妹が可愛すぎるので絶対聖女にならせて見せます。

丁太郎。

文字の大きさ
31 / 50

31話 私は兄様に頼んでみる

しおりを挟む
 聖女学園で学園祭を開催する計画が動き出した。
 学園側への働きかけは、ルーミラお姉さまに丸投げしてしまったけど、騎士学校方は私の方で話を持っていく事になった。
 
 兄様に頼むよりは、トレーニ様に頼んだ方が話が早いとは思う。
 なんと言っても3大公爵家のリッシルト家の影響力はユニスリー辺境伯家より強い。
 トレーニ様のお父君は騎士学校の理事のお一人でもある。

 でも、私個人にはトレーニ様に直接お話する事が出来ない。
 私の力で直接通話などもっての外。
 結局兄様を通じてでしか、お会いする手段が無いのだ。
 そして、兄様は面倒な人だ。
 私からトレーニ様に会いたいと言ったらどんな反応をするのか想像に難くない。

 はぁ、取り敢えずは兄様にお話するしかなさそうだ。
 全てはアイリの為と判って貰うところからの話だわね。


 休暇前試験の前日の日曜日、私は兄様に会いに来ていた。

「リリー、今日はどうしたんだい?僕に出来る事なら何でも言ってくれ」

「兄様ありがとう。兄様はアイリの将来の夢を知っていますか?」

「以前にアイリから聞いたよ。聖女学院にいるのだからね。聖女様になりたいのだろう?」

「はい、では聖女様に選ばれる為にはどうしたらいいと思います?」

「質問ばかりだね。当然、審査員に認められる事さ。聖女様になるにふさわしい才能があるとね」

「はい、そこで私はアイリに才能を発表する場を与えたいの」

「なるほどね。でも皆平等に発表する場を与えてもアイリが聖女に選ばれると思うかい?」

「はい、必ず。それにしても兄様は察しがいいです」

 兄様は、頭が良い。
 シスコンだけが玉に瑕。
 私は詳しい計画を兄様に説明する。

「聖女学園で学園祭を開き、騎士学校の生徒を観客にしたい…か」

「はい、兄様の力で騎士学校の校長様とお会いできる様になりませんか?」

「ああ、校長より効果の在る人を知っている。ひょっとしたら会えるかも知れないから今から出かけよう。会えなくても伝言を頼めるからね」

「ええ、是非にお願いします」


ーーーーーーーーーーーーーーー


 私が連れて行かれたのは、トレーニ様が連れて行って下さったあのレストランだった。

「先輩やってますか?」

「ああ、ダンベルか。やってるぞ」

 私は兄様にエスコートされてお店の中に入った。

「お?この間のお嬢さんじゃないか」
 
 マスターさんの驚く声に、『あ、しまった』と思った。
 私とした事が今日はメイドの格好ではなかったのだ。

 兄様にお願い事をするのにあたり、兄様好みの白のブラウスに青系のスカートというお嬢様スタイルで、髪もいつものアップではなく、これまた兄様好みのポニーテールにしていた。
 髪を纏めるのは当然兄様好みのリボンである。

 個人的にはアップの方が活動するのには楽なのですけどね。 
 話を戻すけど、先日トレーニ様の侍女としてマスターさんに接したので、今日兄様と訪れた事で驚かしてしまったのだろう。

「先日はありがとうございました」

「ええと、どういうことだ?」

 前回はリッシルト家の侍女になりすましていたけど、それを押し通すのは苦しい気がする。

「リリーは妹なんですよ。先日トレーニと一緒に来たと聞いていますが」

「ああ、なるほど。噂のユニスリー家のご令嬢様だったのか。先日の事も納得がいった」

 兄様は心配で後をつけていたのでしょう?白々しい。
 あとマスターさんの言う噂がどんなものなのか気になるわ。
 もし、アイリに不利になるような内容なら手を打たないと。

「私、噂になっていますか?教えて頂けませんか?」

 私の言葉に兄様が苦笑した。
 シスコン変態の兄様から見ても私は変わり者って事かしら?

