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氷室の怒り

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さて、それじゃあ裏切り者の転生者を探しに行きますか。

とりあえず、狼少年から大体の居場所は聞いている。狼少年のあべこべ言語を訳してみるとなんでも、いろいろな魔法を使いながら灰色の兵士達を倒しまくっているらしい。

「味方だよね?どうして・・・」

「んー兵士達にスキルをあげてるみたいだよ。」

と、言うことは、木崎悠馬は灰色の兵士達からもスキルを奪っているのか。それって結構やばくない?

灰色の兵士達って今は罠にはめたりして倒しているから余り実感湧いてないけど、この世界での昔の英雄達でしょ?そんな人たちからスキルを奪っていると言うことは・・・

はやく木崎悠馬を止めないと、とんでもないことになる!

「はやくその人の所に案内して!急がないと大変なことになる!」

私の懇願に対して狼少年はにっこりと笑い

「いやだ」

快諾してくれた

・・・・・

・・・

うっそうとした森の中を進む私たち4人。そしてライド。砂原と一樹は罠を仕掛けるために別行動だ。余りたい人選に向いていない2人だけだと不安だから護衛としてヘル・ウルフを3頭ほど付けている。

「本当にこっちで合っているのか?」

「ううん?全然合ってない。むしろ遠ざかっている。」

「ということは合っているんだな。」

氷室と風間は狼少年のあべこべ言語にも、初めは戸惑ったみたいだがすぐに対応している。

道中、時間を潰すために私は氷室にとある質問をした。

「そういえば一つ聞きたいんだけど、なんであなたは敵の私に協力する気になったの?風間は初めから伯爵の陰謀に気がついて私の所にやってきたけど。」

私の質問に対し、氷室は即座にこう答えた。

「お前らのことは何一つ信用していないし、協力する気も無い。ただ、仲間を背中から撃つような裏切り者が許せないだけだ。」

氷室の顔に怒りがにじみ出ている。よほど許せないのだろう。氷室の拳は固く握りしめられていた。

これ以上は聞かない方が良いな。そう思っていたところで風間が“待て”と私たちにハンドサインを送ってくる。

咄嗟に近くにあった茂みに身を隠す私たち。

「前方に灰色の兵士達が30人ほどいる。どうやら森の木々をなぎ倒しているようだ。」

風間の指さす方を見ると、確かに灰色の兵士達が魔法や長大な大剣を使って木々をなぎ倒していた。灰色の兵士達の中にはエルビスの兵士もいる。おそらく、指示を出しているのだろう。

流石にあの人達を相手にしている時間は無い。迂回してどうにか見つからないようにやり過ごすしかない。

そう思った瞬間

一陣の風が吹きぬけた。あまりの風の強さに思わず目を瞑ってしまう。

そして再び目を開けたときには灰色の兵士達は跡形もなく消滅しており、代わりに立っていたのはあの裏切り者の転生者

木崎悠馬であった。
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