残念異能生活日記

紡未夏樹

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一章

10.異能研の活動(後)

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「──これは、まずいわね······」
明らかに学校という場にはそぐわない、和服姿の険しい表情をした男性が入ってきた。
年齢は四十から五十のように見える。いや、もっとあるかもしれない。
男性は、部室をぐるりと見渡した。
そして、
「美夜子」
神流先輩の名を呼んだ。
ビクッと神流先輩が反応した。神流先輩の関係者か?
「と、父さん······」
「父さん······!?」
皆の視線が和服の男から、神流先輩に移った。え、父さんって······
「いやー、美夜子! 探したぞ!」
神流先輩の父親だという人物は、険しかった顔を綻ばせ、神流先輩の近くに寄った。
「なんでこんなところに居るのよ!?」
神流先輩は当然の疑問を口にする。当然のことだが、ここは学校だ。いくら保護者だとしてもそうそう入れるとは思えない。
「いや、なに。美夜子に渡さなければいけないものがあると言ったら、簡単に通してくれたぞ」
何やってんだこの人!? 嘘ついて入ってきたんだろ? 学校の警備どうなってんだよ。
「そ、それで、お父さんはどんなご用事で?」
健が怖じ気づきながら質問する。
「最近美夜子が妙に楽しそうでなぁ、学校で何かあったかと思って来てみたのだが······うむ、やはり来て良かった。ここはとても楽しそうな雰囲気が流れている」
急にやって来てよくわからないことを言い出すお父さん。とりあえず神流先輩の様子を見たかっただけなのか?
「あの、お父さんはそのためだけに嘘をついてまでここに?」
俺は聞いてみた。仮にそうだとしたら相当な親バカと言うべきなんだろうか。
「いや、渡したいものはちゃんと持ってきている」
ゴソゴソと和服の袖を漁るお父さん。しばらくして取り出したのは、ペットに着けるような首輪だった。
「今朝、美夜子の部屋を掃除していたお手伝いさんが見付けてきてな、うちにペットは居なかったはずだが、これは何かね?」
神流先輩のキャラからして、ある意味ではペットの物だと言われたら信じてしまいそうで怖い。
しかし一方の神流先輩は、珍しく汗をダラダラ垂らしている。何かまずいものだったのだろうか。
「そ、それは、その······」
言葉に詰まっている神流先輩というのも新鮮だなぁ。いや、そんなこと思ってる場合ではないんだが。
「な、なんだっていいじゃない! ほら、帰って! 不審者として突き出すわよ!?」
もう神流先輩のキャラが崩壊していた。おかしいな、最初はクールな人だと思ったんだが······。
「おぉ······怖い怖い。失礼したね。私はそろそろ帰ろう。美夜子に嫌われたくはないんでね」
「あ、はい」
「これはここに置いていくよ」
お父さんは首輪をテーブルに置き、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して帰っていった。
結局はこれと様子見のためだけに来たわけだから、相当な親バカと言っていいかもしれない。
「──で、先輩。結局この首輪はなんですか?」
俺がもう一度同じことを聞いてみると、
「な、なんだっていいじゃない。そんなもの」
目が泳いでいる。うむ、触れられたくないもののようだから、詮索はやめよう。
「神流先輩のお父さん、キャラが濃かったな······」
健が悟った人のように、窓から遠くを眺めて呟く。
確かに、これは異能研の誰よりもキャラが濃い可能性がある。なんだか今後も荒らしてくれそうな雰囲気があった。
「で、そろそろ·······帰る時間だな······」
窓の外を見ていた健が言う。
窓の外は真っ赤に染まっていた。完全にお父さんで時間を使われたな。
「何もできなかったけど······とりあえず帰るか······」
「そうだな······」
誰からともなく帰る用意を始める。
さすがにこんなイベントは多くなくていい。平和な日常で充分だ。

ちなみに、今回一言も発しなかった歩香と琴音ちゃんだが、歩香は影の中で、琴音ちゃんは部屋の奥で、それぞれ怯えていた。二人とも人見知りなのだとか。
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