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同じ轍は踏まない

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 何でこんなに必死なのか分からなくも無いけど。
 毛生え薬はまず鑑定を始めて、それから錬金と当たり前な流れで作っていった。
 改めて気づいたけど、錬金しながら鑑定を使うと、何を合わせたらどんな物が出来るか教えてくれた。

「ん、ん、これだと、髪色を変えるのが出来ちゃうのか……」

 自然に任せるしかないんじゃないだろうか。
 トリートメントの様な物は山ほど作れた。

「頭皮を綺麗にして、毛を育成して、」

 魔法がある世界って良いなぁ。
 思いつくまま、色々なポーションを作ると、何となく成功してしまった気がした。

 実は、依頼を受けてから出来上がるまでに要した時間は、一時間ほどで大した時間はかからなかったし、素材は食材で賄えた。

 やっぱり海藻って大事だな。

 普段からの食生活に海藻を摂れば大分違うんじゃないか、と思うけど、食べる習慣はなさそうだった。

「これで、解放してもらえるかな」

 上の階へあがり、ギルド長たちに出来たことを伝えようとした時に、彼らの話し声が聞こえてしまった。

「あの子、他のギルドに取られたくないな。
 この傷薬だけでも、凄い価値だ」

「ええ、咄嗟に買取金額を相場よりは少し高くして正解でした。
 疑われる事もなかったし、うちで独占販売できるように、うまく会話に契約魔法を混ぜてしまえばわかりませんよ」

 ここでもか。
 やっぱり、利用することしか考えていなかった。
 急いで作業室に戻ると、出来ていたポーションを隠して、なかなか出来ない風を装い兼ねてから作ろうと思っていたインベントリが付与されたカバンを作った。
 当然全ての素材はギルド持ちだから、付与もこれでもかってくらい、片っ端から付けさせて貰った。

 おかげで僕のズダ袋は火でも燃えず、水にも濡れず、中の物も入れた状態、もしくは自動で解体腑分け、素材採取、そして僕以外がさわればただのズダ袋。
 万が一盗まれても持ち主の僕の元へと戻ってくると言う優れ物だった。
 当然、収納量はドームひとつ分くらいにした。
 将来、家を持ち歩くかもしれないし。

 そんな事をして、高級素材を使い尽くした頃、ギルド長が痺れを切らして、薬はまだかと押しかけてきた。

 依頼を受けてからまだ三日しか経っていなかった。

 僕は態とらしく、改良に改良を重ね、できあがりました、とどこかの通販番組ばりに出して渡した。

「ただ、まだ実験段階で、試していないんです。
 ですから、僕が試しに」
「いや、君の事は信じているから、私が試すよ」

 ギルド長が僕の手からビンを取り上げると、一気にあおった。

「うぐ、ぅ」
 
「すみません! 味の調節まではまだで」
「だい、大丈夫だ、ぅうえ」

 口元を押さえて吐きそうになるのを一生懸命我慢していた。
 
 不味くて当たり前。
 そうなる様に作ったんだから。

 そして数秒もすると、寂しげだった頭頂部はフサフサになって、ツヤツヤな髪が現れた。

「これだ、この髪だ!」

「私も!」

 受付のお兄さんも一気飲みした。
 そして吐きそうになりながら我慢すると、同じような状態になった。

「うおー!」

 金儲けの前に切実だったのは本当みたいだった。

 そしてその薬を全部自分達の物とする言葉と、ギルドでしかこの薬は販売できない様にする、この実験を外部に漏らさない、それに僕からも一言加えさせてもらい、結果は全てギルド長のものだと言う言葉を使わせてもらい、契約魔法を結ばれた。

「では、今日は帰ってゆっくりしてくれたまえ」

「ありがとうございます。
 ああ、そうだ、先程の契約魔法ですが、実験段階で結んで頂いてありがとうございました」

 聞こえるか聞こえないかの声で、お大事にと呟いてギルドを後にした。
 そして当然、その足で宿屋の女将さんに別れを告げ、お礼に美肌と痩身になるポーションをあげて、急いで旅仕様の道具を揃えてから街を出た。

 その翌日には、ギルドの人達全員の髪が全て抜け落ちたと言う事を風の便りに聞くことになった。









「陛下、モンブラン公爵の様子がおかしいようです!」

 ピンクの髪の女を拘束した衛兵が、執務室に駆け込んできた。

「この者が現れてから、執拗にローレンツォ様の行方を知りたがり、先程は裏門から隣町へ行くと出て行かれました!」

「なんと!
 直ぐに誰かに追わせて連れ戻すのだ!
 そこの女、公爵に何をした!?」

「私は何もしておりませんわ!
 ただ、愛してあげたかった、それだけでございます!」

 目を潤ませ、乳牛の様な胸を強調する痴れ者を何故こうも放置しているのか。

「女は拘束ののち、聖女を謀った罪により体の一部を切り落としてから捨て置け!」

 それを聞いた女は突然態度を変えた。

「私は聖女でもおかしくないスキルを持ってるの! 何なの?
 ヒロインなのにこんな扱いおかしいわよ!」

 そう言うと、息吹、と呟きスキルを発動させた様だが、特に何も起こらなかった。

「え、ナニコレ」

 こんなはずじゃない、を繰り返していたが、最後は諦めたのか、脱兎の如く逃げ出した。

「息吹は、雪深い所で食糧になる草などを探すためのスキルだが」

「そうですね、聖女ならば生命の祝福ですから」

 そばにいた王弟と、呆気に取られていた。

 


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