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おばあ様と呼ぶべき
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母さんは死んでない?
だって、気がふれたって……。
「その顔だと、余計な情報だけは入ってるみたいね。
ルドヴィカは行方不明になって、それを何年も探していたわ。
ガレットデロワの情報網を以てしても、見つからなかった。
詳しくは屋敷に戻ってから話します。
さぁ、馬車に乗って」
僕をエスコートするように、軽く背中を支えて促すと、抵抗することもなく馬車へと足を向けた。
「待ってください!
私も!」
「断る」
重厚感と言うより、腹の底から怒りを含ませたような響きで、モンブラン公爵の同行を許さなかった。
「まずは先ぶれを出してから、お越しいただけますか?
こちらの予定が合えば、場を設けましょう」
一瞥もくれずに僕の後から馬車に乗り込むと、すぐさま御者に屋敷へ戻るように告げた。
気まずい空気の中、馬車にしては物凄いスピードで街道を駆け抜けていた。
話しかけるのも何となく気が引けて、もじもじと自分の手を見つめていると、ふいに影が落ちてきた。
「すまなかった」
絞り出すように僕を抱きしめながら呟かれた。
「あ、の」
「ルイが孫だと知っていた。
そして、モンブラン公爵家でひどい扱いを受けているのも」
孤児院に捨てられて、養父からは金の生る木扱いで、公爵家では汚物よりひどいものを食べるような、そんな生活を知っていた?
「……」
なんと答えるのが正解なんだろう。
「知っていて、迎えに行けなかった」
苦渋の選択だったと、そう言いたげだった。
でも、どこか他人ごとになってる僕は、それを聞いても受け入れるには感情が足りていなかった。
「こんな速さなのに、公爵様は全然よろけたりしないのですね」と。
「あ、ああ、ルイ!」
屈強な男も制圧してしまうであろう公爵夫人が、僕を抱きしめながら泣く姿はとても……、そう、とてもおかしかった。
思いつかない会話に、明後日の方向の話をしてしまった為なのか、公爵様は体をかがめて僕を抱きしめながらごめんなさい、と言って号泣していた。
「変ですよ、公爵様。
迎えに来なかったから泣いているのか、哀れな僕を可哀想だと思って泣いてるのか分かりませんが、僕は大丈夫です」
この世界を生きてきて、同情されることもたまにはあるけど、大体はその場限りの話題で終わっていたから、不思議だった。
嫉妬とか嫉み、憎しみと言った感情で動く物語の一部、シナリオなんだと諦めていた部分だったから、それが僕の中での正解だった。
人が目の前で死んでいくなんてことは普通だったし、理不尽な運命のキャラクターとして生きてるんだから、こんな事が起こるのはシナリオだからだと諦めていくしかなかった日々を思い出すと、今更こんな風に泣かれて謝罪をされたからって、許すも許さないも無い感情だった。
「ルイ、迎えに行けなかった理由を」
「そういうのは、いらないです。
だって、理由を聞いてそれを受け入れたら、許さなきゃいけなくなるじゃないですか」
僕は笑っていたと思う。
「っ! そ、うだな。
報告書としてしか知らないお前の生い立ちを考えれば、到底許してもらえることではないな」
「ルイとして生きてまだ数か月ですが、やっと今生きてるんです。
過去がどれほど悲惨だったとしても、僕には過去だし振り返っても何も始まらないんで」
顔には笑顔を張り付けて、ただ淡々と答える言葉は、公爵にとって辛辣なものだったようだ。
でもさ、いろんな虐待やら被害を被った側が気を遣うって、どう考えてもおかしいじゃん。
絶対許さない、とは言わないけど、許されると思う方が間違ってると思うんだよね。
今生きてるから、僕に対して謝るんでしょ?ってそう思っただけだった。
だって、気がふれたって……。
「その顔だと、余計な情報だけは入ってるみたいね。
ルドヴィカは行方不明になって、それを何年も探していたわ。
ガレットデロワの情報網を以てしても、見つからなかった。
詳しくは屋敷に戻ってから話します。
さぁ、馬車に乗って」
僕をエスコートするように、軽く背中を支えて促すと、抵抗することもなく馬車へと足を向けた。
「待ってください!
私も!」
「断る」
重厚感と言うより、腹の底から怒りを含ませたような響きで、モンブラン公爵の同行を許さなかった。
「まずは先ぶれを出してから、お越しいただけますか?
こちらの予定が合えば、場を設けましょう」
一瞥もくれずに僕の後から馬車に乗り込むと、すぐさま御者に屋敷へ戻るように告げた。
気まずい空気の中、馬車にしては物凄いスピードで街道を駆け抜けていた。
話しかけるのも何となく気が引けて、もじもじと自分の手を見つめていると、ふいに影が落ちてきた。
「すまなかった」
絞り出すように僕を抱きしめながら呟かれた。
「あ、の」
「ルイが孫だと知っていた。
そして、モンブラン公爵家でひどい扱いを受けているのも」
孤児院に捨てられて、養父からは金の生る木扱いで、公爵家では汚物よりひどいものを食べるような、そんな生活を知っていた?
「……」
なんと答えるのが正解なんだろう。
「知っていて、迎えに行けなかった」
苦渋の選択だったと、そう言いたげだった。
でも、どこか他人ごとになってる僕は、それを聞いても受け入れるには感情が足りていなかった。
「こんな速さなのに、公爵様は全然よろけたりしないのですね」と。
「あ、ああ、ルイ!」
屈強な男も制圧してしまうであろう公爵夫人が、僕を抱きしめながら泣く姿はとても……、そう、とてもおかしかった。
思いつかない会話に、明後日の方向の話をしてしまった為なのか、公爵様は体をかがめて僕を抱きしめながらごめんなさい、と言って号泣していた。
「変ですよ、公爵様。
迎えに来なかったから泣いているのか、哀れな僕を可哀想だと思って泣いてるのか分かりませんが、僕は大丈夫です」
この世界を生きてきて、同情されることもたまにはあるけど、大体はその場限りの話題で終わっていたから、不思議だった。
嫉妬とか嫉み、憎しみと言った感情で動く物語の一部、シナリオなんだと諦めていた部分だったから、それが僕の中での正解だった。
人が目の前で死んでいくなんてことは普通だったし、理不尽な運命のキャラクターとして生きてるんだから、こんな事が起こるのはシナリオだからだと諦めていくしかなかった日々を思い出すと、今更こんな風に泣かれて謝罪をされたからって、許すも許さないも無い感情だった。
「ルイ、迎えに行けなかった理由を」
「そういうのは、いらないです。
だって、理由を聞いてそれを受け入れたら、許さなきゃいけなくなるじゃないですか」
僕は笑っていたと思う。
「っ! そ、うだな。
報告書としてしか知らないお前の生い立ちを考えれば、到底許してもらえることではないな」
「ルイとして生きてまだ数か月ですが、やっと今生きてるんです。
過去がどれほど悲惨だったとしても、僕には過去だし振り返っても何も始まらないんで」
顔には笑顔を張り付けて、ただ淡々と答える言葉は、公爵にとって辛辣なものだったようだ。
でもさ、いろんな虐待やら被害を被った側が気を遣うって、どう考えてもおかしいじゃん。
絶対許さない、とは言わないけど、許されると思う方が間違ってると思うんだよね。
今生きてるから、僕に対して謝るんでしょ?ってそう思っただけだった。
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