その執着は今更です。

ビーバー父さん

文字の大きさ
18 / 62

同じ轍は踏まない

しおりを挟む


 何でこんなに必死なのか分からなくも無いけど。
 毛生え薬はまず鑑定を始めて、それから錬金と当たり前な流れで作っていった。
 改めて気づいたけど、錬金しながら鑑定を使うと、何を合わせたらどんな物が出来るか教えてくれた。

「ん、ん、これだと、髪色を変えるのが出来ちゃうのか……」

 自然に任せるしかないんじゃないだろうか。
 トリートメントの様な物は山ほど作れた。

「頭皮を綺麗にして、毛を育成して、」

 魔法がある世界って良いなぁ。
 思いつくまま、色々なポーションを作ると、何となく成功してしまった気がした。

 実は、依頼を受けてから出来上がるまでに要した時間は、一時間ほどで大した時間はかからなかったし、素材は食材で賄えた。

 やっぱり海藻って大事だな。

 普段からの食生活に海藻を摂れば大分違うんじゃないか、と思うけど、食べる習慣はなさそうだった。

「これで、解放してもらえるかな」

 上の階へあがり、ギルド長たちに出来たことを伝えようとした時に、彼らの話し声が聞こえてしまった。

「あの子、他のギルドに取られたくないな。
 この傷薬だけでも、凄い価値だ」

「ええ、咄嗟に買取金額を相場よりは少し高くして正解でした。
 疑われる事もなかったし、うちで独占販売できるように、うまく会話に契約魔法を混ぜてしまえばわかりませんよ」

 ここでもか。
 やっぱり、利用することしか考えていなかった。
 急いで作業室に戻ると、出来ていたポーションを隠して、なかなか出来ない風を装い兼ねてから作ろうと思っていたインベントリが付与されたカバンを作った。
 当然全ての素材はギルド持ちだから、付与もこれでもかってくらい、片っ端から付けさせて貰った。

 おかげで僕のズダ袋は火でも燃えず、水にも濡れず、中の物も入れた状態、もしくは自動で解体腑分け、素材採取、そして僕以外がさわればただのズダ袋。
 万が一盗まれても持ち主の僕の元へと戻ってくると言う優れ物だった。
 当然、収納量はドームひとつ分くらいにした。
 将来、家を持ち歩くかもしれないし。

 そんな事をして、高級素材を使い尽くした頃、ギルド長が痺れを切らして、薬はまだかと押しかけてきた。

 依頼を受けてからまだ三日しか経っていなかった。

 僕は態とらしく、改良に改良を重ね、できあがりました、とどこかの通販番組ばりに出して渡した。

「ただ、まだ実験段階で、試していないんです。
 ですから、僕が試しに」
「いや、君の事は信じているから、私が試すよ」

 ギルド長が僕の手からビンを取り上げると、一気にあおった。

「うぐ、ぅ」
 
「すみません! 味の調節まではまだで」
「だい、大丈夫だ、ぅうえ」

 口元を押さえて吐きそうになるのを一生懸命我慢していた。
 
 不味くて当たり前。
 そうなる様に作ったんだから。

 そして数秒もすると、寂しげだった頭頂部はフサフサになって、ツヤツヤな髪が現れた。

「これだ、この髪だ!」

「私も!」

 受付のお兄さんも一気飲みした。
 そして吐きそうになりながら我慢すると、同じような状態になった。

「うおー!」

 金儲けの前に切実だったのは本当みたいだった。

 そしてその薬を全部自分達の物とする言葉と、ギルドでしかこの薬は販売できない様にする、この実験を外部に漏らさない、それに僕からも一言加えさせてもらい、結果は全てギルド長のものだと言う言葉を使わせてもらい、契約魔法を結ばれた。

「では、今日は帰ってゆっくりしてくれたまえ」

「ありがとうございます。
 ああ、そうだ、先程の契約魔法ですが、実験段階で結んで頂いてありがとうございました」

 聞こえるか聞こえないかの声で、お大事にと呟いてギルドを後にした。
 そして当然、その足で宿屋の女将さんに別れを告げ、お礼に美肌と痩身になるポーションをあげて、急いで旅仕様の道具を揃えてから街を出た。

 その翌日には、ギルドの人達全員の髪が全て抜け落ちたと言う事を風の便りに聞くことになった。









「陛下、モンブラン公爵の様子がおかしいようです!」

 ピンクの髪の女を拘束した衛兵が、執務室に駆け込んできた。

「この者が現れてから、執拗にローレンツォ様の行方を知りたがり、先程は裏門から隣町へ行くと出て行かれました!」

「なんと!
 直ぐに誰かに追わせて連れ戻すのだ!
 そこの女、公爵に何をした!?」

「私は何もしておりませんわ!
 ただ、愛してあげたかった、それだけでございます!」

 目を潤ませ、乳牛の様な胸を強調する痴れ者を何故こうも放置しているのか。

「女は拘束ののち、聖女を謀った罪により体の一部を切り落としてから捨て置け!」

 それを聞いた女は突然態度を変えた。

「私は聖女でもおかしくないスキルを持ってるの! 何なの?
 ヒロインなのにこんな扱いおかしいわよ!」

 そう言うと、息吹、と呟きスキルを発動させた様だが、特に何も起こらなかった。

「え、ナニコレ」

 こんなはずじゃない、を繰り返していたが、最後は諦めたのか、脱兎の如く逃げ出した。

「息吹は、雪深い所で食糧になる草などを探すためのスキルだが」

「そうですね、聖女ならば生命の祝福ですから」

 そばにいた王弟と、呆気に取られていた。

 


しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

処理中です...