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一章
9.異能研の活動(前)
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「よし、じゃあ祐希も来たし、新入りも入ることだし、真面目に活動するか」
今まで真面目に活動したことなんてあっただろうか。
「あ、あの! その前に、これは良いんですか?」
琴音ちゃんが何かを渡す。
それは一枚の紙だった。
「ん? あ、入部届ね。あ~、どうしようか」
「どうする? どういうことですか?」
俺にも分からん。入部届を受け取らないのか。
「あー、いや、一年生が一人になっちゃうから、もしそれが苦痛なら、他の部活に行った方が良いんじゃないかと思ってな」
意外だ。俺らは半ば強制的に入れられたというのに。健ってこんなに気を使えるやつだっただろうか。
「もしくは、ほら、別にこの学校は部活強制じゃないしさ。一年生一人で大丈夫か?」
「はい! 大丈夫です! 問題ないです! 全然!」
大丈夫らしい。だが確かに部活強制ではないわけだから、入らなくても問題は無いんだよなぁ。
「そうか。それなら、今日のうちは、それは持っておいてくれ。あとでもう一度聞くから、その時にな」
「はい!」
健がすごい部長らしいことをしていた。今まで名ばかりだったはずなんだが。部員が増えて、部長の自覚でも出てきたのだろうか。
「で、今日の活動はどうする?」
決めてなかったのか。
「新しい子が来たのだから、能力でも見せてあげれば良いんじゃない?」
「そうですね。俺も、もう一度じっくり見たいです」
「じゃあ決まりね」
神流先輩は的確なことを言うので、なかなか話が詰まることがなくて大変助かる。
「最初はどうする? 祐希からか?」
「俺か? 別に良いが、何をすればいいんだ? 時を止めても痕跡なんて残らないんだが」
まぁ、正しくは時を止めてるから痕跡が残らないんだが。
「祐希自身が移動するとか、物を動かすのはどう? 健の頭の上に」
「おい、明らかに最後のは要らないよな?」
「そうだな。それで良いか」
「いや、良くねぇよ!?」
俺は健を無視して、集中するために目を閉じた。
音が無くなり、動きが無くなる。世界が静寂に包まれる。
目を開けると、時が止まっている。
健は頭上に物が来るのを警戒しているのか、腕を頭の上で構えている。
「さて、何を動かすかな······」
キョロキョロと見回すが、あまり良いものが見付からない。
「ん、これなら良いか」
俺は良いものを見つけると、それを大きく横にずらした。
そして、能力を解除する。
「······落ちてこない······だと······?」
健が間抜けに見える格好で呆然としている。
「なんだよ。落とさねぇのかよ。警戒して損し──あぶねぇ!?」
チッ、引っ掛からなかったか。
俺が動かしたのは健が先程まで座っていた椅子だ。警戒するために立ち上がったものをずらしてみたが、先に気付かれてしまった。
「おま、祐希! これはないだろ!」
「時を止める能力はこうやって使うんだ。分かったか?」
「お~。微妙な使い方ですね!」
「グハァ!」
相変わらず急所を突いてきやがるこの後輩。
「つ、次は誰だ? 歩香か?」
「わたし? いいよ~。えっとね、影があるところは大抵潜れるんだけど、最近になって、小さめの影とか、壁に映った影みたいな、人が立てないようなところにも潜れるようになったから、祐希のストーキングが捗ります!」
最後はガッツポーズのような格好でキメた歩香。
······最後完全にストーキングって言ったよな? やめてくれよ? いつものことだけど。
「じゃあここは潜れますか!?」
琴音ちゃんが取りだしたのは、A4サイズの紙だった。
「どうだろうね。やってみようか」
歩香は紙を窓際に立て掛けるように置くと、外の光によってできた影に立った。
「できるかな~?」
不安そうな声とは裏腹にスルスルと沈んでいく歩香。
「お~」
琴音ちゃんが手をパチパチと叩いている。
「──あ······」
ヒラリ、と紙が落ちた。そして、
「はうぅ!」
バチッと歩香が影から弾かれた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫大丈夫·········ふぅ、次いってどうぞ」
歩香が立ち上がって促す。
「姫島さんは自分の意思では使えないみたいだから、次は私ね。私はさっきも言った通り、未来予知よ。分かりやすいように、ほんの少しだけ先の未来でも視ましょうか」
そう言って先輩は目を閉じた。
神流先輩は普段、能力を使わないので、なかなか貴重なシーンと言えるかもしれない。
そして、数秒経ったあとに目を開いた。
「──これは、まずいわね······」
いつになく真剣な表情の神流先輩は、ゆっくりとドアノブの方を向いた。
