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魔法伯爵
しおりを挟む病院の会議室みたいな場所を提供してもらって、両親と僕、医者と室長、そして次席が座り他の人は魔法で結界を張っていた。
「情報漏洩するわけには行かないので、煩わしいかもしれないが我慢して欲しい。
事は急を要する事案だ。
さて、シアン君のご両親も驚かれてるとは思うが、今回彼の妊娠と魔力量の件で来ていただいた」
ギルバルディが口を開くと、その内容に一番の驚きを見せたのは母だった。
「シアンが妊娠って……、体は大丈夫なの?」
隣で僕の手を握り、先生の方をしっかりと見据えた。
「シアン君の状態はまだ妊娠初期段階で安定期とは言えません。
そして先ほど魔力停滞の治療をして魔力量を計測したところ、金色でした。
ご両親ならば、この重大さをご理解いただけるかと」
「まさか、シアンが、そんな」
金色の意味がそこまで両親を蒼白にさせるとは思っていなかった。
心のどこかで、異世界転生チート! とかって喜んでいた部分もあったから。
でも妊娠は想像もしていなかった。
「シアンは産みたい?」
「僕だけの子供だけど」
「相手はベオク?」
父が名前を上げた。
「誰でもないよ、僕の子供だから」
もう別れを告げられた相手を待つことは出来ない。
「今の彼の職場から魔法管理部への配属を提案し、帝国の特別爵位を授かることになります。
ご両親は彼と同じ邸宅に住み、仕事をする事も出来ます。
爵位を授かることで家名が変わります。
そしてシアン君の事情を考えれば、名前も変えるべきでしょう」
「私達が一緒だとシアンを隠し切れないでしょう」
父は一緒にいてはいけないと告げた。
「体の事もだけど、男性の出産は魔法で守られないと難しいからね」
確かに、男の体のどこに子供を育てて産むなんて事が出来るんだって思った。
お腹にとどめておけるスペースなんてないじゃないかって。
「これから、お腹が大きくなる度に、魔力で体に空間を作って貰ったりして、育てていくの。
産むときなんかは命がけだから、治癒魔法が使える先生がいないとね」
「そうなの?」
想像すると怖くなった。
「何よりも君の魔力の公表は帝国を揺るがすほどだと言う事を理解して欲しい」
最初から僕の選択肢は、一つしか用意されて無かった。
ギルバルディは迅速かつ秘密裏に行動した。
そしてそれを実行した魔法管理部の凄さを思い知った。
話し合いから二日後には、帝国の太陽である皇帝と謁見する段取りになっていた。
しかも既に邸宅に移らされ、あれよあれよという間に魔法管理部の人達と同じような白い軍服を着させられて、謁見の間で跪いていた。
「この帝国に金色の魔法使いが誕生したことを非常に嬉しく思うとともに、その功績を称え報奨として特別爵位である魔法伯爵を与え、その名をエルモア・ド・ラキューと名乗るが良い」
「有難く承ります」
それだけ返して頭を深々と下げていると、顔を上げるように言われ始めて皇帝を見た。
王の貫禄と言うか威圧と言うか四十代前半と言った精悍な皇帝がゆっくりと笑いこちらを見据えていた。
こんな雑魚キャラの僕では太刀打ちどころか、流されて終わる未来しか見えなかった。
大体、魔法の使い方も知らないのに、ここまで持ち上げられる事にプレッシャーしか感じなかった。
「陛下、畏れながら発言をお許しください。
ラキュー魔法伯爵は現在妊娠中の為、秘匿事項として魔法管理部が保護いたします」
ギルバルディが皇帝に僕の妊娠を告げた。
「なんと、それは喜ばしい!
相手は誰なんだ?」
「畏れながら、私だけの子です。
相手はおりません」
その場にいた宰相や、立ち合い役の高位の祭司がざわついたけど、それを無視して自分だけの子だと押し通した。
「では、時期を見てラキュー殿には皇室と繋がりを持ってもらおう」
皇帝の一言は想像を逸していた。
「それは、一体……」
「悪い様にはせぬ。
金色の魔法使いを無理矢理どうこうするつもりは無い。
だが、他国に行かれては困る。
この意味は分かっておるな」
そりゃ特別爵位まで与えて貰っておいて、帝国を裏切るような事をする気は無いけど。
「私で出来る事ならば」
「うむ、それでよい。
さぁ、体に障るといかん。
後はローカン殿、任せたぞ
さて、このことを踏まえ箝口令を敷く、皆の者良いな?」
緊張しかなかった爵位授与が、箝口令を皇名で出され取り敢えず終了した。
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