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使用人の嫌がらせ
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私が住む離れの屋敷には10名の使用人が雇われている。料理人が2名、離れの雑事を行う8名の侍女。すべてグラトニー家本邸で雇われた使用人で、私を快く思ってないことは態度でわかった。
離れについて挨拶をするな否や、露骨に嫌な態度を取られ、私に聞こえる声で「デブ」だの「恥さらしの婚約者」など言われたい放題だ。
私の噂、容姿から言われてまぁ、当然の事だろうけど。気持ちよくはない。
ここは私のテリトリーとなるのだから、居住する範囲は私の自由に過ごさせて欲しい。外で暮らすのは息が詰るからこそ、私は引きこもりをしているわけで。
ただ、悪口くらいで追い出すのは彼女たちには可哀相なので、外出は必要最低限に留めておけば良い話か。問題に対して自己解決をした私は今日も今日とて自室に引きこもる。
★
……と思っていたのは1週間前までの私だ。
まぁ? たしかに悪口は言われ慣れているし、ある程度の我慢はできるけれども。
これは本当に許せない。
1週間後の晩御飯。出された食事はカビたパンに腐りかけ……いや、絶対腐ったかぼちゃで作ったであろうスープと質素な虫食い野菜のサラダ。かちこちの牛のステーキ。
……食べ物を粗末にするのはいただけないし、それにこれをどう食えっていうの?
席に座った私に配膳をする使用人たちは、くすくすと私に対する嫌がらせの数々を楽しみながらこちらをみていた。
生憎ブルーベルは仕事を頼んでいて、現在この家にいない。いた所で、この惨状をみたら椅子をもって暴れそうなので、いなくてよかったのだが。
明かにこれは嫌がらせの度を超えている。カビが生えたパンを食せば最悪食中毒にもなり得る。その危険性を彼女たちはわからないのだろうか。
私を舐めすぎだ。たしかに、彼女たちの愚行を諫めることがめんどくさかったので、この1週間放置していた。悪口以外には実害がなかったし、暴力を振るわれることもなければ、部屋を荒らされるおともなかった。
でも、そろそろこれはわからせなければいけない。この離れの主は誰なのか。
いくら大豚令嬢と罵られるのを許容するにしても、私のテリトリーでは許さない。
私はこちらを見て嘲笑っている三つ編みの、15、6の少女に声をかけた。
「……ねぇ、そこのあなた。今回この料理を作り、食材を仕入れたのはどなた?」
「はい?お嬢様がそのようなこと知る必要は――」
侍女は鼻で笑い、問いかけに答える素振りを見せない。
その立場もわからない態度にムカついた私は、テーブルの上においてある空のワイングラスに水を注いだ。ここの侍女は最低限の給仕しかしない。水はセルフサービスなのだ。
その水を彼女にぶっかけた。
「へッ……?」
水をかけられた侍女はただ、ただ私の行動に呆然するしかない。今まで大人しかった、舐め腐っていた令嬢が自分に危害を加えたのだ。
私は彼女が呆然としている間に息を整えて、静かにいった。
「その耳は飾りなの?最後にもう一度だけ言うわ。食材を仕入れて、料理を作った人間を連れて来いと言ってるの」
舌打ち混じりに言うと、途端に事の重大さに気づいた侍女の顔色は青ざめた。脱兎のこどく逃げるように、食材を仕入れ、料理を作った人間を呼んできたのだった。
離れについて挨拶をするな否や、露骨に嫌な態度を取られ、私に聞こえる声で「デブ」だの「恥さらしの婚約者」など言われたい放題だ。
私の噂、容姿から言われてまぁ、当然の事だろうけど。気持ちよくはない。
ここは私のテリトリーとなるのだから、居住する範囲は私の自由に過ごさせて欲しい。外で暮らすのは息が詰るからこそ、私は引きこもりをしているわけで。
ただ、悪口くらいで追い出すのは彼女たちには可哀相なので、外出は必要最低限に留めておけば良い話か。問題に対して自己解決をした私は今日も今日とて自室に引きこもる。
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……と思っていたのは1週間前までの私だ。
まぁ? たしかに悪口は言われ慣れているし、ある程度の我慢はできるけれども。
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……食べ物を粗末にするのはいただけないし、それにこれをどう食えっていうの?
席に座った私に配膳をする使用人たちは、くすくすと私に対する嫌がらせの数々を楽しみながらこちらをみていた。
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明かにこれは嫌がらせの度を超えている。カビが生えたパンを食せば最悪食中毒にもなり得る。その危険性を彼女たちはわからないのだろうか。
私を舐めすぎだ。たしかに、彼女たちの愚行を諫めることがめんどくさかったので、この1週間放置していた。悪口以外には実害がなかったし、暴力を振るわれることもなければ、部屋を荒らされるおともなかった。
でも、そろそろこれはわからせなければいけない。この離れの主は誰なのか。
いくら大豚令嬢と罵られるのを許容するにしても、私のテリトリーでは許さない。
私はこちらを見て嘲笑っている三つ編みの、15、6の少女に声をかけた。
「……ねぇ、そこのあなた。今回この料理を作り、食材を仕入れたのはどなた?」
「はい?お嬢様がそのようなこと知る必要は――」
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その立場もわからない態度にムカついた私は、テーブルの上においてある空のワイングラスに水を注いだ。ここの侍女は最低限の給仕しかしない。水はセルフサービスなのだ。
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「へッ……?」
水をかけられた侍女はただ、ただ私の行動に呆然するしかない。今まで大人しかった、舐め腐っていた令嬢が自分に危害を加えたのだ。
私は彼女が呆然としている間に息を整えて、静かにいった。
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