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境目の水
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ここではたくさんの人間が働いている。多くの職場でロボットが主力となるなかで、水族館は別だ。何せ彼らは未だに水には馴染まない。朝一番、アロワナに餌をやるのはボクの仕事だ。
「お前と同じように泳げたらな」
背中のほうから拗ねた声がした。事務室を一手に取り仕切る、彼もロボットなのだった。
「湿度が高いだけで頭が痛いなんていうくせに」
ボクは濡れないよう慎重に水槽の縁から下り、彼の胸に頬を寄せた。鼓動は全く感じないし、体温もない。けれども皮膚は人間のものと遜色ない。
「これが水の冷たさ。魚の匂い。お裾分け」
「わかんねえよ」
彼はとても人間らしく、悔しそうに眉を顰める。
「お前と同じように、なりたいのに」
おぞましいほど無駄のない腕がボクを抱きしめる。まるでそれがプログラムされていないことであるかのような、ぎこちない動きだった。
(了)101230
「お前と同じように泳げたらな」
背中のほうから拗ねた声がした。事務室を一手に取り仕切る、彼もロボットなのだった。
「湿度が高いだけで頭が痛いなんていうくせに」
ボクは濡れないよう慎重に水槽の縁から下り、彼の胸に頬を寄せた。鼓動は全く感じないし、体温もない。けれども皮膚は人間のものと遜色ない。
「これが水の冷たさ。魚の匂い。お裾分け」
「わかんねえよ」
彼はとても人間らしく、悔しそうに眉を顰める。
「お前と同じように、なりたいのに」
おぞましいほど無駄のない腕がボクを抱きしめる。まるでそれがプログラムされていないことであるかのような、ぎこちない動きだった。
(了)101230
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