すると、タイミングよく、ノブが回る音がして──
明らかに学校という場にはそぐわない、和服姿の険しい表情をした男性が入ってきた。
今まで真面目に活動したことなんてあっただろうか。
「あ、あの! その前に、これは良いんですか?」
琴音ちゃんが何かを渡す。
それは一枚の紙だった。
「ん? あ、入部届ね。あ~、どうしようか」
「どうする? どういうことですか?」
俺にも分からん。入部届を受け取らないのか。
「あー、いや、一年生が一人になっちゃうから、もしそれが苦痛なら、他の部活に行った方が良いんじゃないかと思ってな」
意外だ。俺らは半ば強制的に入れられたというのに。健ってこんなに気を使えるやつだっただろうか。
「もしくは、ほら、別にこの学校は部活強制じゃないしさ。一年生一人で大丈夫か?」
「はい! 大丈夫です! 問題ないです! 全然!」
大丈夫らしい。だが確かに部活強制ではないわけだから、入らなくても問題は無いんだよなぁ。
「そうか。それなら、今日のうちは、それは持っておいてくれ。あとでもう一度聞くから、その時にな」
「はい!」
健がすごい部長らしいことをしていた。今まで名ばかりだったはずなんだが。部員が増えて、部長の自覚でも出てきたのだろうか。
「で、今日の活動はどうする?」
決めてなかったのか。
「新しい子が来たのだから、能力でも見せてあげれば良いんじゃない?」
「そうですね。俺も、もう一度じっくり見たいです」
「じゃあ決まりね」
神流先輩は的確なことを言うので、なかなか話が詰まることがなくて大変助かる。
「最初はどうする? 祐希からか?」
「俺か? 別に良いが、何をすればいいんだ? 時を止めても痕跡なんて残らないんだが」
まぁ、正しくは時を止めてるから痕跡が残らないんだが。
「祐希自身が移動するとか、物を動かすのはどう? 健の頭の上に」
「おい、明らかに最後のは要らないよな?」
「そうだな。それで良いか」
「いや、良くねぇよ!?」
俺は健を無視して、集中するために目を閉じた。
音が無くなり、動きが無くなる。世界が静寂に包まれる。
目を開けると、時が止まっている。
健は頭上に物が来るのを警戒しているのか、腕を頭の上で構えている。
「さて、何を動かすかな······」
キョロキョロと見回すが、あまり良いものが見付からない。
「ん、これなら良いか」
俺は良いものを見つけると、それを大きく横にずらした。
そして、能力を解除する。
「······落ちてこない······だと······?」
健が間抜けに見える格好で呆然としている。
「なんだよ。落とさねぇのかよ。警戒して損し──あぶねぇ!?」
チッ、引っ掛からなかったか。
俺が動かしたのは健が先程まで座っていた椅子だ。警戒するために立ち上がったものをずらしてみたが、先に気付かれてしまった。
「おま、祐希! これはないだろ!」
「時を止める能力はこうやって使うんだ。分かったか?」
「お~。微妙な使い方ですね!」
「グハァ!」
相変わらず急所を突いてきやがるこの後輩。
「つ、次は誰だ? 歩香か?」
「わたし? いいよ~。えっとね、影があるところは大抵潜れるんだけど、最近になって、小さめの影とか、壁に映った影みたいな、人が立てないようなところにも潜れるようになったから、祐希のストーキングが捗ります!」
最後はガッツポーズのような格好でキメた歩香。
······最後完全にストーキングって言ったよな? やめてくれよ? いつものことだけど。
「じゃあここは潜れますか!?」
琴音ちゃんが取りだしたのは、A4サイズの紙だった。
「どうだろうね。やってみようか」
歩香は紙を窓際に立て掛けるように置くと、外の光によってできた影に立った。
「できるかな~?」
不安そうな声とは裏腹にスルスルと沈んでいく歩香。
「お~」
琴音ちゃんが手をパチパチと叩いている。
「──あ······」
ヒラリ、と紙が落ちた。そして、
「はうぅ!」
バチッと歩香が影から弾かれた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫大丈夫·········ふぅ、次いってどうぞ」
歩香が立ち上がって促す。
「姫島さんは自分の意思では使えないみたいだから、次は私ね。私はさっきも言った通り、未来予知よ。分かりやすいように、ほんの少しだけ先の未来でも視ましょうか」
そう言って先輩は目を閉じた。
神流先輩は普段、能力を使わないので、なかなか貴重なシーンと言えるかもしれない。
そして、数秒経ったあとに目を開いた。
「──これは、まずいわね······」
いつになく真剣な表情の神流先輩は、ゆっくりとドアノブの方を向いた。
すると、タイミングよく、ノブが回る音がして──
明らかに学校という場にはそぐわない、和服姿の険しい表情をした男性が入ってきた。
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