引きこもり大豚令嬢は今日もマイペースに生きたい

赤羽夕夜

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おデブ商人のアドバイス

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 議題は孤児と孤児院の数が足りていない、そして人不足の件からだ。クルベル孤児院等、商会の手にい届いている特殊な孤児院を除いて、職員は神父、またはシスターに限定されている。



 そもそも、宗教団体による保護に限定しているから足りないのだ。

 「まず、孤児院を増やすなら体勢を整えなければいけません。場所はもちろん、人員、予算の確保。これらが重要でしょう。人員については神父、修道女の神を信仰している団体のみではなく、外部からも面倒を見る人員を揃えるべきです」

 「下手な人間に子供の世話を任せてしまうと、二の舞になってしまうのではないか?まだ子供の扱いに長けている方がトラブルが少なくていいだろう」

 「それなら子供の扱いになれている未亡人や、子供の世話に慣れている乳母経験者などから協力を募ればいいでしょう。給料を発生させれば、夫を失くした未亡人たちの新たな生活基盤にもなります」

 「夫や子供を失くした未亡人を対象にするか……その発想はなかった。しかし、一気に職員を増やすにしても、その給料はどこから捻出する? 相当の予算が必要になるのでは?」



 そう、私が話したかったのは、その部分もある。そもそも、この国の孤児は”多すぎる”。いくら育児放棄等で孤児になったとは言え、親は生存しているけれど、孤児院暮らしの子供が多いのだ。



 その理由を考えてみたが、そもそもの話、その子供は本当に急を要するほどの保護が必要な子供だったのかが肝になってくる。



 例えば、日常的に暴力はなく、その日だけつい暴力を振るってしまった……偶然その場に居合わた近所の人が警邏隊に連絡した。この場合は果たして保護が必要な案件なのだろうか。



 ちょっとしたことですぐに保護して、子供を孤児院に住まわせればそれはそれで子供たちがあぶれるのは当然。つまり、孤児院に入るにたる基準が低すぎる。



 これを簡潔に伝えると、公爵様は大きく頷いた。わかってもらえてほっと一安心。



 「孤児院に入る基準を高くし、今後は徹底した管理をすればいいのだな」

 「そうですね、ただ厳しくしすぎるのも問題です。それでは孤児院の意味が無くなりますので。重要度の低い保護は経過観察として親元へ帰し、急を要するのであればすぐに保護でも問題ないかと。それに、貧困層の子供たちは明日食べるものに困り、孤児院に預けるパターンも多いので、そういう子たち対策で、定期的に孤児院で炊き出しをするのもいいかと。食費はかさむものの、生活費は削減できますし。炊き出しは汁ものなどを中心とすれば、そちらの予算も抑えられますね」

 「そうだな。その辺も担当のものとつめて見よう。これだけでもかなりの予算が削減できるし、職員もふやせそうだな」



さらに助言をもうひとつ。

 「予算を削減するなら、子供たちの勉強の一貫として、野菜等を育てさせてもいいですね。野菜の育て方を学ぶことで、自給自足も学べますし、さらに食費の削減にもなります。幸い、孤児院が立つ建物は子供たちの遊び場の為に広く庭が作られているところが多いので、有効だと思います。それと、子供たちや大人がつくったもの、いらないものを作ってバザーなんてものを開いても、お金の稼ぎ方の勉強になります」



 これはクルベル孤児院でもやっている。これのおかげで必要な経費は削減できたし、バザーなんかは子供たちの一種の職業体験となっているそうだ。それに、なにかを売るという経験は今後、商人の元で働くならきっと役に立つ。



 そうでなくても、計算等の勉強になるだろう。



 「また、慈善活動の一貫として、積極的貴族から寄付を募ったり、チャリティーイベント等を開いてみてもいいかもしれませんね。それだけでも予算の手助けにはなると思います」

 「参考にする」



 さらりと私の言ったことを紙に書き込む。メモられ慣れているが、少し恥ずかしい。

 そんなこんなで、孤児問題に関する私が考えられるものは全て吐き出すと、あの公爵様が私にたいして、最大限の礼儀だと深々と頭を下げられ、感謝の言葉を述べられた。

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