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やられてなんかやらない
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料理を作ったのは、軽薄そうな印象の若い男、食材の仕入れはさきほどの三つ編みの侍女だった。私は対面の席に侍女と料理人を座らせる。
まるで、これから捕食される動物のように縮こまっていた。
私は目の前にある皿を彼たちの前に差し出した。
「食べなさい」
「「え……?」」
カビの生えたパン。サラダとステーキ、スープを差し出した。ただ一言、そういうと二人は目を丸くさせた。
「私、なにかおかしなことを言ったかしら?命令よ、食べなさい」
「そ……それは」
目の前に出された料理は到底食べられるものではない。誰の目にも見ても明らかなのに、そう言ってのけた私と目の前に差し出された料理を見比べる、飲み込みの悪い使用人たち。
「まさか、自分たちが食べられないものを私に出したの?この家の使用人はそんな非常識な仕事しかできない人間だったのかしら?そんなことはないわよね?」
「あ、あの……いや」
言い逃れをしようと、言い訳を探す2人の視線は宙をさまよっている。依然と顔は青いまま。ま、食べられないものを差し出したんだから、そうなるよね。
でも、私は許さないし、私を不愉快にさせた罪はここで支払ってもらう。
「私があなたたちの態度で、大人しくこんな料理を食べると思ったのかしら?それは甘い考えだと思わない?こんな露骨な嫌がらせ。私が我慢するわけないじゃない。……食べるまでここを離れることは許さないから」
侍女と料理人は涙を浮かばせる。まるで私が彼女たちを虐めているみたいじゃないか。心外だ。
丁度かえってきたブルーベルに事の経緯を話して、彼女たちが料理を食べ終わるまで見張ってもらう。その間にまともな食材で簡単に自分とブルーベル用のご飯を作り、腐ったご飯を食べようとする使用人たちの前で食べてやった。
ブルーベルは料理が不得意だし、伯爵家に住んでいた頃は自分でたまに作っていたので、これでも料理は得意なのだ。
私に腐った料理を提供した使用人たちが、出したご飯を食べ終わる頃、19時半だった時計の針は23時を指していた。
★
「リーゼロッテ様……、あの、私の力不足で……大変申し訳ございません」
「いや、あなたのせいじゃないわよ。まぁ、この離れにいた使用人全員解雇しちゃった時点で想像はしていたけど、これはさすがに……私も考えないと」
腐った料理を提供された事件以来、離れで仕事をする使用人すべてに信用をおけない私は、不便より安全を優先させた。
つまり、アミュレット家からずっと仕えてくれているブルーベルを除いた使用人たちを全員解雇した。給金を対価に仕事を依頼する以上、その給金に見合った働きをみせてくれないと困るし、なにより私やブルーベルの平穏な生活の為にも、彼らが邪魔だった。
彼らの陰湿さに一々叱るのも面倒だし、その度にブルーベルの心労が溜まれば早死にしてしまう。
しかし、なにぶん、離れといっても建物の部屋数や庭の坪数も広く、あらゆる雑用や手伝いもしてくれているブルーベル一人では管理が行き届くはずもなく。
解雇してさらに1週間、庭の雑草は荒れ放題、窓辺のほこりは溜まり放題。かろうじて生活区域の自室、ブルーベルの部屋と水回りだけ綺麗に保っている状態だった。
私、料理以外の家事出来ないし、ブルーベルは料理以外の雑事はこなせても、手先が不器用なので、器用仕事はさせられない。事業の方のお使いに精をだしてもらいたいので、家のことを任せられる信用できる使用人が欲しかった。
「……そういえば、孤児院の方で始めている教育事業の方ですが、あれを初めて5年。そろそろ使える人材も育ってきた頃ではないでしょうか」
思いついたように提案するブルーベル。名案だと言いたげに指を立てる姿も絵になる。さすが美少女。
10歳か11歳くらいの頃だったか。ある商人の伝手を使って、孤児院を利用した教育機関の設立を提案した。孤児院に読み書き、マナー、算術を教える教師を常駐させ、そこで孤児院の子供たちに教える。
読み書きや算術を覚える子供たちは、商会や事務仕事等、さまざまな職業に対応できる有能な人材になる。その人材を投資してくれた貴族、または商会を中心に商会することで、子供たちの将来にも繋がり、投資者たちは有能な人材を手に入れることができる。
変な人間を雇い入れるよりはリスクも低いし、能力も把握できるので適切に仕事を割り当てることができる。孤児たちの居場所も作れるし、winwinだと感じたのだ。
それを提案した商会――ドラム商会のディナサン・ドラムドルは糸目の胡散臭い瞳を金貨のように輝かせてそれを実行に移してくれた。出資は私を初めとしてディナサンや、意見に同意してくれたやり手の商人たちが協力してくれた。
おかげでこの5年くらいは順調に事が進んでいたのだ。
職業教育は知識の吸収が速い時期から始めて、覚えられるところまで覚える。ちょこちょこは問題点を口だししていたが......実質はその辺の差配は現場管理に一任している。私の目論みではもうそろそろ形になっても良いころ合いだった。
つまり、孤児院で教養を身に着けた人材が各商会で雇われていてもいい頃合い。人材が選べる。
