上 下
136 / 166
異世界家族

16

しおりを挟む


古参の使用人は、昔のあの子にきっとなると、どこかで期待しているからだ。

上手くいくかわからないけど、チカちゃんとかみんなに手伝ってもらうしかないかな。





俺が亜希だとバレたら、どうなるか分からないから、チャンスは一度だと思う。

夜の巡回があるから、それを買って出て俊樹の部屋を見回る事にした。
扉を開けて、中を確認するのは一応、賊とか入ったら、と言う警戒で毎夜巡回をするのだと。
手順はこうだ。
寝ている俊樹の枕元で本人確認をして、窓、家具類の下や脇を確認して、部屋を出る。
これを2時間おきにすると教えられた。



扉の前には、一人護衛が立っている。

喋るわけにいかないから、ぺこりと頭を下げて、中へ入る。

魔石で灯されたランタンを掲げて、寝ているのを確認すると、その目を開けて俺を見た。

びくぅ!

心臓止まるかと思ったよ!

「今夜の当番はお前か。
 傷はどうだ?
 使用人らは、優しくしてくれるか?」

コクコクと頷いた。

「そうか
 俺は時々、自分でもどうにも出来ない状態があって、多分、気を病んでいるんだと思う。
 段々、壊れていくのだと、魔力に支配されるように、あり得ない速さで魔力が上がるんだ。
 それを止められない。
 自分の体なのに、自由がきかなくて、
 周りを心ない言葉で傷つけている。」

そう言うと、一筋涙を流してまた眠りについていた。

俺たちの身勝手な思惑が、この優しい魂を壊し始めている。
神様の自分の世界ひいては、俺の命を守る為にした事が、こんなにも影響していた事に自分への怒りと俊樹への怒り、そしてアウィスへの不信感を顕著にした。

俊樹の器にされたこの子の涙をそっと拭って、部屋を後にした。




翌日は夜勤をしたために、お休みを貰えた。

シフトは日勤から通しで仮眠を途中入れて夜勤、翌日は半休のあと夜勤をやって休みになるようで、なるべく仮眠と夜勤日勤を繰り返したいと、身振り手振りで申し出た。
口がきけないと言う設定にも慣れて、俊樹が
出てる時間帯は仮眠を、優しいあの子が出る確率が高い時間帯は仕事を、3日程で大体把握した。

何度か眠っているあの子の枕元で、チカちゃんに焔を使えないか見てもらったけど、むしろ俊樹が出ている時に引き剥がさないと、魂に潜られたら、この子の魂も消し去る事になると告げられた。

コンちゃんにも先見をしてもらった。
幾通りかの道筋を見て、俊樹の魂だけを消し去るのは難しいと。

タロー様が俊樹に下した罪状が、消し去らない限り転生について回る事になるからだ。







しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,173pt お気に入り:4,744

エントリーなんでやめさせてくれんのや

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

勇者の幼なじみ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,253pt お気に入り:399

俺、異世界で置き去りにされました!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:2,082

異世界コンシェルジュ ~ねこのしっぽ亭 営業日誌~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:774

旦那様は転生者!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:903

沈むカタルシス

BL / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:31

ミルクの結晶

BL / 完結 24h.ポイント:525pt お気に入り:173

処理中です...