「妹御のお付きのメイドとして聖女学園にやって来た天才で、聖女学園で教師にも授業する美しきご令嬢って話だな」

「え」

 そのエピソードも噂になっているのね。
 確かにあれだけの人数を巻き込んだのだから隠してはおけないだろうけど。

「ここに来る騎士連中もひと目見たいと言っているんだが、ダンベルの壁が高すぎでな」

「当たり前です。リリーに近づきたいなら、僕に勝ってからにしてもらわないと」

「兄様!」

 兄様のシスコンが騎士さん達にバレていないでしょうね。

「いやはや、なる程なる程、先日も思ったがこれは大層美しいお嬢さんだ。トレーニが惚れるのも判る。先日のは買い物以上、デート未満って感じか?」

 あ、マスターさん鋭いわ。
 やっぱりトレーニ様は私に……でも私は……

「考え過ぎかもしれませんが、トレーニ様も兄様も人気の騎士様なので妹にまで飛び火すると困ります」

 兄様の人気を利用しているとは本人が目の前にいるので言わないでおこう。
 兄様を図に乗らせてしまう。

「まぁ、そうだな。でも兄妹そろって見目麗しいのは羨ましいことだが、似てはいないんだな。特にお嬢さんの髪の色はこの国では珍しい」

「言われてみれば、そうでですね。ずっと当たり前に過ごしていたので気づかなかった」

 マスターの言葉に対する兄様の言葉同様、私も今まで不思議なくらい何の疑問も持たなかった。
 その点を指摘された事が只の一度も無かったから。
 言われてみれば、家族の中で私だけが髪の色が違った。
 アイリと父様は明るい茶色で、兄様と母様はブロンド、私だけが銀色だった。
 顔も父様や母様とも違う系統の気がする。

「いや、ちょっと思ったことを言っただけだ。あまり深刻にならないでくれ。今日は俺に何か用があって来たんだろう?」
 
「ええ、そうでした。先輩、今日は殿下は?」

「お前だから言うが、今日はもう帰られたよ」

「そうですか、一足遅かったとは。先輩、伝言を頼まれて頂けませんか?」

 兄様がマスターさんに頼み事をしている。
 あの言葉以降、私は頭が働かなくなってしまい……
 気がつけば馬車の中にいた。

「リリー?」

「あ、兄様ゴメンなさい」

「今日はもう寮まで送って行こう。深刻になってはいけないよ。
リリーは間違いなくユニスリー家令嬢リリエナスタ、僕の妹で間違いないんだ」

「兄様ありがとう」

 どうしてしまったのだろう?
 私は気がつけば自ら兄様に身をよせ、その胸に顔を埋めてしまった。
 兄様は抱きしめるでもなく、優しく手を回し、ただただ頭を撫でてくれた。
 
「騎士学校の件は全て僕に任せてくれ。必ずいい連絡を持っていくよ」

「はい、ダン兄様……」

 兄様の優しい言葉に私は甘えた返事を返すことしか出来なかった。


===============


(天使たちの会話)

「しまったッス。あのレストランのマスターに力を使うのを忘れてたッス」

「ミッチェル様、今までリリーに接する人に認識操作してたんですか?」

「どういうことです。先輩?」

「聞いたとおりっすよ。周りがリリーの容姿に疑問を持たないようにしてたっス」

「それってやっぱり」

「まぁ、神様には話してもいいと言われているッスからね。いい機会なので話しておくっす」

 天使たちはリリーがダンベルに優しく頭を撫でられているのでリリーから離れていた。
 ミッチェルはルコーとキャペンに事情を簡単に説明した。


「……という訳ッス。リリーに気づかれたのと思うスッけど、どうするべきッスかね?」

「どうもこうもないんじゃ?」

「何か問題あります?」

「うーん、無いッスね。彼女自身の問題っス」

「居心地悪くならなきゃいいじゃない?」

「そうそう」

「きっとリリーならこれしきの事、乗り越えるッスよね」

 天使たち脳天気なのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

処理中です...