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天界よいとこ一度はおいで
傷痕
しおりを挟むウリエルが、そっとベッドへ下ろしてくれた。
「傷は大分良いらしいが、まだ完全に塞がった訳ではないから、横向きが良いだろう?
どちら側でも構わないからな。」
確かに体が引き連れるような痛みで、寝返りをするのが割とキツい。
「イズラエルが完治する迄は、このベッドの上が仕事場だから、遠慮はいらないからな。」
「ウリエル様、ありがとうございます。」
「ん、私もありがとうだ。」
ベッドにクッションや枕を沢山入れてくれて、傷が痛まないように体を起こしやすいようにと、支えてくれるその手を握って俺は自分の頬に当てた。
「!
イズラエル!」
うん、この手だ。
俺がずっと求めていた手。
褒めて欲しくて、撫でて欲しくて、俺を見て欲しかった。
ベッドの枕元にウリエルが腰掛けて、頬に当てた手が俺の顔をなぞりながら、唇に触れた。
形の良い綺麗な指先と爪が俺の口の中に侵入して、歯列を触る。
「イズラエル、早く良くなれ。
私がお前をちゃんと抱けるように、
良くなれ。」
「ウリエル様、俺の背中は汚い傷痕が出来てしまいました。
それでも、抱いてくれるんですか?」
口に入ってる指先を吸いながら、おぼつかない発音で言葉にした。
「イズラエル、傷が汚いと思う理由を教えてくれないか?」
そんなの決まってる。
「俺、天使に転生してすごく可愛い子供だったと思う。
でも、今このサイズになったら可愛くも何ともない。
むしろ、アッシュブルーの髪に、アッシュグレーの瞳なんて、似合わないよ。
よくある子供のうちは可愛いけど、大人になったらそんなでも無くなるって奴だから
それなのに、体に傷がしかもただの転んだ傷じゃなくて、ウリエルが好きだったハルカから受けた傷なら、いやじゃないかなって。
俺、良い所ないじゃん?
だから、せめて体くらい」
言ってる途中で涙が出てきた。
「ご、めん、な、さい
汚い傷がついた体じゃ、愛される資格なんかない」
涙を武器になんかしたく無いから、流さない様に、目を見開いた。
瞬きをしたら落ちてしまうから。
「イズラエル!」
肩を掴まれた。
「醜いんです」
「お前が醜いなら、私はもっと、だな
堕天しそうだったのだから。」
「え?」
どう言う事?
「さっき、ハルカの事は後で説明すると言っただろ?」
正直、あの時は興奮しすぎてあんまり聴いてなかった。
「ハルカは、多分悪魔が入り込んでいる。」
ハルカに入り込んでる?
「ハルカ自身が悪魔の変化した姿だとしたら、言動がちがう
ハルカの肉体に悪魔が入り込んでる、と言うのが調査庁の見解であり、私の見た内容だ。
そのハルカの言いなりに近い事をしていたのだ、堕天と取られても致仕方ない。」
あの冷酷無比とまで言われたウリエルが自嘲気味に笑った。
「やだ、やだよ!」
「堕天か?
大丈夫だ、その度にイズラエルが私の行いを諌める様に、正論と正直な行いで踏みとどまらせてくれた。」
何で大事な事を言ってくれないの?
「イズラエル、お前は何度も私を救ってくれたのだ。
そんな顔をするな」
俺が抑止力になるなら、何度でも止める、そして、何度でもウリエルを守るってきめたんだ。
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