引きこもり大豚令嬢は今日もマイペースに生きたい

赤羽夕夜

文字の大きさ
7 / 34

使用人の嫌がらせ

しおりを挟む
 私が住む離れの屋敷には10名の使用人が雇われている。料理人が2名、離れの雑事を行う8名の侍女。すべてグラトニー家本邸で雇われた使用人で、私を快く思ってないことは態度でわかった。



 離れについて挨拶をするな否や、露骨に嫌な態度を取られ、私に聞こえる声で「デブ」だの「恥さらしの婚約者」など言われたい放題だ。



 私の噂、容姿から言われてまぁ、当然の事だろうけど。気持ちよくはない。



 ここは私のテリトリーとなるのだから、居住する範囲は私の自由に過ごさせて欲しい。外で暮らすのは息が詰るからこそ、私は引きこもりをしているわけで。



 ただ、悪口くらいで追い出すのは彼女たちには可哀相なので、外出は必要最低限に留めておけば良い話か。問題に対して自己解決をした私は今日も今日とて自室に引きこもる。







 ……と思っていたのは1週間前までの私だ。



 まぁ? たしかに悪口は言われ慣れているし、ある程度の我慢はできるけれども。

 これは本当に許せない。



 1週間後の晩御飯。出された食事はカビたパンに腐りかけ……いや、絶対腐ったかぼちゃで作ったであろうスープと質素な虫食い野菜のサラダ。かちこちの牛のステーキ。



 ……食べ物を粗末にするのはいただけないし、それにこれをどう食えっていうの?



 席に座った私に配膳をする使用人たちは、くすくすと私に対する嫌がらせの数々を楽しみながらこちらをみていた。



 生憎ブルーベルは仕事を頼んでいて、現在この家にいない。いた所で、この惨状をみたら椅子をもって暴れそうなので、いなくてよかったのだが。



 明かにこれは嫌がらせの度を超えている。カビが生えたパンを食せば最悪食中毒にもなり得る。その危険性を彼女たちはわからないのだろうか。



 私を舐めすぎだ。たしかに、彼女たちの愚行を諫めることがめんどくさかったので、この1週間放置していた。悪口以外には実害がなかったし、暴力を振るわれることもなければ、部屋を荒らされるおともなかった。



 でも、そろそろこれはわからせなければいけない。この離れの主は誰なのか。

 いくら大豚令嬢と罵られるのを許容するにしても、私のテリトリーでは許さない。



 私はこちらを見て嘲笑っている三つ編みの、15、6の少女に声をかけた。



 「……ねぇ、そこのあなた。今回この料理を作り、食材を仕入れたのはどなた?」

 「はい?お嬢様がそのようなこと知る必要は――」



 侍女は鼻で笑い、問いかけに答える素振りを見せない。



 その立場もわからない態度にムカついた私は、テーブルの上においてある空のワイングラスに水を注いだ。ここの侍女は最低限の給仕しかしない。水はセルフサービスなのだ。



 その水を彼女にぶっかけた。



 「へッ……?」

 水をかけられた侍女はただ、ただ私の行動に呆然するしかない。今まで大人しかった、舐め腐っていた令嬢が自分に危害を加えたのだ。



 私は彼女が呆然としている間に息を整えて、静かにいった。



 「その耳は飾りなの?最後にもう一度だけ言うわ。食材を仕入れて、料理を作った人間を連れて来いと言ってるの」

 舌打ち混じりに言うと、途端に事の重大さに気づいた侍女の顔色は青ざめた。脱兎のこどく逃げるように、食材を仕入れ、料理を作った人間を呼んできたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...