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異世界家族
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しおりを挟む古参の使用人は、昔のあの子にきっとなると、どこかで期待しているからだ。
上手くいくかわからないけど、チカちゃんとかみんなに手伝ってもらうしかないかな。
俺が亜希だとバレたら、どうなるか分からないから、チャンスは一度だと思う。
夜の巡回があるから、それを買って出て俊樹の部屋を見回る事にした。
扉を開けて、中を確認するのは一応、賊とか入ったら、と言う警戒で毎夜巡回をするのだと。
手順はこうだ。
寝ている俊樹の枕元で本人確認をして、窓、家具類の下や脇を確認して、部屋を出る。
これを2時間おきにすると教えられた。
扉の前には、一人護衛が立っている。
喋るわけにいかないから、ぺこりと頭を下げて、中へ入る。
魔石で灯されたランタンを掲げて、寝ているのを確認すると、その目を開けて俺を見た。
びくぅ!
心臓止まるかと思ったよ!
「今夜の当番はお前か。
傷はどうだ?
使用人らは、優しくしてくれるか?」
コクコクと頷いた。
「そうか
俺は時々、自分でもどうにも出来ない状態があって、多分、気を病んでいるんだと思う。
段々、壊れていくのだと、魔力に支配されるように、あり得ない速さで魔力が上がるんだ。
それを止められない。
自分の体なのに、自由がきかなくて、
周りを心ない言葉で傷つけている。」
そう言うと、一筋涙を流してまた眠りについていた。
俺たちの身勝手な思惑が、この優しい魂を壊し始めている。
神様の自分の世界ひいては、俺の命を守る為にした事が、こんなにも影響していた事に自分への怒りと俊樹への怒り、そしてアウィスへの不信感を顕著にした。
俊樹の器にされたこの子の涙をそっと拭って、部屋を後にした。
翌日は夜勤をしたために、お休みを貰えた。
シフトは日勤から通しで仮眠を途中入れて夜勤、翌日は半休のあと夜勤をやって休みになるようで、なるべく仮眠と夜勤日勤を繰り返したいと、身振り手振りで申し出た。
口がきけないと言う設定にも慣れて、俊樹が
出てる時間帯は仮眠を、優しいあの子が出る確率が高い時間帯は仕事を、3日程で大体把握した。
何度か眠っているあの子の枕元で、チカちゃんに焔を使えないか見てもらったけど、むしろ俊樹が出ている時に引き剥がさないと、魂に潜られたら、この子の魂も消し去る事になると告げられた。
コンちゃんにも先見をしてもらった。
幾通りかの道筋を見て、俊樹の魂だけを消し去るのは難しいと。
タロー様が俊樹に下した罪状が、消し去らない限り転生について回る事になるからだ。
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