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王城
しおりを挟むあの街からすぐだった。
森と湖に囲まれていて、街の方が高台だったから分からなかっただけで、ビックリするくらい近かった。
これ一泊する意味があったんだろうか?
「咲季、あの眼下に広がる全てが私の生まれた城の敷地だ。」
「え、あれ?
国じゃなくて?」
「国は、その向こう側だ。
王城がまずは国境として守りを固めている。
この国は、王族が一番強い。
無駄に国民を戦いの場に出す意味が無い。
国民は国内の衛兵として警備にあたらせている。」
「国民の命や生活を大事にしてるんだね」
強いと言う事を履き違えることなく、力を行使しているんだ。
下って行くと、すでに聞いていたのかトルクと同じような姿をした人たちが立っていた。
「あれが兄上たちだ。
それに弟に父上もいる」
え?
思ったより人数がいる。
弟もいたんだ。
え、と、5人いた。
お父様を外してだ。
その人たち意外は、甲冑やら軍服の様な恰好をしていたので、兵士や騎士たちなんだろうと推測出来た。
大きな城門の前に来ると、ワイスさんが国王であるお父様に近づいて、トルクの帰国を告げた。
「第三王子トルク様、伴侶、咲季様を伴い帰国されました!」
おぉーという声が良くやった、と言う声と共にかけられた。
一度、馬から降りて国王に挨拶をした。
「父上、トルクただいま帰国いたしました。
こちらが、私の伴侶、咲季でございます。
末永く、暮らしたいと思っております。」
「おお、よいよい、堅苦しい挨拶は抜きにして、顔を見せておくれ」
トルクより少しだけ高い気がする。
どっちにしても僕は見上げるしかないんだけど。
「して咲季殿、聞いておりますぞ
あのレオハルトを袖にしたとか!
いや、愉快、愉快!!」
「そんな、あれは、向こうが…」
「こんな小さい身体で、トルクが無茶をしてるらしいな、
困ったことがあったらワシかワイスに言いなさい
いや、それにしても可愛いなぁ
こりゃ、本当にでかした!と言ってやるしかないのう」
豪快に笑う国王様は、満面の笑顔で受け入れてくれた。
「ワシの名はダリューンじゃ。
お父様でも構わないぞ」
「あの、咲季です。
末永くよろしくお願いいたします。
ダリューンお父様」
「く~!!
可愛い!!!
可愛すぎる!!
この足の綺麗さ、なんじゃ、この可愛い生き物は!!」
「ちょっと父上!!
私たちも紹介してくださいよ!!!」
興奮しているお父様の横から、顔つきはトルクととても良く似ている一番年長な男性が声をかけた。
「おぉ、悪かった、息子たちだ!」
「うわ、雑すぎる、酷いなぁ」
にっこり笑って、トルク似の男性が膝を折った。
「第一王子のシャズです。
お見知りおきを。
可愛い咲季様」
僕の顔はベールと一体化したような帽子で良く見えないと思ったんだけど…多分、この可愛いは身長の事かもしれないな。
「よろしくお願いします。
咲季です。」
「私は第二王子のロゲルです。
みんな咲季様の事が可愛くて仕方ないんですよ」
「ふふ。ありがとうございます。」
「私はトルクの母違いの弟で第四王子、マナイです。
本当に可愛いですね」
「私は第五王子のトリシュです。
あの、お手にキスをしても良いですか?」
トルクがすかさず、断りを入れた。
「ダメに決まってる。
私の咲季に触るな」
「ケチだね~
私は第六皇子トア、お兄様の伴侶だし大事にしますね」
んん?
何だかちょっとトゲがあったような…気のせいかな?
「皆さま、よろしくお願いします」
概ね歓迎されて一通りの挨拶が終わった。
王宮で与えられた部屋は、元々ここに住んでいたトルクの部屋だった。
「ねぇ、馬に乗って帰国する意味あった?」
「あったよ、私が咲季を自慢出来た!!!
何より、私に守られてる咲季の姿を見せつけられた」
この人本当は強いんだよね。
「そんな事しなくても、僕はトルクの伴侶でしょ?」
「そうなんだけど、一番下の弟には気を付けてね。
あの子はちょっと問題があるんだ。」
そう言えば弟たちはお母さんが違うって言ってたなぁ。
獣化でもしない限りあんまりわかんないんだけど。
大体、この短パンでニーハイってのも、まったく意味が無かった気がするんだが。
着替えようと思って、トルクに何を着たらいいか聞いてみた。
この後、食事を一緒にするとか…。
「僕、どんな服着たらいい?
ワイスさんに教えてもらいたいんだけど」
そうちょっと名前を出しただけで、ワイスさんが現れた。
いや、なにここ。
こういう戦略?的な動きが当たり前って、そりゃトルク強くも宰相にもなるわ。
「咲季様、お召し物はこちらを」
出されたのはちゃんとしたスーツ!!だった。
「はい、ワイスさん
ありがとうございます!!」
いそいそとワイスさんに手伝ってもらって着替えていたら、トルクが何か考え事をしていた。
「トルクも着替えないの?」
「着替えるよ、咲季とお揃いので出るからね」
真剣な顔をしていたトルクだったけど、すぐににこにこ笑って着替えを始めた。
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