モブな令嬢は第二皇子の溺愛から逃れたい

エヌ

文字の大きさ
4 / 6

4

しおりを挟む

ドレスをどうしようかと悩んでいるところに、ガチャとノックもなしに扉が開かれる音がした。

そちらの方に目を向けると、第二皇子で自分の夫でもある、ルイスだった。

「あ、ルイ.....ど、うしたの?」


入ってきたルイスは普段柔和な微笑みからは想像できないほどごっそりと表情を落としてこちらを見ている。

何かあったのだろうか

まるでーーーーー


思考がある結論に至ると同時に、さぁ、と顔から血の気が引いた。

「....ル、イス...」


まさか、そんな...


「出かけようとしてるんだって?メーヴル。」

ボソリ、と声が聞こえる。
ゆっくりとこちらに近づいてくるルイスに、緊張で体が動かない。


そう、そんな表情は、まるで。
ゲームの中のルイスみたいだと思ったのだ。


「それは許可できないな」

ルイスの大きな手で両頬を包まれる。
ルイスに目線を合わせられると、瞳が恐怖で揺れた。

「ふっ、ふふ。」

途端に恍惚とした表情をしたかと思えば、急に顔を近づけられ、そのまま口付けをされる。
いつの間にか侍女は一人残らず退室していた。

「んっ、ルゥ、ちゅっ、んんんっ」


角度を変えて何度も何度も。
朝の口付けよりも荒々しく、何故かルイスが興奮しているのがわかる。

「っんちゅ、はぁ、メーヴル...」

ようやく口が離れたと思えば、キスで腰が砕けて正常に立てなくなっていた。
腰に手を回したルイスにそのまま横抱きにされ、ベッドへおろされても力が入らずされるがままだった。

「ちゅ、んん、メーヴル。可愛いね、」

そのまま覆い被さられると再度口付けられる。先ほどの表情がなかったのが嘘のように頬を紅潮させ恍惚とした表情でこちらを覗きこむルイスが、すこしどころかだいぶ怖い。

「最近はメーヴルも僕を好きでいてくれて、ちゅ、それはそれで可愛かったけど、ちゅ、ん、はぁ」

いつのまにか手を絡められて物理的にも身動きが取れなくなっている。
目の前のルイスが別人のように思える。
それだけで、幾度となく愛し合った場所であるのに、ここがなんだか違う場所のように感じた。

上でルイスが笑う声が聞こえる。

「はぁ、メーヴル...僕はね、」

そう言ってズイ、と口を私の耳に近づけると、


君の怯えた顔を、瞳を、この世で一番愛してるんだよ。


そう、まるで誰にも聞こえないようにそっと小さな声で囁く。

あとね、とそのまま話を続けられる。


「僕は自分の大切なものが他人の目に触れるのは嫌なんだ」


それは、ゲームで聞いたセリフだった。


「だから、外には出してあげられないよ」


耳から入ってきたその言葉は、まるで鉛のように重く私の体に沈んでいった。

その言葉通り、私がここから出られることはないのだろう。


1ヶ月過ごした、そしてこれから一生を過ごすだろうこの空間が、

急に監獄のように冷えた空間に感じたのだ。


「愛してるよ、メーヴル」




















---------------------------------
書ききれなかった補足
・ルイスはヤンデレ、好きな人の怯えた顔が好きな変態属性の他に腹黒属性も兼ね備えているので外堀がばっちり埋まっております。
・自分の監禁願望が露呈したので、この後侍女すらつけなくなります。
・学園時代、密かに自分の未来の夫探しをしていたメーヴルですが夫候補は次々不幸になりました。
どうかお幸せに...
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。 若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。 それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。 ※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。 本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。 ※4話でサクッと完結します。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者

月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで…… 誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください 「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」 呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。 その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。 希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。 アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。 自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。 そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。 アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が…… 切ない→ハッピーエンドです ※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています 後日談追加しました

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

処理中です...