10 / 34
気が重い大豚令嬢
しおりを挟む
――久しぶりにディナサンに会ってどっと疲れた。しばらくは誰とも会いたくないな、と思いつつ。
優雅に引きこもりライフを送る。最近は少女向けの恋愛小説にはまっている。ガラスの靴をきっかけに恋愛に発展する小説。毒林檎を食べたことがきっかけで始まる恋......恋愛案系はトラウマがあるけど、フィクションには罪はないのだ。
小説にときめきつつ、1人の時間を満喫していると、本邸からの使いが届いた。グラトニー公爵からの晩餐会の招待状......と言う名の報告会か。
断る権限はないので、了解の返信を返すと、日取りは明日ということになった。
――憂鬱だ。話すことなんてなにもないのに。
仕方がないので、先日ディナサンに貰ったシックでタイトめなデザインと赤いリボンがあしらわれた、下半身のお肉を隠してくれるドレスを選んで、晩餐会に望む。
★
ブルーベルを連れて本邸へと足を踏み入れる。形式的に本邸で働く使用人たちは礼儀を尽くしてくれるけど、その表情は嘲笑と侮蔑の色が浮かんでいた。
そんな顔される覚えはないのだけど、大豚令嬢としての噂がある以上、それは仕方のないことだし、覚悟していたことだ。晩餐会といっても1時間くらいで終るからそれまでの辛抱だ。
グラトニー公爵の執事の案内を頼りに、公爵が待っている食間へと向かった。
............。
「おまえ、俺との約束を破って問題を起こしたらしいな」
「なんですか、藪から棒に」
食卓に座ると、コース料理が前菜から順に配膳される。マナーに則って順に口にするが......味がない。サラダにはドレッシングがかかっていない。お肉は味はついていなく、ゴムのように硬いし、パンもカチカチ。
こんな不味いものを公爵は食べているのかと、顔色を伺ってみるが、公爵様のサラダには明かにドレッシングがかかっているし、肉もパンも柔らかそうだ。
これも嫌がらせか。うんざりする。
食事に手をつける気が失せて、残りの料理は下げさせる。一瞬、グラトニー公爵はぴくり、と不満げに眉を上げたが無視だ。
美味しくないものを口にしたくないし、これを食べたところで、使用人が面白がるだけだ。
とりあえず話を続けようと、口を出したところ、そんな話題になった。
問題って、何を起こしたのだろうか。首を傾げても答えは出てこない。
「とぼけるな。離れで働いている使用人に陰口を叩き、腐った料理を無理やり食べさせた挙句、勝手に離れの使用人全員を解雇したのだろう!」
グラトニー公爵は声を荒げる。その話は事実無根である。......いや、腐った料理を食べさせたの下りだけは本当だけど、それは自業自得というものだ。先に仕掛けたのはあっちだし。
グラトニー公爵は冷静沈着で、状況をみて判断する人だと思ったのだが、思ったより感情的になる人なんだな。と彼の性格に人間味を感じつつ、間違っているところは、否定させてもらう。
「違います。その逆で――」
「実際に使用人は全員解雇したのだろう!彼らにも生活がある。勝手に解雇をするとは何事か」
「人の話を聞きなさいよ」
人の話を遮って、彼らを庇い建てする言葉が出てくる。この使用人にこの主有りってやつなのか。使用人の程度で主の程度が知れる。
たしかに宰相として有能なのだろうが、片方の意見を聞いただけで、状況を判断するのは得策ではなくない?
でも、感情的になった人間は、一度感情が暴走すると面白いほどに人の話を聞かないのは体験済み。これ以上私がなにをいったところで、彼には言い訳にしか聞こえないだろう。
なら、こちらもこちらで、言いたいことだけ言わせて貰う。
「こちらも正当な対価を支払っている以上、使えない使用人を雇う必要ありません。私の身の回りに誰を置くかは私が決めさせていただきます。従って、離れの管理は私自分で行いますので、今後一切介入しないでください。使用人も誰を雇うかはこちらで決めます」
「では勝手にするがいい。今後一切、こちらはなにも関与しない!」
私の態度が気にくわないのか、下唇を噛んで感情を抑えようと必死になる公爵。こういう一面もあるんだ、と関心しつつ。
関与しないという言質はもらえたので、頷いた。こっちもそちらの方が楽だし。
「はい。お互い無駄なことで言い争うのはやめましょう。お互いが変に関われば今回のような葉もない噂が広がりますので」
根はあると自覚しているので、そこは謝って置こう。......心の中で。
「予算の件ですが、こちらに回されるものは自分で管理をしたいのですが――」
「女のおまえが金の管理ができるはずないだろう。ずっと教養も身に着けず引きこもっていたのであろうが......」
後は離れの予算管理もこちらに一任してくれないかと交渉してみたが、お金の流れが把握できないので、NGとなってしまった。
あと、失礼な。一応教育係はつけてもらっていたし、一通りの管理くらい自分できるっつーの。
関与しないっていったのに、予算管理は駄目は矛盾し過ぎでしょ。ハイリーのこともそれとなく伝えてみたが、聞く耳を持ってくれない。
......気が重い。
彼は言いたいことだけ言い終えると、席を立ち上がって去っていってしまった。
人の話を聞かない相手との会話は疲れる。
