その執着は今更です。

ビーバー父さん

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お祭りの雰囲気

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 クイニーアマンで手に入れた服一式は、鑑定してみると神の庇護欲という訳の分からんステータスになっていた。

 もうこれ、ラノベの内容じゃないよ。



「ありがとうございます。
 大事に着ますね」

「こちらこそ、本当に助かったよ。
 良ければまた手伝ってくれると嬉しい」

「手が空いてる時に、また、来ますね」

 本当は余り関わらない方が良いと、この服のステータスが暗示していた。



 夕方近くになると、お祭りの雰囲気も本格的になって、屋台やら広場で踊りやらが始まっていた。
 街の人の笑顔につられて、見ているだけで自分でも分かるくらい笑みが零れた。
 大道芸人の人が、火を噴いてみたり、テイマーした動物が一生懸命芸をして見せたりと、お金を掛けなくても楽しむ事が出来た。

「こんな風に楽しんだのっていつ振りだろう?」

 田舎の孤児院を出て街で働くようになってからあまり良い事は無かった。
 稼ぎの悪い仕事しかなかったけど、それなりに食べて行ってた。
 思いがけずマカロン商会で働くようになると、良かれと思って言った言葉から養子の話が出て、これから幸せになれるかもと思っていたけど、実際、マカロンの屋敷では実子の娘が僕を疎ましく思っていた事で、公爵邸でされたような虐待が始まった。
 マカロンからは仕事で詰め寄られ、娘からは孤児の僕が養子になったのが面白くない、ほぼ毎日鞭で打たれていた。
 それまでは前世の記憶も何もなかったけど、こんな鑑定スキルはありふれたものだと思っていた。
 
 そんな時、評判を聞いた王太子殿下が婚約者の令嬢に贈る品を選びに来て、僕のスキルを知ることになった。
 鑑定もそれなりにレアスキルだったけど、『真実の目』はその中でもSランクだと王弟殿下に教えられ、それをマカロンに聞くと死ぬほど殴られた。

 殴られて死にそうになって前世の記憶が蘇ると、この世界がラノベの中の世界の様な気がし始めた。
 でも、僕の配役は無かったはずなんだ。
 こんなスキル設定も無かったし。
 王室に知られることで、僕は公爵と政略結婚をして生活が変わると期待したんだ。
 マカロンから言われた事は、「平民の孤児上がりのお前と結婚しなくてはいけないと、非常に苦慮されている。 だから、目立たず余計な事をせずひっそりと生きていろ」と。
 それでもここよりマシだと思っていた。
 婚姻の契約を交わしたその場で、「結婚なぞする気はなかったのに、マカロンのせいで陛下迄が動くことになって、本当に迷惑だ」当然と言えば当然だと思い、吐き出す毒の様な言葉を受け入れた。
 居室は狭い離れだったけど、僕にとっては十分な広さだったし、侍女なんかいなくても自分の事は自分で出来た。
 ただ、食事だけは辛かった。
 マカロンの所より、正直酷かった。
 食事を抜かれることはあったけど、食べ残しや残飯と言うのは無かった。
 使用人達からの嫌がらせ、無視なんてどうでも良かった。
 ただ、殴られたり痛い思いをしなくて済む、ただそれだけが公爵家の美点だった。

 今は自分の力だけで生きていける事が、幸せだと感じていた。

 ギルドで紹介してもらった宿は、他の冒険者たちもいたけど、それよりも観光で訪れた人達で賑わっていた。

「あの、ギルドから紹介してもらったのですが」

「あぁ、聞いてるよ!
 運が良いね! 最後の一部屋だったよ! 三階の階段上がって右側一番奥の角部屋だよ」

 食事処で給仕をしながら女将さんらしき人が、笑いながら鍵を渡してくれた。

「食事はどうする? ここで食べるかい? それとも部屋に持って行くかい?」

「では部屋でお願いしたいので、出来たら教えて下さい」

「いいよいいよ、持って行ってあげるからちょっと待ってな」

 気の良い返事が返って来て、それまでの暗い気持ちがどこかへ飛んでいくようだった。









 王城の居室は子供の頃から変わらずだった。

「ローレンツォに優しくしたい、私は大きな間違いをしていたんだ」

 ベッドで寝転がっていたら、壁の隠し戸が動く気配がした。

「誰だ!」
「お願い!! 私をちゃんと見て! 私なら貴方を救ってあげられるわ!」

 ピンクの髪のあの女が、王族の隠し通路を使って入って来た。

「やめろ! 貴様は牢獄へ送ったはずだ!」

「んもう、何でよ、なんでこの魔具効かないのよ!!」

「誰か! 衛兵!!」

 私の怒号を聞きつけて、衛兵がなだれ込んでくると、ピンクの髪の女はまたしても捕えれて引き摺られるように出て行った。

 その女が出て行った後に、さっき魔具だと言っていたブレスレットの様な物が落ちていた。
 拾い上げると勝手に手首に絡みつき、昔から私の物だったようにしっくりと馴染んだ。

「私の愛を待ってるローレンツォがいるんだ。
 早く迎えに行かねば……」
 
 そのブレスレットは、私が望む愛を求めろと言っていた。
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