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異世界は続くよどこまでも
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しおりを挟むロークの種族長はずいぶん年老いた男性だった。
その顔には深い皺が刻まれ、今回の騒動にロークが関わっている事に驚きを隠せなかったみたいだ。
「ロークよ、その滑稽な姿を止めよ。
謝罪なのか挑発なのか分からぬ。」
え?
これも本当の顔じゃないの?
「ははは、バレましたか」
「下らぬ事をするな。
お前との付き合いがどのくらいだと思うておるか!」
怒っている訳ではない、楽し気な叱責をタロー様が発した。
「ロークよ、アキだ。
存じておろう?」
ロークの種族長は膝を折り、俺に頭を下げて挨拶をした。
「闇の神オプスクリタスが伴侶であり、唯一無二の神獣神アキ様です。
私はローク、以後お見知り置きを。」
爽やかな美中年といった姿が現れた。
「え、え?
あの、アキです。
よろしくお願いします。」
「お美しく、そして可愛らしい。
昨夜も愛されたというのが、分かりますな。
我が神よ。」
爽やかに、恥ずかしい事を言われ、俺は顔を赤くした。
「白い姿に赤を入れると、より一層美しさが際立ちますな。
我が神は、素晴らしい宝玉を手に入れましたなぁ」
どこまでが本気か分からないけど、こんな言葉を出せるほど親しいのだとは理解できた。
「ロークよ、此度の件の裏にロークの種族が関わっている様だ。
アキを下賜して、己の子を孕んだ人間の女を娶るなどと言う、下らない茶番はお主の差し金か?」
その言葉で、急に表情を固くした。
「まさか、裏で動きはしますが、断じてロークの総意ではございません。
いま、裏切りを働き子まで成した者を追跡中です。
この話をしている間にも、捕まえましょう。」
「既に、心当たりがあって何故ここまで長引いた?」
「トリスタン様の命により、アキ様を下賜されると言う事が通達されておりました故、事実を見誤りましてございます。」
「アキを下賜するとは、どのタイミングでトリスタンから来たのだ?」
「はい、アキ様が伴侶になられると言う事と同時に、です。
あまりに早い下賜に怪訝に思う者が多くおりまして、先に調査をしておりました。」
ギロリとタロー様が睨め付けた。
「何を調査した?」
「恐れ多くも、アキ様の出自にございます。
まさか、シムラクル様のご寵愛を受け精霊王全員の加護を受けし方とは思いもよらず、大変申し訳なく思っております。」
「そうか、ではもうひと項目付け加えておけ。
ただの寵愛ではなく、
異世界からの召喚者であると同時に神シムラクルの愛し子と。
この世界とは違う理を成す者である。」
「な、んと、
稀に異世界人もおりますが、召喚者とは。」
「シムラクルの愛し子を、私が横から奪ったようなものだ。
この姿も本来の向こうでの姿と全く変わらんしの。」
「は?
この美しく可愛らしいお姿のまま?」
「そうだ、何せ、シムラクルムが連れてこようとして失敗した叔父上と瓜二つだ。
色の違いこそあれ、元よりアキはアキだ。」
「あの、あの!
なんで、こんな話になってるんですか!」
「ん、ただの自慢だ」
「惚気ですね。」
恥ずかしくて赤くなるのを止められなかった。
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