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27 初テイムと初進化

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 ストーレの街を南に出た場所、ストーレフィールド05。
 時刻は夕方、17時を周ったところだ。
 モグラとマッスル☆タケダに別れを告げて、オオカナヘビをテイムする為にここへやって来た。

 メンバーは俺の相棒(パートナー)であるタマに、ミルキーも一緒に居る。
 テイムというものを見てみたいそうだ。
 その手にはオオカナヘビの皮手袋が装備されている。
 喜んでもらえて良かった。

 相変わらずこのエリアに通うプレイヤーの数は多い。
 モグラが言うには、他の街にもプレイヤーは振り分けられているが、どこもこんな感じらしい。
 この世界の時間は24倍の速さで流れてるんだから、もっとばらけても良いと思うんだけど。
 まぁその内新規プレイヤーの追加も止まって落ち着くだろう。

 さて、今日の獲物はオオカナヘビだ。
 テイムしに来たんだから他のモンスターには目もくれない。
 急がないと夜になって、オオカナヘビがいなくなってしまうしな。
 夜行性な気がするんだけど、この世界ではそうではないようだ。

 というわけで移動を開始する。
 せっかく走れるようになったしと、軽く走ってみた。
 タマは嬉しそうに隣を走る。タマにとっては歩くようなものだろうに。
 後ろを向くとミルキーが遙か彼方にいた。
 ついはしゃぎすぎてしまったらしい。

 大人しく歩いて捜索を続ける。
 新規プレイヤーがいっぱいいてもオオカナヘビは余ってるはずだ。
 始めたばかりで戦うには、かなりの強敵だからな。
 死んだら終わりのこの世界でよく分からない状態のまま、大きなトカゲみたいなモンスターに攻撃するのは中々出来ない。

 しばらく歩いて、呑気に草むらに潜むオオカナヘビを発見した。
 コインの使い方は簡単だ。
 ストレージから出してオオカナヘビの鼻先に差し出す。

 オオカナヘビがこっちに興味を示した。
 頭を持ち上げてコインの匂いを嗅ぐ。
 少しの間の後、コインをぱっくりと咥えてそのまま呑み込んだ。

「キュルッ」

 短く鳴いたかと思うとオオカナヘビの身体が光った。
 その光が収束するように縮んでいくと、コインだけが残されていた。

≪コイン:オオカナヘビ+≫
契約アイテム
魔力の封じられたコイン。
オオカナヘビが描かれている。
モンスターと契約を結んだ証。
オオカナヘビ召喚可能。

 アイテムを拾って説明文を読んでみるに、契約は無事成功したらしい。

「テイム出来たんですか?」
「みたいですね」
「やったー! タマのペット!」

 早速召喚してみるか。
 使うと念じてコインを地面に放る。
 地面に当たる瞬間に光が弾けてオオカナヘビが現れた。

「おいでーおいでー!」
「キュル」

 タマがしゃがんで手を広げると、オオカナヘビは身体を左右に揺らして近寄って行った。
 最初からある程度いうことを聞くらしい。

「よーしよしよしよし」
「こうして見ると可愛い顔してますね」

 タマは怒涛の可愛がりを見せている。
 ミルキーも眺めながら、恐る恐る背中を触ってみたりしている。
 確かになんか愛くるしい感じの顔だ。

 さて、ここで悩むことがある。
 もう一枚のコインだ。

 ここから更に南に行ったエリアの、場違いなモンスター。
 偶然解き放ったタマが遭遇して短時間で討伐して、ドロップしていたらしいこのアイテム。
 装備に使っても十分強いと思われる効果だ。
 魔法耐性50%っていうのは魔法のダメージは半分になるし、状態異常にもかかる確率が半減するってことらしい。
 売ったら高いのでは?

 ぐぬぬ。
 このゲームは相棒システムの影響か、育成関係に意味が分からないレベルで力が入っていて、テイムしたモンスターもそれなりにいじれるらしい。
 戦力って意味ではタマがいれば足りてるんだが……。

 よし。もうタマに聞こう。
 拾ったのがタマなら倒したのもタマだ。
 権利も判断も全部タマに丸投げしてしまえ。
 責任だけは俺が持つから。

「タマ、この子がもっと強くなるって言ったらどう思う?」
「タマ超強いけど、おろし金も強くなると嬉しい! 一緒に戦ってモジャを守る!」
「そうかそうか、分かった。ありがとうな」
「へへ~」

 タマの頭を撫でる。
 よし、決まった。合成するぞ。
 ちなみに、おろし金とはこのオオカナヘビの名前だ。鱗を逆に撫でるとすごく逆立ってすごくザラザラするからそう名付けたらしい。

「一旦コインに戻すぞ」
「はーい」

 戻れ、と念じるとおろし金はコインになって俺の手の中に納まった。
 これに、武者クワガタのコインを合成する。
 近づけると、まるで液体のようにピタッとくっついた。
 更に押し込むとどんどん一つになっていく。

 そして一枚のコインが出来上がった。

≪コイン:鎧カナヘビ+≫
契約アイテム
魔力の封じられたコイン。
鎧カナヘビが描かれている。
モンスターと契約を結んだ証。
鎧カナヘビ召喚可能。

 早速召喚してみた。
 登場時のエフェクトに大きな差は無かった。
 ただ、その姿は一目で分かる程変化していた。

 大きさ自体が全長2m程に。
 スマートな体型は変わらないが、身体全体がゴツゴツトゲトゲしている。
 その名の通りまるで鎧を着ているみたいだ。
 おろし金感も増している。
 野菜どころかモンスターですら簡単に卸せそうだ

「おー! かっこいーぞおろし金ー!」
「キュル」

 触ってみると結構固い。
 半分凶器だな。

「ナガマサさん、これって……」
「あー、実はですね」

 ミルキーに説明する。
 武者クワガタいた。
 タマ倒した。
 コイン落ちた。
 使った。
 おろし金進化。
 以上。

「やっぱりとんでもないですね」

 何度目かの呆れ、そして苦笑。
 ほんとタマはとんでもないやつだな!

 こうして新しい仲間が加わった。

 そういえば結局試せてないスキルがある。
 夜にでも試してみるか。
 このMAPなら危険もないだろう。

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