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異世界来ちゃったのかな?
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しおりを挟むモヤモヤしたものが胸にある。
何だろう?
前の子の事、聞きたくない。
前の子と比べないで。
「アキ様、体を乾かしましょう。」
柔らかいタオルに、風の精霊王らしく暖かい風で乾かされると、ラシルに触られてるところが気持ちよくて、安心した。
「アキ様、ご飯は何が食べたいですか?
お風呂で見た体は細すぎです。
先代は食べ過ぎるのを抑制させて頂きましたけど、アキ様は食べないといけませんよ」
チクリ
チクリ
「う、ん
でも、いらない。」
「食べ過ぎるのはいけませんが、食べ過ぎないのもダメなんですよ?」
チクリ
「もう、眠いし、明日食べるよ」
「分かりました。
明日、必ずですよ?」
「う、ん」
手を繋がれて、寝室まで連れて行かれた。
天蓋のある、女の子が好きそうなベッドにムカムカが治まらず、吐きそうだった。
ラシルが、先代神獣の女の子の話しをする度に、チクリと胸が痛み、ムカムカと吐き気にも似た感情が渦巻いた。
番いの意味は知ってる。
ラシルが番いになっていた先代は、今もラシルの心にあるんだ。
俺はずるい。
汚い。
自分では勘違いしないようにとか思っておきながら、ラシルに踏み込んで欲しいとか。
自分の感情が気持ち悪い。
「チカちゃん出てきて」
しゅるんと出てきたから、部屋の隅にチカちゃんと寝る事にした。
「アキ様!
こちらのベッドへ!」
「やだ」
チカちゃんのお腹の辺りに入り込んで、尻尾を握った。
「アキ様?
何でですか?」
「やだから、やだ」
チカちゃんにグリグリしてお腹の下に入り込もうとした。
「アキ様、ちゃんと言ってください。
私は、嫌われているのでしょうか?」
「違う。
嫌いなんかじゃない。
でも、やだ」
前の子も使ったベッドに入りたくない。
本当は、前の子がラシルと番いなのも嫌。
お風呂だって、前の子の好みで作られたライオンのなんて、凄く嫌!
でも、嫌だからって言えない。
ラシルが側に来てグズグスとしている俺の頭を撫でた。
この手は、前の子も撫でたんだ。
「や!触らないで!」
「アキ様?」
「やだ、よ」
お風呂から出た時に触られたのは安心出来たのに、ベッドを見たら凄く嫌になった。
「あのベッドは、ラシルが好きな形なの?」
「あれは、先代が」
「もう、いい」
聞きたくない。
やっぱり前の子のじゃん。
新しいのが良いんじゃなくて、ラシルが前の子と使ってたのを想像するのが嫌なんだ。
俺、やきもち妬いてるんだ。
頭を撫でてくれるこの手が、俺のじゃないから。
「チカちゃんと森に行く、ラシル離して」
「ダメですよ、アキ様
何が気に入らないんですか?
こちらに来た時は、あんなに楽しそうだったのに。」
「楽しかったし、嬉しかったよ。」
「なら、どうしてです?」
「分かんない」
嘘、本当は分かってる。
「アキ様、私が嫌いですか?」
「嫌いじゃない!」
「なら、好きですか?」
「っ!」
好きって言ったら、どうなるの?
ラシルを見つめながら、瞬きもできなくて、多分、口はへの字に曲がって、眉はハの字になってると思う。
涙が溢れて来そうになった。
瞬きしたら確実に流れちゃうやつ。
きっとこの綺麗な瞳は、前の子もこんなに優しく見つめていたんだ。
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