モブですけど!

ビーバー父さん

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  悪意以外の何物でもない気がする。
 兄上たちは、未だに僕を虐めないと気が済まないんだ。

「王弟のバカ息子どもか。
 領地を持たない辺境伯と言う外交だけの爵位になってもまだ、その影を落とそうと言うのか」

「旦那様、ドアイスでのラグ様の社交界デビューもこのままだと何かがありますね」

 セバスチャンが、今までの事を鑑みてその言葉を出した。
 子供のころ、お母様は毒殺され、僕も何度も殺されかけたって言ってた。

「ですが、サリエル殿は何故ラグを拉致したのですか?」

「あの、その、ゲオルグが冒険者だった時、ドラゴンから守ってくれて専属の従者にしようとしたのを断られたんです。
 そして婚約者の話しを聞いてガームへ行ったら、結婚? したのが女性でした。
 いや、いや、あの、!! 結婚じゃなかったのは知ってました!
 はい! 嘘と言うかその時いらしてたほかの貴族たちが誤解して、婚姻をしたと言うのをそのままにして、噂をいち早く流しました。
 私たち獣人は、従魔を使役して情報を売るのが生業です。
 この噂を逆手にとって、ゲオルグを我が足元へ繋ぎたいと……、ですからラグノーツ様を盾に取ればゲオルグがきっと……」

 あ、バカなんだ、こいつ。

「サリエルがドラゴンに襲われていたのは、無理やり従魔にしようとして失敗したからだろう!!
 行きがかり上仕方なく助けただけだ」

 ゲオルグがドラゴンを倒したって、あれか。

「ドラゴン、ではなかったようですよ?」

 アシッドがゲオルグの武勇伝を潰すために、口を挟んでフフンと笑って見せた。

「え? あれはドラゴンだろう!
 いくら何でも失礼じゃないか!」

 サリエルが声を荒げて、訂正を求めたがアシッドがアモを呼び、その姿を見せた。
 聖獣ミワの本当のサイズとほぼ変わらない体積で、いや体躯としてはアモの方がずっと高かった。
 
 そりゃね、四つ足か後ろ足で座ってるかの違いだけどさ。

「これがドラゴンです。
 しかも、下っ端の」

 下っ端言われてますよ。

「マスター、私もドラゴンになった方が良いですか?」

「エリ、は良いよ。
 そのままでね」

 エリも出したら、それこそ大騒ぎだ。
 あ、既にこれで大騒ぎだな。

「下っ端、ですか?
 これで?」

 アモは下っ端だよなぁ。
 エリと違ってアースドラゴンだとかでもないし。
 ニーズヘッグの役割もなくなってるし、そう言われるとさすがにちょっとだけ可哀そうになった。

「あ、あ、あぁ、確かに、あれはドラゴンではなかった、な。
 こんなに従魔を従えているとは!」

「何度も言いますけど、従魔でもなんでもないです。
 この子たちの意思でいてくれてるだけなんですから」

 サリエルは自分の自己顕示欲のために、ゲオルグを従者にしたかったけど、断られていたからギルドで情報を売り買いして網を張っていたって事だったようだ。
 その一環で僕との婚約や、ドアイスへの帰国を知りガームでの領地譲渡を結婚にすり替えて情報を流してまでゲオルグを手に入れようとしたって事か。

「ラグ、私はちゃんと決着をつけて帰ってきた。
 お前の船を追いかけて、ここに停泊してる情報を貰ったから、ギルドが使える転移魔法を使って来たら、こんな状態でサリエルは殺しても構わないと思っている」

 ちょっと、僕のせいなの?

「で、ちょっとした催しって何ですかね?」

「あ、その、ゲオルグに、従者の誓いをしてもらいたくて、ラグノーツ様を渡す代わりにと」

「はぁ? はぁぁあ?!!」

 これは全員から上がった。

 周りにいる護衛騎士たちも、あの女性騎士もさすがに呆れていた。
 顔半分豹紋のあの悪い感じの人も、頭を抱えていた。

「殿下、まさかそれが目的だったのですか?
 てっきり、ロッシを傘下にしたいというお話しだと伺っていましたのに」

 ナントカ大臣らしいこの豹紋男が、サリエルに騙されてパパを軟禁状態したと言う事だった。
 情報を生業にする国、それはロッシが一番の敵だろう。

 ただ、ロッシはオールラウンドなんだよなぁ。
 暗部というか、なんでも出来る人材が集まってるし、獣人のように従魔はそんなに多くないけど、セバスチャンのお兄さんが犬憑きで獣化してるから、そういった情報を運ぶとかなら従魔じゃなくても出来てるんではないだろうか?
 そうなると、獣人ってあんまり良いところないね?
 なくても困らないし。

「やっぱり、この国要らないんじゃないかな?」

「ラグ様、激しく同意です」

 セバスチャンも、アシッドも簡単に同意してるけど……。

「私もだ! 私のナッツを食べる価値のない国だ! 返せ! 私のナッツ!!」

 緑頭はどうしてこういう時に出てくるかな?
 しかもおやつかよ!!

 護衛騎士も呆れてるし、豹紋の男を見るとやれやれと言った顔で、一応これでも王太子殿下なので許してやってもらえませんか? と言って来た。
 嫌って言ったら仕方ありませんねぇ、で同意してきそうなくらい、どうでもいい感とバカだなって気持ちで疲れていたようだった。

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