優雅に引きこもりライフを送る。最近は少女向けの恋愛小説にはまっている。ガラスの靴をきっかけに恋愛に発展する小説。毒林檎を食べたことがきっかけで始まる恋......恋愛案系はトラウマがあるけど、フィクションには罪はないのだ。
小説にときめきつつ、1人の時間を満喫していると、本邸からの使いが届いた。グラトニー公爵からの晩餐会の招待状......と言う名の報告会か。
断る権限はないので、了解の返信を返すと、日取りは明日ということになった。
――憂鬱だ。話すことなんてなにもないのに。
仕方がないので、先日ディナサンに貰ったシックでタイトめなデザインと赤いリボンがあしらわれた、下半身のお肉を隠してくれるドレスを選んで、晩餐会に望む。
★
ブルーベルを連れて本邸へと足を踏み入れる。形式的に本邸で働く使用人たちは礼儀を尽くしてくれるけど、その表情は嘲笑と侮蔑の色が浮かんでいた。
そんな顔される覚えはないのだけど、大豚令嬢としての噂がある以上、それは仕方のないことだし、覚悟していたことだ。晩餐会といっても1時間くらいで終るからそれまでの辛抱だ。
グラトニー公爵の執事の案内を頼りに、公爵が待っている食間へと向かった。
............。
「おまえ、俺との約束を破って問題を起こしたらしいな」
「なんですか、藪から棒に」
食卓に座ると、コース料理が前菜から順に配膳される。マナーに則って順に口にするが......味がない。サラダにはドレッシングがかかっていない。お肉は味はついていなく、ゴムのように硬いし、パンもカチカチ。
こんな不味いものを公爵は食べているのかと、顔色を伺ってみるが、公爵様のサラダには明かにドレッシングがかかっているし、肉もパンも柔らかそうだ。
これも嫌がらせか。うんざりする。
食事に手をつける気が失せて、残りの料理は下げさせる。一瞬、グラトニー公爵はぴくり、と不満げに眉を上げたが無視だ。
美味しくないものを口にしたくないし、これを食べたところで、使用人が面白がるだけだ。
とりあえず話を続けようと、口を出したところ、そんな話題になった。
問題って、何を起こしたのだろうか。首を傾げても答えは出てこない。
「とぼけるな。離れで働いている使用人に陰口を叩き、腐った料理を無理やり食べさせた挙句、勝手に離れの使用人全員を解雇したのだろう!」
グラトニー公爵は声を荒げる。その話は事実無根である。......いや、腐った料理を食べさせたの下りだけは本当だけど、それは自業自得というものだ。先に仕掛けたのはあっちだし。
グラトニー公爵は冷静沈着で、状況をみて判断する人だと思ったのだが、思ったより感情的になる人なんだな。と彼の性格に人間味を感じつつ、間違っているところは、否定させてもらう。
「違います。その逆で――」
「実際に使用人は全員解雇したのだろう!彼らにも生活がある。勝手に解雇をするとは何事か」
「人の話を聞きなさいよ」
人の話を遮って、彼らを庇い建てする言葉が出てくる。この使用人にこの主有りってやつなのか。使用人の程度で主の程度が知れる。
たしかに宰相として有能なのだろうが、片方の意見を聞いただけで、状況を判断するのは得策ではなくない?
でも、感情的になった人間は、一度感情が暴走すると面白いほどに人の話を聞かないのは体験済み。これ以上私がなにをいったところで、彼には言い訳にしか聞こえないだろう。
なら、こちらもこちらで、言いたいことだけ言わせて貰う。
「こちらも正当な対価を支払っている以上、使えない使用人を雇う必要ありません。私の身の回りに誰を置くかは私が決めさせていただきます。従って、離れの管理は私自分で行いますので、今後一切介入しないでください。使用人も誰を雇うかはこちらで決めます」
「では勝手にするがいい。今後一切、こちらはなにも関与しない!」
私の態度が気にくわないのか、下唇を噛んで感情を抑えようと必死になる公爵。こういう一面もあるんだ、と関心しつつ。
関与しないという言質はもらえたので、頷いた。こっちもそちらの方が楽だし。
「はい。お互い無駄なことで言い争うのはやめましょう。お互いが変に関われば今回のような葉もない噂が広がりますので」
根はあると自覚しているので、そこは謝って置こう。......心の中で。
「予算の件ですが、こちらに回されるものは自分で管理をしたいのですが――」
「女のおまえが金の管理ができるはずないだろう。ずっと教養も身に着けず引きこもっていたのであろうが......」
後は離れの予算管理もこちらに一任してくれないかと交渉してみたが、お金の流れが把握できないので、NGとなってしまった。
あと、失礼な。一応教育係はつけてもらっていたし、一通りの管理くらい自分できるっつーの。
関与しないっていったのに、予算管理は駄目は矛盾し過ぎでしょ。ハイリーのこともそれとなく伝えてみたが、聞く耳を持ってくれない。
......気が重い。
彼は言いたいことだけ言い終えると、席を立ち上がって去っていってしまった。
人の話を聞かない相手との会話は疲れる。
43
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる