはんでも食べようかという話になった。
(そろそろ来てるかしら。急がないと)
携帯で時間を確認し足を速めたとき、通行人とぶつかりそうになった。
「ごめんなさい!」
頭を下げると相手もこちらこそと言ってくれほっとする。
また歩き出した時、じっとこちらを見る視線に気づいた。
駅前のベンチの近くで突っ立っている嘘のような美人。
いや、まだ美少女といった方が正しい。
私が人にぶつかりかけたのも目撃したのではないだろうか。
意識すると頬が熱を持つ。
美少女に話をつけてこなければ。
「あなた、さっきの見てたの!」
腰に手を当てた。
怒ると頬をふくらませると涼ちゃんに指摘されるけど、やってしまった。
「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだけど、つい目で追っちゃって」
「……私こそごめんなさい。なんか見られた気がしたから、文句言おうと思って」
「か、かわいくて、つい」
「あなたに言われたら、つらいわ! 鏡で自分の顔見たことあるの?」
「毎日見てますよ」
何この返し。生まれて初めてだわ。
「……もういいわ。天然の年下の女の子をいじめる趣味はありませんから」
明らかにいくつも年下の子に大人の私が恥ずかしい。
「年下? 同じ歳じゃないんですか?
私は先月高校を卒業したばかりの18歳です」
「……22歳です。大学を卒業したばかり」
失礼な子だわ。
美少女をベンチに誘導し、隣に座るよう促した。
「お姉さんは、東京の人ですか」
「ということは、あなたは、上京した口?
私は生まれも育ちも東京の江戸っ子よ」
東京で生まれ大学を出て今年、就職した。
「じゃあ、私は浜っ子なのかな」
「横浜かー。たまにバイクで連れて行ってもらうのだけど、いい街よね」
「彼氏さんにですか?」
「多分、それで合ってる」
彼氏と人に言われると何だか不思議な気分だ。
「私は友達はいるけど恋愛には縁がないみたいで」
「……あなたなら、素敵な恋ができるわよ。
変な人に気をつければ」
びしっ、と指を突きつけた。
「ありがとうございます」
「あなたは高卒で就職なんて、えらいわね」
「えらくはないですよ。大学に行く友達をうらやましいと思ったこともありますけど、
人それぞれの人生ですもの」
「大人ね」
美少女は案外しっかりした子で、眩しかった。
「さっきの事だけど、見なかったことにしてね。絶対に忘れるのよ!」
恥ずかしいところを見られたのだ。覚えていてほしくない。
「……は、はい」
向かいの横断歩道で手を振っている涼ちゃんにうっかり笑いかけてしまった。
「さっき忘れろって言ったけど、私はあなたを忘れてあげないからね!」
宣言し、涼ちゃんの元に駆け寄る。
(バイバイ……天然美少女さん。あなたのことは忘れたくても忘れられないと思う)
11月の初めの風が冷たくなったこの頃。
まだ大きくなってもいないお腹を撫でながら、涼ちゃんに微笑みかける。
「なんや。菫子はさっきからぼんやりさんやな」
「なんかこの1ヶ月が凄まじかったなって」
「……沙矢さんと再会できてよかったな」
「涼ちゃんが青様と友達になってって言われてびっくりしたわ。コミニュケーション能力を買われたのね」
「……友達同士でもハグしたり肩抱いたりするもんやって教えてやったりはしたけどな」
「そうよね。あの時、沙矢ちゃんともハグしたし、伊織ともハグするもの」
頭を撫でた。
身長差があるからいい具合の位置に頭部がある。
「奇妙な縁やな。
けど、俺も飲んだ時に介抱してから親しみ覚えてたんや。おもろいぐらいに気にしぃやし……」
「気になるなあ」
「男同士の秘密やで」
「……っ」
いきなり唇を塞がれた。甘いキスがめまいを誘う。
この人と初めてキスした時からときめきは色褪せないままだ。
涼ちゃんは切なくなるほど優しく抱きしめてくれた。背をかがめて私の肩に頭を乗せている。
青様にいい男と言われたのは満更ではない。
男性から見てもいい男なのは、
涼ちゃんが涼ちゃんだからだ。
あと7ヶ月もすれば二人の子供に逢える。
私たちの未来が、すぐそばに。
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