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気になる日
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車内ではまるで恋人同士の様に若狭に抱きしめられて、この気持ちが恋だとかそんな感情かどうか分からないとブレーキをかけながら、桂は若狭が提案する関係に未来を見出そうとしていた。
「ゆっくりでいい、でも、なるべく早く私のところへおいで」
「プッ、それ矛盾してますよぉ」
「だって私は君より年上で、アラフォーになっちゃうと、ほら下半身の事情にも影響出ちゃうしねぇ」
そう言って若狭は手を開いて見せた。
「?」
そのしぐさに首をかしげる桂に、え? 知らないの? と驚く若狭を笑いながら知ってます、と返した。
「なんだよー、もう、どこの箱入りかと思ったじゃないか」
「いや、若狭さんがアラフォーって言うから、そっちが気になっちゃいました」
思わず笑った桂に、そうだよ、と笑い返した。
「私は今三十六だからねぇ。
桂君より八歳も年上だから、やっぱり焦るさ」
桂が思っていた年齢よりも上だったことに驚き、それでも若く見える若狭にゲイって外見をしっかり磨くよな、と感心していた。
「さて、そろそろお腹もすいたし、車置いて飲みに行こうよ」
「あ、そうだ、そうですよね。
すみません、ちょっと待ってて、精算してきます」
パーキングのストッパーが上がってしまうくらいの時間、この場所で話し込んでいたことに今更気づき、車を降りて精算機で清算をすると、時間は三十分を超えていた。
慌てて精算をして、ここに頭を突っ込んだ時とは違って、これからの時間が楽しみに思える桂だった。
::::::::
桂が宿泊しているホテルは駅から徒歩十分弱のところにあるため、飲食店も多く軒を連ねていた。
「桂君、外食し放題じゃない」
「あ、えーっと、面倒でホテルの隣のコンビニが俺の冷蔵庫ですね」
「え? あっはっはっは!!
冷蔵庫! 確かに! だいぶ大きい冷蔵庫だね!」
若狭の中で何か気に入ったらしく、しばらく冷蔵庫という単語を口にしていた。
「あ、ここ行こうよ」
若狭が示したのは二年くらい前にオープンした串焼きの店だった。
繁華街の中に路地の様に見せた細い石造りの通路の奥に、長く大きな深緑の暖簾を掲げた店が構えていた。
パッと見は料亭のような作りで、中に入ると小上がりになっていて古民家の一部屋を移築したような空間が広がっていた。
「高級感があるのに、なんだか懐かしい感じのする店ですね」
「お、そういってもらえると嬉しいなぁ。
ここ、私が手掛けた最後のデザインなんだよ」
若狭がニコニコしながらそう言うと、桂はそうなんだ、とちょっと複雑そうな表情をした。
「最後って」
「うん、私が自分で作った最後の店。
その後は桂君のデザインに惚れて依頼してるってわけ。
これでも結構君のこと長い時間見てきてるんだから」
子供の様に照れくさそうな動きをしながら、桂に改めて惚れてるんだと言った。
「取り合えず、ここはまず、ビールだよね」
店の店員にビールを頼むと、量より質なのかもしれないと思わせるグラスで提供された。
「うーん、こんなに高級志向なコンセプトじゃなかったはずだったけど、方向性を変えたんだな。
竣工してから来た事なかったんだよね。
そっかぁ、こういう店だったのかぁ」
どこか残念そうな口調で若狭がビールのグラスを空けた。
桂は若狭が手掛けたデザインにも魅かれたが、仕事を依頼されるより前から自分を知っていたということに内心驚いていた。
「ゆっくりでいい、でも、なるべく早く私のところへおいで」
「プッ、それ矛盾してますよぉ」
「だって私は君より年上で、アラフォーになっちゃうと、ほら下半身の事情にも影響出ちゃうしねぇ」
そう言って若狭は手を開いて見せた。
「?」
そのしぐさに首をかしげる桂に、え? 知らないの? と驚く若狭を笑いながら知ってます、と返した。
「なんだよー、もう、どこの箱入りかと思ったじゃないか」
「いや、若狭さんがアラフォーって言うから、そっちが気になっちゃいました」
思わず笑った桂に、そうだよ、と笑い返した。
「私は今三十六だからねぇ。
桂君より八歳も年上だから、やっぱり焦るさ」
桂が思っていた年齢よりも上だったことに驚き、それでも若く見える若狭にゲイって外見をしっかり磨くよな、と感心していた。
「さて、そろそろお腹もすいたし、車置いて飲みに行こうよ」
「あ、そうだ、そうですよね。
すみません、ちょっと待ってて、精算してきます」
パーキングのストッパーが上がってしまうくらいの時間、この場所で話し込んでいたことに今更気づき、車を降りて精算機で清算をすると、時間は三十分を超えていた。
慌てて精算をして、ここに頭を突っ込んだ時とは違って、これからの時間が楽しみに思える桂だった。
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桂が宿泊しているホテルは駅から徒歩十分弱のところにあるため、飲食店も多く軒を連ねていた。
「桂君、外食し放題じゃない」
「あ、えーっと、面倒でホテルの隣のコンビニが俺の冷蔵庫ですね」
「え? あっはっはっは!!
冷蔵庫! 確かに! だいぶ大きい冷蔵庫だね!」
若狭の中で何か気に入ったらしく、しばらく冷蔵庫という単語を口にしていた。
「あ、ここ行こうよ」
若狭が示したのは二年くらい前にオープンした串焼きの店だった。
繁華街の中に路地の様に見せた細い石造りの通路の奥に、長く大きな深緑の暖簾を掲げた店が構えていた。
パッと見は料亭のような作りで、中に入ると小上がりになっていて古民家の一部屋を移築したような空間が広がっていた。
「高級感があるのに、なんだか懐かしい感じのする店ですね」
「お、そういってもらえると嬉しいなぁ。
ここ、私が手掛けた最後のデザインなんだよ」
若狭がニコニコしながらそう言うと、桂はそうなんだ、とちょっと複雑そうな表情をした。
「最後って」
「うん、私が自分で作った最後の店。
その後は桂君のデザインに惚れて依頼してるってわけ。
これでも結構君のこと長い時間見てきてるんだから」
子供の様に照れくさそうな動きをしながら、桂に改めて惚れてるんだと言った。
「取り合えず、ここはまず、ビールだよね」
店の店員にビールを頼むと、量より質なのかもしれないと思わせるグラスで提供された。
「うーん、こんなに高級志向なコンセプトじゃなかったはずだったけど、方向性を変えたんだな。
竣工してから来た事なかったんだよね。
そっかぁ、こういう店だったのかぁ」
どこか残念そうな口調で若狭がビールのグラスを空けた。
桂は若狭が手掛けたデザインにも魅かれたが、仕事を依頼されるより前から自分を知っていたということに内心驚いていた。
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