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しおりを挟む緑頭を馬車に乗せ、セバスチャンとアシッドが同じ車内に乗り込んで面倒を見る事にした。
「もう天気が大分ヤバい!
ラグ! 頼む!」
森を抜ける途中で洞穴に寄ってしまったから、雨雲が僕たちに追いついてしまっていた。
ポツポツと降り始めた雨粒は、大分大きい。
「すぐに豪雨になる!
皆、足元に注意しながら急いで進むぞ!」
ヒューゴの号令と共に隊列を組み直した護衛達が、大分強くなった雨の中静かに進行を待っていた。
「エリ、行こう。
パパはヒューゴから離れないで、セバス! アシッドと共に緑頭と赤ん坊の護衛を!
アモは今まで通りこの地全体の索敵を!
ミワ! 今度は一緒に来て!」
「はっ!!!」
全員の声が揃った返事だった。
勢いよく飛び出した僕たちは木々が道を開き、大地を均し隊列が通り過ぎた後を感じ取りながら元の状態に戻すを繰り返した。
すぐに豪雨になり進む眼前に石礫の様に当たると、風圧も有って防水用に羽織っているローブが傷んでいった。
「エリ、この森あとどのくらい?
後ろの方で、騎士たちは大丈夫だろうけど、船員たちは」
「マスター、船乗りたちの方が悪天候には慣れてます。
彼らはもっとひどい状況で航海をし、時には自然と天候、そして魔物たちと戦うんです。
だから、護衛騎士たちの方が未熟です」
エリが冷静な分析をした回答を告げた。
「あ、そうか、そうだよね。
船って、海ってそうだった」
今更だけど、僕は蒼月の力があるからって、傲慢な考えを持っていた事に気づかされた。
なんでも魔法で解決できないって事を、こんな時に気づかされた。
「ラグ様、魔獣がいます。
先に始末してきますので」
今まで出くわさなかったのに、この豪雨の中で魔獣がいるらしい。
ミワはこの豪雨でも鼻が利くからと、魔獣を狩りに行ってしまった。
「魔獣って食べられるやつだったらいいね!」
久しぶりにいい食材が手に入るといいなぁ。
「マスターの料理に話を皆から聞かされてますが、私は食べた事がないので、ぜひ味わってみたいです」
ユグドラシルの一件から次から次へと問題勃発で、料理をしてなかったなぁ。
そう思ったら急にえびぷりシュウマイが食べたくなった。
森の中だし、魚介は手に入らないだろうしなぁ。
ミワが捕って来た魔獣によって考えようっと。
凄いスピードで走り抜けていったミワが、またすごいスピードで戻って来た。
一瞬とは言わないけど、あっという間に討伐したらしい。
「ラグ様、仕留めて来ました。
この先にコカトリスの変種が群れでおりましたので、軽く血抜きをしておきました。
着く頃には血抜きも終わってると思いますので、ちょうど良いかと」
「凄いね、木か何かに吊り下げて来たの?」
「いえ、血を好んで食す魔獣がいましたので、その者らに血抜きをさせております」
「それって吸血鬼じゃん!!」
「きゅう、けつき?」
ミワもエリも?ってしてた。
こっちでは吸血鬼とかコウモリとか、そんなのはないか。
似てるけどって言うのは沢山あるけど、コウモリみたいなのは魔獣にもいないしなぁ。
「えっと、その血を食料にする魔獣って、どんなの?」
「顔が長くて、舌も細く長い形状で血をすいとるのに適していますが、動きが異様に遅く殆ど姿を見せない魔獣です」
ん? 脳裏にはアリクイとかナマケモノを想像して、ちょっと可愛いじゃんなんて思っていた。
「人に危害は加えないの?」
「血を好みますが、動きが遅いため、主に死骸を処理する魔獣です。
血が無くなって、干からびた死骸は霧散しますので、掃除屋という異名もあります」
想像が、想像を呼んでちょっとグロテスクな動物になって来た。
「あ、あそこですよ」
ミワが鼻先を向けるとまさにアリクイが!
しかも、めっっちゃちっさいアリクイが何匹も!
手のひらサイズのアリクイ!
近づくと、確かにゆっくりとした動きでこちらを見た。
「可愛いって感じの魔獣だね」
「えぇ、ですが掃除屋ですからね。
血を抜くだけの場合と攻撃対象となれば、その細い舌から肉を溶かす液体を出します。
しかも凄いスピードですから、穴が開きますね」
ミワがサラッと怖い事を教えてくれた。
「見た目では分からないものだね」
血を吸っていたアリクイモドキは僕たちが来たことでその場から離れようとしたものの、動きがのろすぎて一緒にコカトリスの変種を眺める事になった。
「この豪雨でも上手に血抜きしてるねぇ。
この子達、どのくらいあればご飯としてたりるのかな?」
全部で数十体のコカトリス変種を全部回収するのは忍びなくて、ミワに聞いたら血だけを食べるからいらないと言われた。
「既に血は抜かれていますから、全て回収しましょう」
「エリもインベントリを使えるの?」
「私は土の中に入れて、地脈で取り寄せる感じですね」
インベントリとは少し違った。
土倉を作ってる感じなのかな。
「ですが、この雨では……」
「うん、僕がインベントリを使って回収するよ」
回収するときに羽根とか部位に分けて収納した。
すぐ調理できるように。
「さぁ、後ろの連中が来るから急ごう」
土石流が起きないとも限らない。
この豪雨の森を早く抜ける事に手中した。
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