その執着は今更です。

ビーバー父さん

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予期せぬ来訪

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 騒動って続くときは続くもんだ、と感心してしまった。

 頭を突き合わせて話していたところに、衛兵の一人がこちらに来る馬車とモンブラン公爵の帰還を告げてきた。

「う、僕はこのまま」
「待って、ちゃんと縁切ってから行ってよ」

 立ち上がろうとして、腕をつかまれてバランスを崩した。

「もうしっかりと振ってます!」

 片膝をつきながら態勢を立て直しつつ、公爵との関係は何もないことを再度宣言した。

「ほんとね? もう未練もないわよね?」

「最初からありませんって! 大体この屋敷でどれだけ虐待を受けたと思ってるんですか!」

 始まりを話すとき、屋敷での生活はほんの触りていどにして、離婚して出ていくところからを重点的に話したせいなのかまるで僕が未練タラタラみたいなイメージがついてしまったみたいだった。
 こっちが纏わりつかれてるって言ってるんだけどなぁ。
 冒険者の時だって、ほんと、迷惑。

「まぁ、信じるわ」

「はいはい、お願いしますよ」

 ここでの見た目は同年代、もしくは少し下に見える彼女を適当にいなしてその場を去ろうと屋敷に背を向けたところで、馬に乗った公爵が駆け込んできた。

 あー、なんか面倒しかない気がする。

「ローレンツォ!! 帰ってきてくれたんだね!」

 帰ってませんから。

「やっぱり」

「違いますって」

 修行の成果なのか、ひらりと馬から飛び降りると、僕の肩を抱きながら距離感のない挨拶をしてきた。
 いわゆるハグ。

 周りはおろおろ、副団長は拳を握る、僕は公爵の胸板を押しのけようと必死というシーンが出来上がったところで、馬車が目の前に横付けされた。
 黒い馬車に金の馬をモチーフにした家紋が飾られた、大きな馬車だった。

「そこまでにしてもらいましょうか、公爵。
 うちの孫が嫌がっておりますので」

 目が痛くなるほどの金髪と、僕より頭一つは高い美女が下りてくると、公爵を難なく引きはがした。

 孫って言った?
 初老という言葉さえ失礼な気がするほどの、いわゆる美魔女なこの女性が再度「孫に触れないで頂きたい」と言った。

 しっかりとした重厚感のある声に、女性とは思えないほど作られた筋肉に目を奪われた。
 その体躯を包んでいるのはドレスではなく、騎士団の制服だった。
 黒い騎士の制服に身を包んだこの女性が、僕の事を孫だと口にした。

「私の元妻です!」

「元、ですよ。
 しかも私は承認していない婚姻のね」

 この二人が会話するだけで、周りはダラダラと汗をかいて緊張するしかない、そんな状態だった。

「ガレットデロワ公爵夫人!」

「えぇ、公爵夫人であり、陛下の乳母、そして黒の騎士団団長のオードリー・ガレットデロワですが?
 あぁ、最近やっと、ルイの祖母とも名乗れましてよ?」

 大袈裟に口に手をやって、おほほほと笑って見せた。

 怖い、乳母ってこう、もっとほんわかとかふんわりしたイメージだったのに!
 
「ルイ、私は陛下の乳母として護衛の役目を担っていた。
 だから本来ガレットデロワ家は軍人の家系なよ」
 
 僕の髪を整えるように撫で、見おろすようなアングルだけど、すごく奇麗に微笑んで説明してくれた。

 最後に、だからこそルドヴィカは死んでないって。



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