彼女達の選択 〜私は、女王なんてなりませんってば!〜

Sakuya.Touko

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女王候補の思うコト

クラリス・アルベルテ

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「……おかしい。私が選ばれるのは十二歳の時よね? なんで今更……」

 慇懃無礼が服を着て歩いてるような眼鏡宰相閣下から直々に渡された女王印の封蝋つきの手紙を片手に、私は自分の執務室で唸った。

 私の名前は、クラリス・アルベルテ。
 クインヘイム王国の宮廷魔術師の一人。

 見た目はどう見ても十歳くらいのロリロリしい少女なんですけどね!!

 これには理由がある。
 魔力の高い者は、己の全盛期の姿で歳をとることが遅くなり、不老になるのだ。
 間違えてはならないが、不老不死になるわけではない。魔力で細胞が活性化され、老いることが無くなるというだけなのだ。
 もちろん、ある程度……それは人によるので数年から、それこそ長ければ数百年だが見た目が変わらず、魔力が衰えると魔力の無い者と同様に老いがやってくる。
 つまり、私の全盛期がこのロリロリしい身体であり、今後魔力が衰えるまではずっとこの体型と付き合わねばならないのだ。
 合法ロリとか言うのが同僚から聞こえることもあるが、断固として抗議(制裁)をさせてもらっている。

 そんな私が仕えるこのクインヘイムという国は世襲制ではない女王制の国である。
 女王の力という、国全体を覆う守護の力……膨大な魔力の塊を継ぐにふさわしい『器』を持った女性を女王と宰相、そして"聖霊達"が候補を指名し、選定試験をして決定するのだ。

 その女王候補に、私は選ばれた。


 ……五十九歳で。


 オーケー、そこでなんて歳で受け取ってると思ったやつ、私もそうだから安心しろ。
 私の記憶が確かなら、十二歳の時にこの手紙は来るはずだったのだ。
 いくら見た目がロリロリしいとはいえ、前世で言う還暦間近で受け取るとは思わないじゃんよ。

 前世……そう、私はいわゆる転生者というやつなのである。

 ここは、乙女ゲームの草分けと言われている「AngelQueen」というゲームの世界で、私はライバルの一人だった。

 主人公は十八歳のふんわりした金髪のかわいらしい美少女で。

 ライバルは三人。
 彼女と同い年の銀髪縦ロールな派手なお嬢様。
 二十四歳の騎士というドラゴンの血統を持つ女性。
 そして、私こと最年少十二歳の黒髪ツインテールの魔導師ロリ少女。

 これを思い出したのは『魔力熱』という熱病で生死の境をさまよった3歳の誕生日のこと。

 私は、体内に秘めた魔力量が人一倍多かった。そのため、幼い頃から肉体と魔力量が合わない者がよくかかる『魔力熱』という熱病で熱を出していた。
 魔力を持たない平民である生みの親は、そんな症状があることを知らず、よく体調を崩す私は困った娘だったようで……私は孤児院の前に3歳誕生日にどうにもならなくなった『魔力熱』でうなされたまま捨てられた。

 幸い院長先生が私を発見し保護してくれたが、その生死をさまよう熱の最中に私は前世というものを思い出した。

 前世のゲーム好きの友人が大好きだったゲームで私もやるように布教された。
 だから、各キャラクターの設定は覚えていた。
 しかし、彼女は同じゲーム好きとはいえ私とはジャンルが違う。
 彼女はスマホや携帯ゲーム機でできる乙女ゲームやノベルゲーム、パズルゲームを愛していたが、私が好きなモノは、PCや据置のゲーム機で遊ぶアクション性の高いRPGやMMORPGだ。RPGならは死にゲーと世に名高い闇魂や血骨、虚夜であり、MMORPGはサ終(サービス終了)してしまったアクション性の高いノンターゲティングの金字塔と呼ばれるあのゲームだし……ダンジョンやマップを踏破し、戦闘を経て最強装備と最適プレイヤースキルを目指すあの高揚する感覚が好きだ。

 ……それにしても、私の記憶はどうなっているのだろうか。

 覚えているのがゲーム関係のみなんて。
 しかも、今世の私は一度覚えたことを忘れない完全記憶の持ち主だから忘れることもない。

 クインヘイム王国では、十五才を成人としている。
 数代前の学者女王とも賢者女王とも言われたエミリア女王の政策と立法で、子供は七歳から十五歳までの間、国立の初等学校に通わせる義務ができた。
 それは男女、平民・貴族分け隔て無く、その間の子供の学費及び衣食住は全て無料であり、通っている間は税もその子供の分を免除される。そして、逆に通わせない者は子供を保護した後に重い労働刑と罰金刑にされるのだ。
 しかし、初等学校を卒業時に裕福な者とそうでないものとで道が別れる。裕福な者や貴族の子弟は、更に試験を受け入学金を支払い高等学校へと進む。
 高等学校は義務ではなく、入学金や学費も庶民からすれば高額だ。また通わせても税の免除などの優遇も無い。
 そのかわり、高度な学問と"魔法"を習うことができ、卒業すれば高官への道が開ける。
 平民が魔法学を学ぶことは、魔術師の弟子になるか高等学校に入る他はないのだ。

 これを知ったとき、私はとても喜んだ。

 十二歳で私は女王候補に選ばれるはずなのに、通っている初等科では魔法は覚えられない。
 しかし「AngelQueen」の設定では私は強力な魔法を操る魔導師のはず。
 つまり、ここはよく似た名前なだけで、ここはゲームの世界ではない! と思ったのだ。

 そして、目論見通り手紙は十二歳の時に受け取ることはなかったし、成人後も来ることはなく、高等学校へは特待生として進んだ。
 私はすっかり安心して魔法を覚え、前世のゲーム知識を元に一部のゲームの魔法を再現することを無駄に頑張った。
 再現した(対外的には開発した)数々の魔法のおかげで、私は当時の筆頭宮廷魔術師のシェーラザート師に目をかけられて、平民孤児でありながら宮廷魔術師の道を開いた。

 現在の私の肩書は、次席宮廷魔術師。
 筆頭宮廷魔術師はシェーラザート師ではなくなったが、ありがたいことに私は上から数えると二番目という重要ポストについている。平民孤児には過ぎたる立場だ。

 にも関わらず、今頃になって女王候補選定の手紙が来た。

「確かに見た目は十二歳で通るけど……恋愛とか無理だわー」

 大きくため息を付き、私は椅子の背に埋もれる。
 主人公が女王になった場合、私は"光の聖霊"様と結ばれるらしい。
 "光の聖霊"様の見た目は十代前半の可愛らしいショタ。
 悲惨な生い立ちで孤児院育ちで周囲の顔色を見ることに長け、腹黒いロリ少女を改心させるほど天真爛漫らしい。

 ショタとロリとか、確かに似合うけどさ……。

 私自身には、その属性は全くない。
 むしろ、暑苦しい筋肉や高い頭身に萌える。

 脳筋マッチョでもいいじゃない!

 だから、自分の好みにあう人は乙女ゲーではおそらく居ない。


 ……いや、確か一人は居た。

 けれど本来の相手が銀髪縦ロールのスタイルすらパーフェクトの完璧お嬢様。
 この外見では相手にされないし、されても困る。あの人がロリコンとか嫌すぎる。

 候補になったとはいえ断れるはず。
 女王になんてなりたくない。

 でも、私は悲しい宮仕えな宮廷魔術師。
 宰相閣下から渡されたなら、それは仕事だ。

 私は大きくため息を付いてから、執務室の荷物をまとめ始めた。
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