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手術室から出てきた一志さんを皆んな、良かったと安堵しながら、次へと思考を巡らせているのがわかった。
海江田さんも合流して一志さんが目覚めるのを待って、俺たちは病院を後にした。
帰りの車の中で、警察での話や、アフィニティさんがひとみさんを待機させて、自分が時間稼ぎをしてくれてた事を話してくれた。

海江田さんとひとみさんは、弁護士さんと遅くまで対応してくれて、後日、また警察に行くことにはなっている。

一志さんも回復次第になる。

結局、家に帰ったのは、あの駐車場から拉致られて丸一日以上が経っていた。






疲れた。
何もしたくない。
リビングのソファーに座ると、もう、立ち上がれなかった。

「さとる、少しお食べ」

櫂砥が暖かい野菜のスープを持ってきてくれた。

「櫂砥、ありがとう」

「侑士、お前も薬を飲んで、しっかり寝なさい。」

いつも、櫂砥はこんな風に無償の愛をくれている。

「櫂砥、愛してる」
「さとる、私も愛してるよ」
「さとる、俺も愛してる」
「さとる、俺だって愛してるさ」
 
「うん、侑士も海江田さんも愛してる」

ぎゅうぎゅう抱きしめあって、しっかり深くキスをした。

この安心する場所に帰れて良かった。

「人の気持ちって、怖いね」

「さとるは、色々受け止めすぎるんだな。
 そして、意外と優秀だから、笠木の様にマウンティングしないと、安心出来ない輩が群れるんだよ
 うちの会社でもちゃんと務まるだろけど、お店で私を迎えてくれる方がいいな。」

「そうそう、強いしな!」

「え?」

海江田さんが疑問を呈した。
あの場に居たのは、笠木、侑士、アフィニティさん、一志さん、だけだからまだ蹴った話はしてなかった。

「海江田、さとるの蹴りは凄いそうだ。」

「スッゲー高さまで足が上がって、綺麗な回転で蹴ったんだよ。
 さすが、伴家!
 確かに、お義母さんと、お義姉さんがあんだけやるし、航君も喧嘩強いしねー」

「体が弱くて、ずっと型をやらされてたんです。
 人に当てたりとか、暴力は苦手なのでやり返したりは…」

「家族の為に頑張ったんだ」

「そうか、さとる、リハビリはそっちの型でやるのがいいかも
 慣れた形の方が精神面でも、きっと良い変化が生まれるんじゃないかな?
 俺も、蹴りを見てみたいし。」

なんとなく、最後が本音じゃない?
でも、鈍になった体は良くないし、頑張る。
そう思ったら、睡魔が訪れて食べきれないまま寝落ちした。






誰かのスマホが鳴っている。

まだ、半分の覚醒で頭が働かない。
侑士が喋ってる。
そっか、侑士のスマホに電話が入ったのか。

夢現で聞こえたのは、アフィニティさんが、今までのことを話して、罪を償うって言ってるみたい。

「ありがとう、救急車やら、外で待機はキツかっただろうけど、本当に助かったよ。
 また、お店に来てね」

んー、ひとみさんかな?
あ、お礼言いそびれた。

一志さんのお見舞い行かなきゃ、起きなきゃ。





一志さんは、脳筋すぎるわ!
確かに内臓は傷つかなかったけど、刺されてるのに、退院すると言って聞かないし!

もう、ばかなの?!
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