「そうね。一応自分も関わっているところだもの。試しに雇ってみてもいいかもしれないわね。......あんまり会いたくないけど、ディナサンと話をつけて頂戴」
最近また重くなった肉の重みを感じながら、ブルーベルに指示を出すと、ブルーベルは元気よく返事を返した。
まるで、これから捕食される動物のように縮こまっていた。
私は目の前にある皿を彼たちの前に差し出した。
「食べなさい」
「「え……?」」
カビの生えたパン。サラダとステーキ、スープを差し出した。ただ一言、そういうと二人は目を丸くさせた。
「私、なにかおかしなことを言ったかしら?命令よ、食べなさい」
「そ……それは」
目の前に出された料理は到底食べられるものではない。誰の目にも見ても明らかなのに、そう言ってのけた私と目の前に差し出された料理を見比べる、飲み込みの悪い使用人たち。
「まさか、自分たちが食べられないものを私に出したの?この家の使用人はそんな非常識な仕事しかできない人間だったのかしら?そんなことはないわよね?」
「あ、あの……いや」
言い逃れをしようと、言い訳を探す2人の視線は宙をさまよっている。依然と顔は青いまま。ま、食べられないものを差し出したんだから、そうなるよね。
でも、私は許さないし、私を不愉快にさせた罪はここで支払ってもらう。
「私があなたたちの態度で、大人しくこんな料理を食べると思ったのかしら?それは甘い考えだと思わない?こんな露骨な嫌がらせ。私が我慢するわけないじゃない。……食べるまでここを離れることは許さないから」
侍女と料理人は涙を浮かばせる。まるで私が彼女たちを虐めているみたいじゃないか。心外だ。
丁度かえってきたブルーベルに事の経緯を話して、彼女たちが料理を食べ終わるまで見張ってもらう。その間にまともな食材で簡単に自分とブルーベル用のご飯を作り、腐ったご飯を食べようとする使用人たちの前で食べてやった。
ブルーベルは料理が不得意だし、伯爵家に住んでいた頃は自分でたまに作っていたので、これでも料理は得意なのだ。
私に腐った料理を提供した使用人たちが、出したご飯を食べ終わる頃、19時半だった時計の針は23時を指していた。
★
「リーゼロッテ様……、あの、私の力不足で……大変申し訳ございません」
「いや、あなたのせいじゃないわよ。まぁ、この離れにいた使用人全員解雇しちゃった時点で想像はしていたけど、これはさすがに……私も考えないと」
腐った料理を提供された事件以来、離れで仕事をする使用人すべてに信用をおけない私は、不便より安全を優先させた。
つまり、アミュレット家からずっと仕えてくれているブルーベルを除いた使用人たちを全員解雇した。給金を対価に仕事を依頼する以上、その給金に見合った働きをみせてくれないと困るし、なにより私やブルーベルの平穏な生活の為にも、彼らが邪魔だった。
彼らの陰湿さに一々叱るのも面倒だし、その度にブルーベルの心労が溜まれば早死にしてしまう。
しかし、なにぶん、離れといっても建物の部屋数や庭の坪数も広く、あらゆる雑用や手伝いもしてくれているブルーベル一人では管理が行き届くはずもなく。
解雇してさらに1週間、庭の雑草は荒れ放題、窓辺のほこりは溜まり放題。かろうじて生活区域の自室、ブルーベルの部屋と水回りだけ綺麗に保っている状態だった。
私、料理以外の家事出来ないし、ブルーベルは料理以外の雑事はこなせても、手先が不器用なので、器用仕事はさせられない。事業の方のお使いに精をだしてもらいたいので、家のことを任せられる信用できる使用人が欲しかった。
「……そういえば、孤児院の方で始めている教育事業の方ですが、あれを初めて5年。そろそろ使える人材も育ってきた頃ではないでしょうか」
思いついたように提案するブルーベル。名案だと言いたげに指を立てる姿も絵になる。さすが美少女。
10歳か11歳くらいの頃だったか。ある商人の伝手を使って、孤児院を利用した教育機関の設立を提案した。孤児院に読み書き、マナー、算術を教える教師を常駐させ、そこで孤児院の子供たちに教える。
読み書きや算術を覚える子供たちは、商会や事務仕事等、さまざまな職業に対応できる有能な人材になる。その人材を投資してくれた貴族、または商会を中心に商会することで、子供たちの将来にも繋がり、投資者たちは有能な人材を手に入れることができる。
変な人間を雇い入れるよりはリスクも低いし、能力も把握できるので適切に仕事を割り当てることができる。孤児たちの居場所も作れるし、winwinだと感じたのだ。
それを提案した商会――ドラム商会のディナサン・ドラムドルは糸目の胡散臭い瞳を金貨のように輝かせてそれを実行に移してくれた。出資は私を初めとしてディナサンや、意見に同意してくれたやり手の商人たちが協力してくれた。
おかげでこの5年くらいは順調に事が進んでいたのだ。
職業教育は知識の吸収が速い時期から始めて、覚えられるところまで覚える。ちょこちょこは問題点を口だししていたが......実質はその辺の差配は現場管理に一任している。私の目論みではもうそろそろ形になっても良いころ合いだった。
つまり、孤児院で教養を身に着けた人材が各商会で雇われていてもいい頃合い。人材が選べる。
「そうね。一応自分も関わっているところだもの。試しに雇ってみてもいいかもしれないわね。......あんまり会いたくないけど、ディナサンと話をつけて頂戴」
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