【完結】僕の好きな旦那様

ビーバー父さん

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「ごめん。僕らテイトが目が覚めたって知らせてあげたくて、今のテイトの姿を見せてあげたかった」

 落ち込んだ風の子のリーダー格が、トウカに知らせた事を後悔していた。

「それに、今、トウカ様から、テイトにどこか他で暮らそうって。
 僕らはその方が良いと思うよ」

 それは公爵家を出て行くと言う、トウカの決心でもあった。

「僕は」

「テイト、俺を詰っても怒っても、何をしても良い。
 それだけの事をしたんだ。
 でも、俺は絶対にテイトを手放したりしない。
 トウカ殿の事は俺に任せろと言ったじゃないか。
 すぐに、連れて来てやる」

 ザクロの頭の中には、トウカの籍を不正に抹消してる事を探るのに時間はかからないだろうと踏んでいた。

「嘘じゃないですか?
 信じちゃいますよ?」

 半分泣き笑いの様に顔を少し歪めて、テイトがザクロへ確認した。

「信じて欲しい。
 俺の全てで、テイトもトウカ殿も守る。
 愛してるから」

 祈るようにテイトの手を取って、信じてくれと懇願した。

「旦那様、大好きです」

「テイト」

 ならず者、ヤクザ者と言われて来たザクロが、こんなにも狼狽し懇願する姿を執事や他の使用人が見たらさぞ驚く事だろうと、テイトは思ってふふっと笑った。

「愛してる、テイト」

 安堵感とこれまでテイトの事が心配で寝ていなかったせいもあって、ザクロはこの大事な瞬間に倒れる様に寝落ちした。

「テイト、こいつも色々頑張ったんだよ。
 僕たちもそこは認めたから、許してやって」

「最初から許すも何も無いですよ。
 ちょっと拗ねただけで、怒ってないです」

 寝落ちしたザクロの体を、風の子達が力を貸してテイトが寝ているベッドの中へと招き入れた。
 静かな寝息を立てるザクロの髪を撫で、頬を触りながら、あの時の旦那様だ、と小さく言った。
 一晩中暖めてくれたザクロの十八の頃の寝顔と同じだ、と。

「少し、皺がふえたかな」

 




「トウカ様、テイトは受け入れたみたいですよ」

 公爵家に吹く風の子が繋がっていたテイトたちの様子を見て、良かったと告げた。

「テイトの判断に任せるけど、僕もそろそろこの場所から出て行かないと」

 テイトが親の為と気にしていたように、トウカもまた子供の行く末の為に公爵家を出て行くと言う選択をためらっていた。

「トウカ様なら、僕らが隠しながら連れて行けるよ」

「ありがとう、テイトにまずは会いたいかな」

 傷だらけの子供の姿しか記憶になかった。
 なのに、今は綺麗な姿をしていた。
 トウカ自身は良く分からないが、風の子達はテイトの顔がトウカにそっくりだと口々に言っていた。

「テイトの伴侶が、トウカ様をここから連れ出すって言ってるから、もうすぐ会えるね」

 人の世界の事情を分かるようで分かっていない風の子たちが、ここから出て行くのがどれ程大変なのかを理解できていなかった。
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